「妊娠したら仕事を辞めてもらう」技能実習生の4人に1人が経験 “退職強要”で賠償命令も 「同じような状況の女性のために声を上げたい」フィリピン女性の思い【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-08-27 14:17

「妊娠したら仕事を辞めてもらう」。技能実習や特定技能で来日した外国籍の女性の中には、妊娠・出産を選ぶ権利が守られず、帰国を余儀なくされる人もいます。当たり前の権利を守るため、声を上げた女性たちを取材しました。

【画像で見る】監理団体の理事と技能実習生のやりとり

仕事にやりがいを見出していたが… 妊娠の喜びと同時に、不安に襲われる

監理団体の理事
「あなたはどうしたい?それを考えて」

技能実習生の女性
「子どもを産みたい」

監理団体の理事
「じゃあ、それで全部駄目になっても良いですか」

これは、技能実習生の女性が、妊娠したことを伝えたときのやりとりを記録した音声です。

監理団体の理事
「『じゃあ、バイバイ、フィリピンに帰って良いよ』って雇用主が言うかもしれない。それを分かってて進めるんですよ」

やりとりの相手は、実習生のサポートなどを行う監理団体の理事を務めていた男性。妊娠によって、「雇用主から帰国を求められるかもしれない」というのです。

フィリピン国籍のイッサさん(仮名・30歳)は2019年9月に来日し、福岡県上毛町の高齢者施設で働き始めました。

イッサさん(仮名)
「最初は言語の壁もあり大変でしたが、数か月経って、適応できました」

慣れない環境の中でも、仕事にやりがいを見い出していたイッサさん。妊娠がわかったのは、それから1年半後の2021年4月のことです。

同郷の交際相手と喜びを分かち合ったと同時に、不安に襲われたといいます。

妊娠報告で他の実習生への不利益も暗示 中絶の提案も

イッサさん(仮名)
「妊娠したらすぐに強制帰国させられるという暗黙のルールがありました。それでも赤ちゃんや私の身体を危険にさらさないために、監理団体や実習先に伝えないという選択肢はなかったです」

イッサさんは産休を取って帰国し、出産後に日本へ戻ることを希望しましたが…

イッサさん(仮名)
「技能実習生でも産休はありますか?産休できます?」

監理団体の理事
「うん、あります。ただ、フィリピン人の評価はあなたのせいですごく落ちます。『もうフィリピンの人はいらない』と言われるかもしれないし、どうなるかは分からないことです」

監理団体の理事は、出産によってイッサさんだけではなく、他の技能実習生にも不利益が及ぶ可能性を示唆します。

さらに…                                          

監理団体の理事
「一つだけ聞きたいことがある。それは何かというと、アボーション(中絶)っていうのこれ」

イッサさん(仮名)
「それはできません」

イッサさんが求められたのは「中絶」。

宗教上の理由から中絶する選択肢はなく、やむなく帰国を決意しました。

その後、男の子を出産したイッサさんですが、日本に戻ることはありませんでした。

法律違反の“妊娠による退職強要” 技能実習生の4人に1人が不適切な発言を受けた経験

妊娠を理由として退職に追い込まれる背景を、専門家はこう分析します。

上智大学総合グローバル学部 田中雅子教授
「(技能実習制度は)経済的な貢献をするということだけを期待して作られた制度なので、そこに当てはまらない妊娠が発生すると途端に迷惑な存在として扱われてしまいます。特定技能1号も家族の帯同が認められていませんので、ほぼ同じ問題は起きています」

日本にいる技能実習生は2025年12月末時点で約45万人、特定技能制度では約39万人いて、そのうち約4割が女性です。

妊娠を理由として解雇することは法律で禁止されており、技能実習生や特定技能の人であっても、例外ではありません。

ところが、出入国在留管理庁の2022年の調査では、技能実習生の4人に1人が「妊娠したら仕事を辞めてもらう」などと、不適切な発言を受けた経験があったと回答。

解雇や強制帰国を恐れて妊娠を周囲に相談できず、孤立出産をしたり、産んだ子を殺害するケースもあります。

「同じ状況の女性のために」 裁判所が認めた権利侵害 

イッサさんは帰国後、2022年に妊娠を理由に退職や帰国を余儀なくされたとして、監理団体などに賠償を求める訴えを起こしました。

裁判のため来日したイッサさんは…

イッサさん(仮名)
「戦い続けることで痛みやプレッシャーなどを感じているが、同じような状況に陥っている女性がいる中で声を上げたいと思った」

その判決が8月4日、言い渡されました。

千賀卓郎裁判長(福岡地裁小倉支部、8月4日)
「監理団体の理事は、イッサさんが妊娠したこと自体を非難し、中絶などの選択肢をとるよう迫るものであった。イッサさんの妊娠・出産の選択の権利を侵害した」

裁判所は、録音の音声などからイッサさんの主張を認め、監理団体などに300万円を超える賠償を命じました。

専門家は、こういった事案を減らすためには「数少ない好事例に光を当てるべき」と訴えます。

上智大学総合グローバル学部 田中雅子教授
「監理団体や就労先に恵まれて、実際産んで育てている人っていうのもいるわけで、数は少ないものの、やっぱりそういうことが可能だということを発信していく必要があると思っています」

産休・育休を経て職場復帰 企業と労働者の「架け橋」へ 

老舗米菓店で働く「特定技能1号」のグエン・ティ・ハーさん(26)。一時帰国して産休と育休を取得していて、この日は約1年ぶりの出社でした。

グエン・ティ・ハーさん
「おはようございます。皆さんお久しぶりですね。お元気ですか?日本に戻りました。本当にありがとうございます。よろしくお願いします」

ハーさんの残りの在留期間は、約1年半。働きながら、永住や家族の帯同につながる「特定技能2号」の取得を目指して家族をベトナムに残し、日本に戻りました。

それから数日後、工場には様々な仕事をこなすハーさんの姿がありました。新たに働き始めた特定技能1号の2人の指導役も務めています。

勤務先の社長は、ハーさんに「ベトナム人労働者との懸け橋になってほしい」と期待を寄せます。

酒田米菓 佐藤栄人社長
「日本人であろうがベトナム人の方であろうが、そこは同じ対応をしていく。ハーさんのようなある程度スキルもあって、ベトナムの方が(新しく)入ってきてもすぐ教えられるような状況が作れると、ありがたい存在だなとは思いますね」

できるだけ長く働いて欲しいと願う、勤務先の社長。ハーさんも同じ思いです。

グエン・ティ・ハーさん
「(日本に戻るときは)ちょっと寂しかったです。泣きました。日本語を勉強して、もし特定技能2号になったら家族と日本で住みたいです」

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