中島佑気ジョセフ「練習で400mは走らない」日本記録保持者の驚きの練習法 急成長を支えた“裸足トレ”と“二人三脚の絆”を石川佳純が解き明かす【バース・デイ】

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2026-09-05 06:00
中島佑気ジョセフ「練習で400mは走らない」日本記録保持者の驚きの練習法 急成長を支えた“裸足トレ”と“二人三脚の絆”を石川佳純が解き明かす【バース・デイ】

9月19日に開幕を迎えるアジア大会で金メダルが期待される、陸上400m日本記録保持者の中島佑気ジョセフ(24)。東京世界陸上では男子400mで日本勢34年ぶりとなる決勝進出を果たし、6位入賞の快挙を成し遂げた。

【写真をみる】ファッション誌でも活躍する中島佑気ジョセフ

スプリント界の若きエースはいかにして歴史を塗り替えたのか。アジア大会「スペシャルアスリートアンバサダー」で卓球元日本代表の石川佳純(33)が取材した。

191cmの長身を誇る中島と対面した石川は、「テレビで観ていたより大きい。足が違いすぎて…」と思わず漏らす。中島は「400mの選手はみんな大きい。2m近くの人もいますし、ストライドが重要なので」と笑顔で応じた。

「やれることは全部やった」世界陸上で34年ぶりの快挙

中島は2025年9月に行われた東京世界陸上の男子400m予選で、パリ五輪銀メダリストらを抑えて2位でフィニッシュ。従来の記録を0秒33更新する44秒44の日本新記録を樹立した。続く準決勝でも怒涛の追い上げを見せ、日本勢として34年ぶりとなる決勝進出を果たすと、決勝では6位入賞を達成。日本人の同種目最高順位を塗り替える歴史的快挙を成し遂げた。

大活躍の要因について中島は、「東京世界陸上にかける想い、活躍したい想いの強さを実感することができた。『やれることは全部やったな』という感覚で舞台に立てたことが、良いパフォーマンスにつながった」と振り返る。

一躍スター選手となり、ファッション誌やテレビ番組でも活躍する中島だが、その競技人生の始まりは意外なものだった。

きっかけは「高校推薦」無名だった少年を見出した恩師

東京・立川市出身で、ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ中島は、中学から陸上をスタート。サニブラウンをはじめ多くのスプリンターを輩出した名門・城西大学附属城西高校(東京・豊島区)への進学を切望していたが、当時は全国大会の出場経験すらない無名の存在だった。

そんな彼に400mの選手として声をかけたのが、シドニー五輪出場経験を持つ城西大城西高校陸上部の山村貴彦監督(47)だった。山村監督は「私はタイムが速いから声をかけるというよりは、自分の目で見て伸ばしてあげられるかなと思う子に基本的に声をかけるので。長い目で見て、高校3年間で大成しなくても将来的に世界で活躍できるようになればいいなと、あくまでも僕の願望と僕の目標というか、自分を超えるような選手を育てたいというのもあったので」と当時を明かす。

「なぜ一番きついと思われる400mをやろうと思ったのか」と疑問を投げかける石川に対し、中島は「行きたい高校があって、400mのタイムなら推薦をもらえるということで始めた。高校に入ったらやめようと思っていた。100mや200mの方が好きというか、できればスプリントをやりたかった」と意外な事実を明かした。しかし、400mの日本学生新記録(45秒03)を樹立した経験を持つ山村監督のもとで厳しい練習を重ねるうちに才能が開花し、インターハイ準決勝まで勝ち進むこととなる。

高校時代、山村監督から「貪欲さとアスリートとしての意識レベルが上がれば、シニアで日本一になれる」と言われた言葉が、大学でも陸上を続ける大きなきっかけになったという。

「父のような存在」東洋大・梶原総監督と突き詰めた“緻密な戦略”

山村監督が見出した才能は、東洋大学進学後に一気に花開く。2023年、大学4年時に日本選手権を制し、世界陸上に出場すると、2024年には日本選手権を連覇し、パリ五輪へ出場。高校まで、世代別の大会すら優勝できなかった少年が、わずか4年で日本代表のエースへと急成長を遂げた。

