箱根駅伝“3年間メンバー外”からマラソン日本代表へ 黒田朝日との激闘を制した吉田祐也が導き出した「質より量」という答え【バース・デイ】

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2026-09-12 06:00
箱根駅伝“3年間メンバー外”からマラソン日本代表へ 黒田朝日との激闘を制した吉田祐也が導き出した「質より量」という答え【バース・デイ】

東京都渋谷区のIT企業で週2回、社内報の作成に勤しむ1人の青年がいる。真面目で、分からないところはすぐに質問し、職場の戦力として信頼を得ている彼の名前は吉田祐也(29)。彼にはもう一つの顔がある。陸上・男子マラソンの日本代表選手という顔だ。

【写真をみる】青山学院名物「坂道トライアル」で追い込む吉田選手

2020年、青山学院大学の一員として箱根駅伝に出場し、区間新記録の快走で一気に注目を浴びた吉田。今年2月の別府大分毎日マラソンでは、箱根駅伝で「シン・山の神」として脚光を浴びた6学年下の後輩・黒田朝日(22)と熾烈なデッドヒートを繰り広げた。

2人を指導する原晋監督が解説席から見守る中、レースが動いたのは41km地点。給水のタイミングでアクセルを踏み込んだ吉田が先輩の意地を見せつけ、同門対決を制して日本人トップでフィニッシュ。2時間6分59秒の好記録でアジア大会代表の座を勝ち取った。

今や日本のトップを争うランナーへと成長した吉田だが、実は大学3年まで無名の存在だった。

身体能力の低さを補った異次元の練習量

埼玉県東松山市に生まれた吉田。小学生の時に長距離に興味を抱き、中学・高校と陸上部に所属したが、目立った成績は残せなかった。大学は、箱根を夢見て青山学院へ進学。

しかし、原監督が「身体能力は決して高い方ではない。どちらかといえば低い方です」と語る通り、吉田は大学3年まで箱根駅伝のメンバーに入ることができなかった。当時の挫折感は人一倍大きかったという。

陸上は大学で最後にする。そう決めた吉田は、ラストイヤーにかけて凄まじい練習量を自らに課した。実業団のトップ選手でも月間800km程度と言われる走行距離において、吉田が走った距離は実に1100km以上。吉田自身「箱根を集大成にしていいと感じていた。食事もそうですし、睡眠も私生活も、大学の友達と遊んだりすることも、普通の大学生活ではない生活を送った」と話すほど、全てを陸上に捧げた。

「吉田はそこから頑張りました。逃げませんでした。努力する能力は世界ナンバーワン」と原監督も称賛するひたむきな練習が実を結び、4年生の冬、悲願の箱根駅伝に初出場。2位でタスキを受け取ると、4区で区間新記録(当時)の快走を見せ、総合優勝に大きく貢献した。

当初は箱根を最後に引退するつもりだったが、その走りを見た原監督から「これだけ仕上がっているにも関わらず、辞めるのはもったいない。マラソンで2時間10分を切ったら実業団でやってもいいんじゃないの」と後押しを受け、初マラソンに挑戦。2020年2月の別府大分毎日マラソンに出場すると、2時間10分を大きく上回る2時間8分30秒、日本人トップでフィニッシュした。レース後に「自信を持って走れた」と語った吉田は、プロの道へ進むことを決意した。

世界陸上での挫折と「質より量」という答え

大学卒業後は実業団のGMOインターネットグループへ入社。2024年からは再び原監督の指導のもと青学大の学生とともに練習を積み、同年12月の福岡国際マラソンでは当時の日本歴代3位となる2時間5分16秒で優勝。東京世界陸上の代表内定を掴み取った。

しかし、日の丸を背負って挑んだ自身初の大舞台・2025年9月の東京世界陸上では、世界の激しいペース変動にリズムを狂わされ、自己ベストから10分以上遅れる2時間16分58秒、34位に終わった。

レース後、「もう国立競技場にも行きたくないぐらい落ち込んでいて、思い出したくないっていう反面と、もう1回あのレースをやり直したい両方の気持ちがあって、自分の中で気持ちの整理が出来ていなかった」と吐露した吉田。

初の世界陸上で味わった大きな挫折から再起をかけるべく、吉田が導き出した答えは、自身の原点でもある泥臭いスタイルだった。

「質より量だと思っていますし、量やらずに質を語っている時点で大した結果にならない。徹底した量の中でしか質は生み出せない」

常人離れしたストイックさで狙う「アジアの頂点」

今年8月、長野県・菅平高原での合宿で、吉田は標高1300mの酸素の薄い環境下でひたすら走り込み、実業団の標準を大きく上回る月間1000kmを走破した。全長21kmのうち18kmまでは決められたペースで走り、ラスト3kmで標高差213mの坂を全力で駆け上がる青山学院名物の「坂道トライアル」でも極限まで身体を追い込んだ。

合宿をともにする後輩の黒田朝日は、「祐也さんは競技の向き合い方のストイックさが常人離れしている。特に夏合宿に行った時、走る距離が祐也さんはめちゃくちゃ多い。真似できない」と舌を巻く。

また、吉田は練習後にも毎日およそ1時間半以上を身体のケアに費やす。「やらなかったらどうなるかわからないですけど、たぶん1週間ぐらいで故障する。自分の中でコンディショニングの一つ」と語り、面倒くさくないかという問いには「歯磨きと同じ感じ」と事もなげに答えてみせた。

「変わったことをするつもりはなくて。自分が出来る練習を継続して、自信を持ってスタートラインに立つことが、単純だけど難しい。まずは練習を継続していきたい」

自国開催の大舞台でリベンジに挑む吉田祐也。「世界陸上は出ただけという感じだったので、結果を出してこそ嬉しかったと思える。今回金メダルを目指して頑張りたい」と力を込める。挫折を乗り越えたその先に、新たなバースデイが待っている。

(TBSテレビ「バース・デイ」2026年9月5日放送より)

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