なぜ?売春防止法「買う側」は野放し 「買う側の罰則」へ法改正に賛否のワケ【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-08-24 21:27

若い女性などの路上売春が近年、社会問題となるなか、法務省は売春防止法の改正に向けた有識者検討会で報告書案を示しました。

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「買う側の罰則なし」に疑問視する声も 簡単に改正できないワケ

高柳光希キャスター:
そもそも売春防止法とは、「対価を受け取って不特定の相手と性行為などを処罰する」という法律です。

罰則としては、6か月以下の拘禁刑、または2万円以下の罰金が科せられます。

対象となるのは、売春をする目的で、公衆の目に触れるような方法での客待ちや、売春の相手となるような勧誘をするために道路などで立ち塞がる声かけなどです。

なぜ今、法律を改正しようとしているのでしょうか。

TBS報道局社会部 重松大輝 記者:
売春防止法は、70年前の1956年に制定された法律(1958年施行)で、公衆の面前で客待ちをしたなどの主に女性、売る側の勧誘行為は処罰する一方、主に男性が占める「買う側」への罰則は設けていません。

【売春防止法の罰則規定 1956年制定】
・売春の勧誘:あり ※“立ちんぼ行為”など
・買春:なし
※1958年施行

一見、時代遅れな法律のように聞こえますが、改正がそう簡単にいかない理由があります。

改正の経緯として、ここ数年、悪質なホストクラブで多額の借金などを背負って、未成年を含む若い女性が売春に追い込まれる事例が多発し、問題になっていました。

その中で、客待ちをする女性だけが摘発されることを疑問視する声が上がってきました。

また、決定打となったのは、2025年11月、タイ国籍の当時12歳の少女が東京都内の店で性的サービスをさせられる事件が発覚したことです。

売春が人身取引に近いことまで引き起こしているのではないかと、国会では売春防止法のあり方に議論が起こり、高市総理が2025年11月、売春防止法の見直しの検討を指示し、法務省は検討会を設置して議論を始めました。

路上売春をしている女性「オジのほうが捕まってほしい」

高柳キャスター:
法務省は24日、検討会でとりまとめに向けた報告書案を提示しました。買う側の勧誘行為などについて、新たに罰則を設けることに対しては、異論なしということになりました。

ただ、こうした買う側への罰則という法改正ですが、実は反対意見も出ているといいます。

TBS報道局社会部 重松大輝 記者:
まずは賛成の意見ですが、NPO法人ぱっぷすは、女性からの搾取をなくすためにも買う側に罰則を設ける必要があるとしています。

さらに発展させて、買う側のみを処罰、売る側は被害者として保護・支援をするという北欧モデル(スウェーデン、フランス、カナダなど)を主張している人もいます。

性売買を「ジェンダーの不平等に起因する暴力」として捉えて、需要を断つことで搾取や人身売買を根絶するという観点から誕生した考え方となります。

一方で、これに対する反対意見もあります。

神戸大学の青山薫教授は、規制してもこのような行為自体はなくならないだろうとしたうえで、買う側に対して罰則を設けるとさらに売春行為が地下に潜ってしまい、「女性がもっと危険な目に遭う可能性があるのではないか」と指摘しています。

こうした中で、北欧モデルを導入したフランスでは、買売春の減少が見られないことや、パリ郊外のブーローニュの森など人目のつかない場所へ移動していることが実例として上がってきているといいます。

また、歌舞伎町周辺で取材したところ、路上売春をしている女性は「オジのほうが捕まってほしい。でもオジがいなくなる分、私たちからしたら稼ぐ方法がなくなる。もう稼げないとなったら、たぶん死んじゃう子が多くなっちゃいそう」と話していました。

買う側・売る側の罰則 “世界の4モデル”

高柳キャスター:
買う側に対して罰則を設けることが、女性を守ること、助けること、支援することにつながるのかという部分ですね。

井上貴博キャスター:
取材に答えてくれた女性の言葉がすごく現実を表していると思います。

基本的には買う側がいなくなれば成り立たないため、買う側を罰すべきというのは私もそう思いますし、意識を変えるという意味でも必要なのだろうと思います。

しかし、それだけでは解決せず、フランスのケースでもあるように、斡旋している団体をもっと厳しく取り締まるべきで、売春するしかない人をどのように支援していくのか。

簡単に言ってしまいますが、どのように支援するのかというのは非常に難しく、貧困の問題にも直結します。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
海外での北欧のモデルは議論が活発になり、増えている傾向にあります。しかし、議論として未成年かどうかというのは、まず切り分けないといけません。

国連が1989年にそのような協定を作りましたが、未成年というものに関しては全会一致で採択されたということは、まず言わないといけません。

今の議論は18歳以上の話で、これには4つのモデルがあります。

1つ目は全面禁止です。買う方も売る方も禁止とする国が世界120か国で、国連の加盟国の約60%です。

2つ目は北欧モデルです。買う側のみを処罰し、売る側は被害者として保護・支援するというものです。

3つ目は、合法ではあるが、一定の場所だけでしかそのような行為が行われないモデルです。オランダやスイス、ドイツでのモデルで、そうすることで見える化ができます。

一方で、全面的に非犯罪化しようという流れも一部の国ではあります。オーストラリアやオーストリアもそうですが、18歳以上であれば仕方がないとしている国もあります。

しかし、北欧モデルは間違いなく議論が集中しており、日本でもそのような議論が始まることは第一歩としてはすごくいいことだと思います。

出水麻衣キャスター:
ただ、地下に潜って危ない目に遭う女性や、そのような行為をしている人が多くなるのだけは絶対に避けてほしいです。そこに対して、どのように目を光らせることができるのかは、同時に考えていかなければいけません。

井上キャスター:
被害者だとする売る側を、どのように支援するのが良いと思いますか。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
例えば海外を見ると、「自分が強制的に売る方に立たさせられている」ということを通報できたり、支援センターなどに予算をつぎ込む国も多くあります。

それでも通報しない人はいるのかもしれませんが、それも支援のひとつの形だとは思います。

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<プロフィール>

重松大輝
TBS報道局社会部 法務・検察担当
事件・事故の「その先」を取材

ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック顧問・アース製薬の社外取締役など

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