「支えになる存在はどなたですか?」という石川の問いに、中島は「一番は監督ですね。自分の中で父のような存在」と答えた。その人物こそ、東洋大学陸上部の梶原道明総監督(73)だ。

梶原総監督は中島の持続力に着目。「ジョセフはトップスピードが高いから日本でトップになったのではなくて、トップスピードよりもちょっと下のところのスピードを維持する能力が高い。そのペースをあえて乱さないでいって前半もう少しスピード出していけるようにならないかな」と、トップスピードを上げるのではなく持続力を活かした後半型のレースプランを選択した。さらに、エネルギーロスを減らすために「芝生の上を裸足で走る」トレーニングを取り入れ、足首を固定して地面からの反発力を無駄なく推進力に変える走りを叩き込んだ。

取材現場では、中島が「せっかくなので、我々のトレーニングを一緒にやりませんか?」と提案し、石川が実際に身体を張って体験する場面も。

まずは走りの要となる、背骨や骨盤と太ももの骨をつなぐ「腸腰筋」のトレーニング。壁に沿って横向きに片足で立ち、もう一方の脚の太ももを上げた姿勢から、脚を地面に下ろしてすぐに前へ引き戻す。「走っている時に足が流れないのが一番大事。後ろに流れるスペースをできるだけ小さくしたい」と語る中島の手本にならい、石川も挑戦。「音が鳴ったらすぐ返す」という素早い動きを繰り返し行うと、慣れない部位への急激な負荷に「ここヤバい!」と思わず声をあげる。

続いて、最新テクノロジーを搭載したマシンを使って10kgの負荷をかけて走るトレーニングに石川も挑戦。腰に巻いたベルトの重さに「ちょっと待って!本当?」と戸惑いながら走った石川だったが、計測データを確認した中島は「見てください、グラフが一定で持続力高いです。こんなきれいなグラフないですよね。見習います」と絶賛。「120%出せていた」とお墨付きをもらい、石川が「よし!」と喜びを爆発させる一幕もあった。

東京世界陸上の決勝前、梶原総監督から「2人で組み立てたプラン、緻密な戦略を信じて惑わされずに走ってこい」と背中を押された中島。その言葉通りに自分のリズムを貫き、見事に6位入賞を果たした。

現役時代にコーチと二人三脚で歩んできた石川は、「自分がダメかなと思った時に信じてくれたり、『できるんだ』と言ってくれる存在がいるから頑張り続けられる」と深く共感。レース後に涙を流した梶原総監督と抱き合った中島は、「親孝行的なこともできたのかなと思う。もっといい景色を監督に見せたい」と語った。

「練習で400mは走らない」人体の限界に挑む過酷な決意

取材の最後、石川にはどうしても気になっていることがあった。

「初めて練習を見てびっくりしたのが、400mを走らないこと。今日はやらないんですか?」と尋ねる石川に、中島は「しないです。練習で400mは絶対に走らないです。キツすぎるので、走るなら絶対試合」と明かした。

400mは全速力で走れる限界とされる40秒を超えて競うため、「究極の無酸素運動」と呼ばれ、陸上競技で最も過酷と言われる。特にラスト100mは乳酸が蓄積し、鉛のように重くなる体を精神力で動かすハードな種目だ。そのため、普段の練習では150mや250mほどの距離にとどめているという。

「試合の時にいきなり400m走ると、ペース配分とか不安になりませんか?」と心配する石川に、中島は「言われてみればなんで心配にならないんだろうって感じなんですけど、結局最後は『行ってこい』みたいなところはあります」と笑った。

人体の限界に挑む過酷な競技で、最後は精神力の勝負となる400m。2人の恩師と二人三脚で培った絆と走りを武器に、中島はアジアの頂点を目指して新たなスタートを切る。

(TBSテレビ「バース・デイ」2026年8月29日放送より)

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