ご飯のおいしさを科学する、女子中高生17人がIoT炊飯器で体験したパナソニックの研究開発の仕事
毎日の食卓に並ぶご飯は、同じお米を使っても、温度や火力、加熱時間、蒸らし方によって味わいや食感が変わります。普段は炊飯器に任せている工程を一つずつ見直してみると、一膳のご飯が細かな条件の組み合わせによって出来上がっていることに気づきます。身近な食べ物を入り口にすれば、難しそうに見える科学や技術も、自分の感覚と結びつけながら学べるかもしれません。
パナソニック株式会社は2026年8月19日、滋賀県草津市の草津拠点で、女子中高生向けSTEM体験プログラム「Girls Meet STEM」の一環となる「キッチン家電で“おいしさを科学する”お仕事とは?」を開催しました。関西を中心とする女子中高生17人がIoT炊飯器を使い、ご飯の炊き方を考えるところから試食、評価までを体験。ものづくりの現場で行われている「仮説→実験→検証」の流れに触れました。
IoT炊飯器で組み立てる「おかずに合うご飯」

プログラムのテーマは、「食卓でおなじみのおかずに合うご飯」です。参加者はまず、Panasonic Cooking @Labの技術者から、炊飯の仕組みや、ご飯のおいしさを人の感覚で確かめる「官能評価」の考え方について説明を受けました。

続いてグループに分かれ、どのような硬さや粘り、味わいのご飯がおかずに適しているのかを話し合いました。目指す仕上がりを決めたうえで、時間、温度、火力、蒸らし時間などの条件を検討し、IoT炊飯器を使って実際に炊飯しました。
普段はボタンを押して出来上がりを待つことが多い炊飯も、一つひとつの条件に目を向けると、さまざまな工夫が重なっていることが分かります。参加者にとっては、自分たちで考えた炊き方がどのようなご飯になるのか、期待しながら結果を待つ時間になったようです。
味や食感の違いからたどる仮説と検証の流れ

炊き上がったご飯は、「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「食感」などの観点から評価されました。それぞれのグループが設定した条件と出来上がりを照らし合わせ、炊き方の違いによってご飯がどのように変化するのかを確かめました。
試食には、調理家電で作った鶏の照り焼きとキーマカレーも用意されました。ご飯だけを味わうのではなく、「おかずと一緒に食べたときにどう感じるか」という視点から結果を考察します。
参加者からは、普段はカレーに合わせるご飯を意識したことがなかったものの、自分で考えてみると少し硬めのご飯が合うと思った、という声も寄せられました。理想のご飯を思い描き、炊飯条件を決め、実際に食べて評価する一連の体験を通して、研究開発で繰り返される「仮説→実験→検証」の流れを学びました。
数値で設定した条件が、硬さや粘りといった感覚的な違いとして表れる点も、調理を題材にしたプログラムならではの特徴です。予想通りの結果になったかどうかを確かめるだけでなく、違いが生まれた理由を考えることも、ものづくりの仕事を知る手がかりになります。
調理家電の裏側に触れる研究開発の現場

ご飯を炊いている間には、炊飯器や電子レンジなどの研究開発が行われている調理実験室の見学も実施されました。参加者は、調理結果をどのように評価するのか、どのような設備を使って実験するのかについて説明を受けました。
Panasonic Cooking @Labは、電子レンジ、炊飯器、調理小物、IHクッキングヒーター、冷蔵庫などの調理ソフト開発を担う技術者が所属する組織です。食材の特性や調理科学の考え方をもとに、適切な加熱制御や調理アルゴリズムを設計するほか、メニューやレシピの開発にも取り組んでいます。
日常的に使われている調理家電も、さまざまな条件で実験し、結果を評価する作業を繰り返しながら形になります。今回の見学は、普段目にする完成品だけでなく、その使いやすさや仕上がりを支えている技術者の仕事を知る機会にもなりました。
参加者が体験した、目指すご飯を考え、炊き方を設計し、実際に炊いて評価する過程は、炊飯器の開発でも行われているものです。身近な家電が生まれるまでに、調理科学や制御技術、人の感覚による評価など、幅広い知識と仕事が関わっていることが見えてきます。
女性技術者との対話で身近になった理系の仕事

プログラム後半には、Panasonic Cooking @Labで研究開発に携わる女性技術者との交流会が行われました。参加者からは、理系の進路を選んだ理由や学生時代に学んでいたこと、研究開発の仕事のやりがいなど、進路選択から実際の仕事まで幅広い質問が寄せられました。
なかには、「理系科目が得意でなくても技術者になれるのか」という率直な質問もありました。女性技術者は自身の経験を交えながら、理工系分野で働く魅力や、自分の興味、好奇心を大切にして進路を考えることの重要性を伝えました。
日本のSTEM分野の学部における女性比率は、2023年時点のOECDデータをもとに山田進太郎D&I財団が算出した数値で18.08%とされ、OECD諸国で最も低い水準です。「Girls Meet STEM」は、女子中高生が企業や大学、研究機関での体験や女性のロールモデルとの交流を通して、理工系の進路を身近に感じられる機会を提供しています。
実施後のアンケートでは、回答した16人のうち75.0%が、将来「自分もこうなれたらいいな」と思える人が「見つかった」または「やや見つかった」と答えました。技術に触れるだけでなく、実際に働く人の言葉を聞いたことが、進路やキャリアを具体的に考えるきっかけになったようです。
身近な家電から見えてくるIoTと進路の接点
今回の取り組みで印象的なのは、科学や研究開発を難しい言葉だけで説明するのではなく、毎日のご飯という身近なテーマから学びにつなげた点です。炊飯条件を考えて設定し、出来上がりを五感で比べる過程には、ものづくりの基本となる考え方が詰まっています。また、思い通りの結果だけを求めるのではなく、予想との違いも含めて理由を考える経験は、研究開発の面白さを知る機会になったといえそうです。
調理家電の開発には、調理科学やソフトウェア、加熱制御、評価など、さまざまな分野が関わっています。女性技術者との対話を通して、その仕事に就くまでの道のりや日々の実務を知れたことも、参加者にとって大切な収穫でしょう。普段何気なく使っている家電の裏側に目を向け、「なぜこうなるのだろう」と考えてみることが、科学への関心や将来の選択肢を広げる小さな一歩になるのかもしれません。