パラ・パワーリフティング日本記録保持者も実感! 人間の限界(ポテンシャル)を呼び醒ます「応援の力」

2026-08-31 08:00

運動会や大事な試験、緊迫した試合――。
そんな「ここぞ」という場面で、誰かの応援によって、思った以上の力が出せた経験はありませんか?
知っている人からも、時には知らない人からでも、自分に向けられた「がんばれ!」の声には、人間のポテンシャルを極限まで引き出すパワーが宿っているのかもしれません。

8月22日、銀座松竹スクエアで開催された「健康マルシェ」は、まさにこの「応援の力」を体感する場でした。「健康」をテーマに企業・団体がそれぞれの専門性や「得意」を持ち寄る中、ステージタイムにはパラ・パワーリフティング選手によるデモンストレーションも。
歯を食いしばりバーベルを持ち上げる選手の姿に、来場者からたくさんの「がんばれ!」という「応援の力」が届けられました。

誰もが「自分」と向き合う一日――体験ブースから広がる健康の輪

東銀座の銀座松竹スクエアで行われた「健康マルシェ」には、お出かけ中の親子連れやご夫婦、カップルなどが足をとめ、興味深そうに体験を楽しんでいる様子でした。

各ブースには、健康チェック、栄養、リカバリー、運動など、それぞれの専門性を持つ企業・団体が集結。中央に設置された本格的なベンチプレス台を囲むように、多彩な体験コーナーが並びます。

睡眠や着心地からアプローチする「リカバリーウェア」

空間全体でコンディションを整える「DENBA」体験コーナー

「遺伝子パーソナル診断」コーナー。自分に合った健康アプローチを知るきっかけに

「ベジチェック」コーナー。手をかざすだけで日頃の野菜摂取量が可視化される

サステナブルな取り組みとして賑わいを見せた「古着寄付コーナー」

山下貴久雄選手をはじめ、選手たちと直接言葉を交わせる「パラ・パワーリフティング体験・トークブース」

来場者はそれぞれのブースで自分の「健康」と向き合いながら、会場全体に漂う温かい熱気を感じ取っているようでした。そしていよいよ、会場の注目が集まるステージタイムが始まります。

息をのむ155kg——会場が一体となって押し切った渾身のプレス

会場に設置されたベンチプレスを中心に始まったステージタイムでは、パラ・パワーリフティング選手によるデモンストレーションが行われました。

デモンストレーションを披露するのは、パラ・パワーリフティング59kg級日本記録保持者の光瀬智洋(こうせ ともひろ)選手です。東京2020パラリンピック出場実績も持つ選手の登場に、会場からは大きな拍手が送られました。

パラ・パワーリフティング 59kg級 光瀬智洋選手

パラ・パワーリフティングは、下肢などに障がいのある選手が、ベンチプレスの最大挙上重量を競うパラスポーツです。ステージに上る一人の選手へ、会場全体の熱気と視線が一心に注がれます。選手の挑戦に会場から声援が送られ、観客も一緒になって盛り上がれることは、この競技ならではの魅力のひとつです。

20kgの軽いウォーミングアップをこなしたあと、70kg、110kg……と徐々にウェイトをあげていく光瀬選手。ですが、155kgに差し掛かると選手の顔は真っ赤になり、額にはじんわりと汗が滲みます。

息も上がってきている様子の選手に、会場からは「がんばれ!」「イケるイケる!」「上げろー!」と自然発生的に大きな応援の声が響き渡ります。その声援に応えるように、渾身の力でバーベルを押し切る光瀬選手。見事155kgのプレスに成功しました。

まさに「応援の力」が選手にしっかり届いた瞬間です。デモが終わると、来場者からは割れんばかりの大きな拍手。「すごい!」「やったぞー!」という称賛の声と熱気に包まれ、光瀬選手もほっとしたような、達成感に満ちた表情を浮かべていました。

ステージを彩ったキッズチアとピラティス

用賀チアリーディングクラブ「チェリーズ」

ステージタイムでは、用賀チアリーディングクラブ「チェリーズ」によるパフォーマンスも披露されました。笑顔と元気いっぱいの演技から「応援する楽しさ」が伝えられ、会場の空気を華やかに盛り上げました。

ジュン先生「座ったままできるピラティス」

ステージの最後には、ジュン先生による「座ったままできるピラティス」で、熱く盛り上がった心と身体を静かにクールダウン。会場に一体感が生まれたひとコマでした。

「重圧」ではなく「上がる」確信へ――日本記録保持者・光瀬智洋が語る声援の本質

東京2020パラリンピックでは145kgを挙げた光瀬選手。この日のデモンストレーションでは155kgに挑戦し、見事成功。そんな力強いパフォーマンスを披露してくれた光瀬選手に、手ごたえをうかがいました。

「通常、試合の時はそれに向けてコンディションを合わせて練習を積み重ねていくもの。今日みたいに特別に調整していなくてもいい結果が出せたのは、応援の力だと実感しています。みなさんの声によって自分のテンションも高まり、それが原動力になりました」

そう語る光瀬選手。しかし、これまでも国を代表するパラリンピアンとして、国民の期待を背おうことへのプレッシャーはなかったのでしょうか。

同じく第一線で活躍する山下貴久雄選手が「大声援を受けると『絶対に上げなきゃいけない』という責任感やプレッシャーを感じることもある」と語るように、声援が時に重圧となるのはアスリートにとってごく自然なことなのでしょう。

しかし、光瀬選手にとって「応援」は少し違う響きを持って届くといいます。

「プレッシャーっていうよりも、なんか自分はできるな、みたいな。『上げなきゃ』っていうよりも『上がるな』っていう確信に変わっていくんです」

声援をプレッシャーではなく、自分を後押しする力として受け取る光瀬選手。その言葉からも、応援とともに挑戦するパラ・パワーリフティングならではの魅力が伝わってきます。

そんな光瀬選手が見せてくれたのは、ご本人が趣味にしているという自作のお料理・お弁当の写真の数々。盛り付けや色合いにもこだわりが感じられ、まるでお店の料理のような出来栄えに、来場者からも感心の声が寄せられました。

また現在、光瀬選手は俳優業にも挑戦しているそう。多彩な可能性を秘めた光瀬選手のこれからに期待が高まります。

エールを送る手が、自分の明日を照らす――「応援の力」がもたらす本当の価値

応援する側も応援される側も、お互いのモチベーションが高まっていく――。この「応援の力」の心地よい循環こそが、心身ともに健康的な暮らしにつながる大きなカギなのかもしれません。

誰かに向けて大きな声でエールを送るとき、実は自分自身の心もぐっと持ち上がっている。そんな温かい熱気に包まれた「健康マルシェ」は、訪れた人々に明日への活力を与えてくれる素晴らしいイベントでした。

<取材・撮影・文/櫻井れき>

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