甲子園に届かなかった36人の“最後の夏”ジャパンリーグがつくったもう一つの舞台

2026-09-04 08:00

甲子園を目指した夏が終わっても、「もう少し野球を続けたかった」という高校球児はきっといるはずです。そんな高校3年生たちに、もう一度本気でグラウンドに立てる場所を――。2026年8月、全国10都府県・27校から36人の高校球児が沖縄に集まり、「JAPAN SUMMER LEAGUE 2026(JSL2026)」が開催されました。

集まったのは、夏の地方大会を終え、甲子園でプレーする機会のなかった選手たちです。所属する学校も、歩んできた高校野球の3年間もそれぞれ違います。それでも、この5日間は同じグラウンドに立つ仲間として、予定された全10試合を戦い抜きました。

そして、JSL2026が用意したのは試合だけではありません。プレーを数字で知るための計測や専門家による指導、自分自身や将来について考えるプログラムも実施されました。甲子園には届かなかった36人の“最後の夏”は、どんな5日間になったのでしょうか。今回は、その始まりから閉幕までを追っていきます。

甲子園に届かなかった36人が沖縄へ――学校を越えて始まった「最後の夏」

高校野球の夏は、甲子園に出場する選手だけのものではありません。地方大会の初戦で敗れた選手、あと1勝で甲子園に届かなかった選手、部員が足りず連合チームで戦った選手。それぞれ違った形で夏を終えた高校3年生たちに、もう一度実戦の舞台をつくるのが「JAPAN SUMMER LEAGUE(JSL)」です。

2026年8月17日、沖縄県沖縄市のコザしんきんスタジアムに集まったのは、全国10都府県・27校の高校3年生36人。投手14人、捕手7人、内野手9人、外野手6人が参加し、多くの選手が所属校から一人でエントリーしました。学校ごとにチームを組むのではなく、リーグ側が新たにチームを編成。これまで違うユニフォームを着て戦ってきた選手たちが、学校の枠を越えて同じ大会に臨みました。

JSLの大きな特徴が、参加者全員に出場機会が用意されていることです。2025年にスタートしたこのリーグには、「陽の目を見ない場所に光を」という理念があります。甲子園出場を逃した選手だけでなく、これまで思うようにプレーする機会を得られなかった選手も参加でき、実戦を通じたスキルアップや新しい仲間との出会い、自分の将来について考える時間をつくっています。

高校最後の公式戦が終われば、そこで一区切り――そんな選手たちにとって、学校も地域も越えて再び本気で野球に向き合える5日間です。勝ち上がった選手だけに光を当てるのではなく、野球に打ち込んできた一人ひとりに新たな舞台を用意するところに、JSLならではの意味がありそうです。

試合だけじゃない5日間 データと指導で選手の「その先」へ

JSL2026で選手たちに用意されたのは、試合に出場する機会だけではありません。全試合で「TrackMan」と「BLAST」を使用し、全投球・全打席を計測。球速やボールの回転数・変化量、打球速度などを数値化し、その場で選手本人にフィードバックする環境が整えられました。こうした計測機器は強豪校や都市部を中心に導入されており、これまで自分のプレーを詳しい数値で知る機会がなかった選手にとっても、新たな発見につながる取り組みです。

さらに、2026年7月には、メジャーリーガー・菊池雄星選手がオーナーを務める合同会社K.O.Hと株式会社ジャパンリーグが業務提携。JSL2026には、元埼玉西武ライオンズで最速155km/hを記録した赤上優人氏がピッチングコーディネーターとして帯同し、高校生たちを直接指導しました。赤上氏自身も大学1年時に遊撃手から投手へ転向し、その後プロ野球の世界へ進んだ経歴を持っています。

試合後には、フィジカルや自己分析、スポーツとキャリアについて学ぶ「レベルアッププログラム」も実施されました。ジャパンリーグがJSLを「18歳のためのスポーツ・オープンキャンパス」と位置付けているように、目の前の勝敗だけではなく、自分の現在地を知り、その先を考えるところまでがこの大会の一部になっています。

高校3年生にとって、夏の大会は大きな節目ですが、野球人生そのものがそこで終わるとは限りません。もう一度実戦に挑み、客観的なデータを知り、経験を持つ指導者から学ぶ。JSL2026の5日間には、“最後の夏”を締めくくるだけではなく、選手たちが次の一歩を考えるための時間も用意されていました。

雨にも負けず全10試合を完遂 36人が駆け抜けた5日間

8月17日に始まったJSL2026は、21日までの5日間にわたって開催されました。期間中は局所的な豪雨に見舞われ、試合が一時中断する場面もありましたが、選手たちは予定されていた全10試合を完遂。学校も地域も異なる36人が、新たに編成されたチームの仲間とともに最後までグラウンドに立ちました。最終日には4日目までの勝利数に応じた決勝トーナメントが行われ、「STRINGS」が優勝を飾りました。

