温泉の和室が子どもたちの学び舎に 佐用姫の湯「温泉寺子屋」がつなぐ地域の輪
夏休みの宿題を広げる場所が、学校でも自宅でもなく「温泉」だったら――。佐賀県唐津市の「きゅうらぎ温泉 佐用姫の湯」で、2026年7月29日から31日までの3日間、地域の小学生を対象とした「温泉寺子屋」が開催されました。厳しい暑さが続く夏、空調の効いた和室を子どもたちの学習や交流の場として活用する、2024年から続く取り組みです。
参加したのは地域の小学生や厳木高等学校の生徒たち。宿題を高校生に教えてもらうだけでなく、一緒に昼食を囲み、かるたを楽しみ、高校生が企画した「みそ玉」づくりのほか、パラコードを使ったアクセサリーづくりにも挑戦しました。
夏休みの学びを支えながら、小学生と高校生、そして地域をつなぐ場所へ。温泉施設の和室で生まれた3日間の交流と、その背景にある「地元を一緒に盛り上げたい」という想いを紹介します。
温泉の和室が、夏休みの子どもたちの「寺子屋」に

夏休みといえば、外で思いきり遊ぶ時間も楽しみのひとつです。しかし、厳しい暑さが続く近年は、子どもたちが屋外で過ごすことが難しい日も増えています。そんな夏の新たな居場所として活用されたのが、株式会社創裕が運営する、佐賀県唐津市の「きゅうらぎ温泉 佐用姫の湯」の和室です。2026年7月29日から31日まで開催された「温泉寺子屋」では、空調の効いた涼しい空間が、地域の子どもたちの学習と交流の場になりました。
子どもたちは夏休みの宿題や自分が勉強したいものを持ち寄り、それぞれのペースで学習。分からないことがあれば、一緒に参加した厳木高等学校の高校生ボランティアに質問することもできます。学校の授業とは少し違い、温泉施設の畳の上で高校生と一緒に机を囲む。そんな普段とは異なる環境も、「温泉寺子屋」ならではの特徴です。
さらに、ここで過ごす時間は勉強だけではありません。学習の合間には高校生と昼食を囲んで会話を楽しんだり、和室の畳を活かしてかるた大会をしたりと、自然に交流できる時間も設けられました。宿題をする場所であると同時に、人と出会い、一緒に過ごせる場所にもなっています。
温泉施設と聞けば、お風呂に入ってくつろぐ場所を思い浮かべる人が多いでしょう。その和室を地域に開くことで、暑さを避けながら子どもたちが安心して過ごせる夏休みの居場所へ。施設にあるものを地域のために活かす、どこか「昔ながらの寺子屋」にも通じる温かな取り組みです。
教える、教わるだけじゃない。小学生と高校生が一緒に学んだ3日間

「温泉寺子屋」で学んでいたのは、小学生だけではありません。参加した厳木高等学校の生徒たちは、分からないところを教えるボランティアとして小学生を支えながら、自分たちでもワークショップを企画しました。将来、教職や幼児教育など子どもに関わる仕事に興味を持つ高校生にとっては、実際に子どもたちと接することで、自分の適性や進路について考える機会にもなるよう企画されています。

今回、高校生のアイデアから初めて実現したのが、インスタント味噌汁の素「みそ玉」づくりです。栄養士を講師に迎え、味噌汁に含まれる栄養や食について学びながら、それぞれがオリジナルのみそ玉を作りました。普段は何気なく口にしている味噌汁も、自分の手で作ってみれば、料理の楽しさや食について考えるきっかけになります。

さらに、防災グッズとしても使われる「パラコード」を使ったアクセサリーづくりにも挑戦。学習の合間には一緒に昼食を囲んだり、かるたを楽しんだりと、「先生役の高校生と教わる小学生」という関係だけに収まらない交流が生まれました。
宿題を教えてもらった小学生には、いつもと少し違う夏休みの経験を。企画を考え、子どもたちと向き合った高校生には、自分の将来を考えるきっかけを。年齢も立場も違う両者が同じ場所で過ごし、それぞれに持ち帰るものがある――。そんな一方通行ではない学びも、「温泉寺子屋」の大きな魅力といえそうです。
「地元を一緒に盛り上げたい」温泉寺子屋が生まれた理由

「温泉寺子屋」が始まった背景には、佐用姫の湯と地域の人たちとのつながりがあります。きっかけとなったのは、毎年春に開催されているマルシェイベントでした。そこで地域の人たちとの新たな交流が生まれ、店舗の社員が抱いたのが「地元の方々と一緒にこの地域を盛り上げたい」という想い。その気持ちを形にする取り組みとして2024年にスタートしたのが「温泉寺子屋」です。今回で3回目を迎えました。
温泉施設が地域のためにできることは、お湯やくつろぎの時間を提供することだけではないのかもしれません。人が集まれる場所があり、そこで新しいつながりが生まれたからこそ、今度はその場所を子どもたちのために活かしていく。マルシェで芽生えた地域との縁が、夏休みの「寺子屋」へとつながっていった経緯には、地域に根ざした施設ならではの温かさを感じます。
そして、この取り組みが一度きりのイベントではなく、3年にわたって続いていることにも注目です。子どもたちが集まり、学び、高校生と交流する。高校生にとっても、普段なら接点の少ない世代と関わる経験になります。そうした時間を重ねながら、施設そのものを地域の人たちにとって、より身近な存在にしていくことも「温泉寺子屋」が担う役割のひとつです。
「地元を一緒に盛り上げたい」という想いから始まった小さな寺子屋は、回を重ねるごとに地域の人と人をつなぐ場所へ。温泉施設という身近な場所だからこそ生まれる交流が、少しずつ地域に根づいていく。そんな歩みも、この取り組みの魅力ではないでしょうか。
温泉に入るだけじゃない。地域の人が集まる「憩いの場」へ
「温泉寺子屋」には、以前から厳木高等学校の生徒と一緒にイベントをしたいという佐用姫の湯の想いも込められています。高校生が参加しやすい夏休みを選んだことで、その構想が実現しました。参加者は例年、厳木小学校の児童が中心ですが、今回は中学生からも参加希望があったといいます。少しずつ参加の輪が広がっていることからも、地域のなかでこの取り組みが知られるようになってきた様子がうかがえます。
佐用姫の湯が大切にしているのは、小学生の学びを支えることだけではありません。ボランティアとして参加した高校生にとっても、子どもたちと関わる経験が将来の糧になってほしいという願いがあります。今回用意された「食育かるた」や「いろはかるた」、パラコードを使ったアクセサリーづくりでは、分からないところを互いに教え合う子どもたちの姿も印象的だったそうです。
温泉は、世代を問わずさまざまな人が訪れる場所です。佐用姫の湯では、その特徴を活かしながら、地域の人たちが気軽に集い、交流できる場づくりにも取り組んでいます。お湯につかって体を休めるだけではなく、ときには子どもが宿題を広げ、高校生がその隣に座り、一緒に何かを作ったり考えたりする場所になる。温泉施設の新しい役割を感じさせてくれます。
支配人は、機会があれば「地域のコミュニティとして来年も開催したい」としています。子どもたちの学びや交流の場をつくりながら、地域の人たちが気軽に集える場所を目指す佐用姫の湯。「地域とともに歩む施設」として、これからどのようなつながりを育んでいくのかにも注目です。
温泉寺子屋がつないだ、小学生・高校生・地域のこれから
夏休みの宿題に取り組む小学生、その隣で勉強を支える高校生。一緒に昼食を囲み、かるたで遊び、みそ玉やアクセサリーづくりにも挑戦する。「温泉寺子屋」の3日間には、勉強を教える・教わるという関係だけではない、さまざまな交流がありました。
小学生にとっては、暑さを避けながら安心して過ごせる夏休みの居場所であり、普段とは違う世代と触れ合える機会に。高校生にとっては、子どもたちと向き合い、自分たちで企画したワークショップを実践する経験の場になりました。そして佐用姫の湯にとっても、地域の人たちが集まり、新たなつながりを育んでいく機会になっています。
始まりは、春のマルシェを通じて生まれた地域とのつながりと、「地元の方々と一緒にこの地域を盛り上げたい」という想いでした。2024年から3回にわたって続いてきたことで、その想いは少しずつ形になっています。支配人も、機会があれば地域のコミュニティとして来年も開催したいとしています。
普段は温泉でくつろぐ人たちを迎える和室が、夏の3日間だけは子どもたちの「寺子屋」になる。そこで生まれた学びや出会いが、また次の夏へとつながっていく――。「温泉寺子屋」が地域の夏の風景としてこれからも続いていくことを期待したいですね。
株式会社創裕 概要
「きゅうらぎ温泉 佐用姫の湯」を運営する株式会社創裕は、1993年12月設立。香川県高松市に本社を置き、温浴施設の経営・運営受託・コンサルティングをはじめ、外食、ボディケア、地下水設備、社会福祉などの事業を手がけています。
温浴施設は「きゅうらぎ温泉 佐用姫の湯」を含め、中国・四国、東海・近畿、九州エリアで16施設を展開しています。
公式サイト:https://www.souyu.co.jp/