そして、5日間を通じてMVPに選ばれたのが、浦和学院高等学校の捕手・玉榮久豊選手でした。玉榮選手は大会を振り返り、自分の能力を数値で知ったことで、まだ伸びる余地があると気づけたことを大会の収穫として挙げています。データを通して自身の可能性を知り、夢に向かって自らチャンスをつかみにいきたいという思いを強くしたことも、この5日間で得た大きな経験となったようです。

優勝したSTRINGSでキャプテンを務めた滝崎翔選手も、普段ではなかなか味わえない経験や、野球についてさまざまなことを教わったことを振り返り、多くの成長があったと語っています。さらに、新しく出会った仲間と親しくなれたことや、自分の強みを多くの人に見てもらえたことも、この5日間で得たものだったといいます。勝敗を競うだけではなく、普段なら出会うことのなかった選手同士がつながれたことも、学校の枠を越えて集まるJSLならではの経験といえそうです。

甲子園というひとつの目標には届かなかった36人。しかし、そこで高校最後の夏を終えるのではなく、新しい仲間と再び試合に挑み、予定された10試合を最後までやり遂げました。MVPや優勝という結果はもちろん、それぞれが持ち帰った経験や出会いもまた、JSL2026が生んだ大切な成果といえそうです。

36人全員が「満足」以上 数字と選手の声が伝えるJSL2026

5日間を終えた選手たちは、JSL2026をどのように受け止めたのでしょうか。大会終了後には参加者を対象としたアンケートが行われ、36人全員が回答。「JSL2026に参加してどうでしたか?」という質問では、「大変満足」が94.4%、「満足」が5.6%となり、回答者全員が「満足」以上を選びました。大会の満足度を数字からも確認できる結果となっています。

さらに、「このリーグを友人や後輩にどの程度おすすめしたいですか?」という質問をもとに算出されたNPS(推奨度)は94.4ポイントを記録しました。進路についての考えの変化では、77.8%にあたる28人が「野球を続ける気持ちが強くなった」と回答。「進む先の選択肢が増えた」「自分の課題がはっきりした」も、それぞれ41.7%にあたる15人が選んでいます。5日間の経験は、選手たちにとってこれからの野球や進路を考えるきっかけにもなったのではないでしょうか。

参加した選手からは、当初抱えていた不安が大会初日に消え、想像以上の経験や思い出を得られたという声も寄せられました。また、初めて会う選手との交流やレベルアッププログラムを通じて、これまでとは違う野球を知ることができ、「良い高校野球の終え方ができた」と振り返る選手もいます。渡辺龍馬ヘッドコーディネーターも、ここで生まれた人とのつながりは「一生もの」だと選手たちに伝え、仲間と切磋琢磨しながらさらに成長していくことへの期待を寄せました。

甲子園出場のように勝敗だけで測れる結果とは違っても、5日間をどう感じ、何を持ち帰ったのかは選手一人ひとりに残ります。36人全員が回答したアンケートの結果や選手たちの声からは、もう一度野球に打ち込める場所をつくるというJSLの取り組みが、参加した高校生たちにしっかり届いたことがうかがえます。

「3年間やりきった」と思える場所を、もっと多くの高校生へ

甲子園に届かなかった高校3年生に、もう一度本気で野球に向き合える場所をつくる。そんな思いから始まったJSL2026は、全国10都府県・27校から集まった36人が予定された全10試合を戦い抜き、5日間の日程を終えました。大会を通じて生まれたのは、勝敗や個人成績だけではありません。学校の枠を越えた仲間との出会いや、自分のプレーを知る機会、そして高校卒業後のことを考える時間も、この夏に選手たちが得たもののひとつです。

JSLを運営する株式会社ジャパンリーグが掲げているのは、「陽の目を見ない場所に光を」という理念です。高校野球では甲子園を目指す姿に注目が集まりがちですが、その舞台に立てるのはほんの一握り。それでも、そこを目指して3年間野球に打ち込んできた時間までなくなるわけではありません。選手たちに「3年間やりきった」と感じられる場を届けたいという考えが、JSLというもうひとつの舞台につながっています。

JSLは今回で終わりではありません。次回の「JSL2027」についても開催に向けた準備が進められています。甲子園とは違う場所にも、高校球児がこれまで積み重ねてきたものを発揮できる舞台がある。沖縄に集まった36人が駆け抜けた“最後の夏”は、これから同じように高校野球の一区切りを迎える選手たちへ、新たな選択肢を示す5日間にもなったのではないでしょうか。


株式会社ジャパンリーグ 概要

株式会社ジャパンリーグは、沖縄県沖縄市を拠点に、野球を通じて選手たちに新たな挑戦の機会を提供しています。「陽の目を見ない場所に光を」という理念のもと、高校3年生を対象としたJAPAN SUMMER LEAGUEを運営。実戦だけでなく、スキルアップや新たな仲間との出会い、自分の将来について考えられる場づくりに取り組んでいます。

公式サイト:https://www.japanleague.co.jp/

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