世紀末のパリで人々を魅了したポスターの「黒猫」 自由気ままな「ボヘミアン」生活様式を反映 フランス
19世紀末のパリで人気を博した「黒猫」のポスター。作者は猫をこよなく愛した芸術家Steinlenでした。猫は当時流行した「ボヘミアンな生活様式」を体現する存在だったのです。
パリで有名な「黒猫」のポスター

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フランス美術がお好きな方は、19世紀に描かれた有名な黒猫のポスターを見たことがあるはずです。
「Tournée du Chat Noir de Rodolphe Salis」(Rodolphe Salisの黒い猫の旅)と題するこの作品のモチーフ「黒猫」は、パリ各地で売られるバッグや絵葉書、マグカップなどにも登場しており、パリの雰囲気を象徴するものとしていまでもたいへん人気があります。
このポスターは1896年、興行師Rodolphe Salisがパリに設立した劇場「Le Chat Noir」の宣伝のために制作されました。この劇場兼キャバレーでは毎晩舞台パフォーマンスが行われ、モンマルトル地区に住む作家や芸術家たちの多くが魅了されて、この場所に集いました。
制作したのは、猫をこよなく愛して情熱を注いだ世紀末の芸術家Théophile Alexandre Steinlen(1859~1923年)です。
スイスのローザンヌで生まれた彼は、20代前半にパリへ移り、生涯をそこで過ごしました。ムーラン・ルージュの設計者としても知られる友人Adolphe Willetteに紹介されてLe Chat Noirの常連客と出会い、それがきっかけでポスター制作の依頼を受けたのです。
猫をモチーフに数々の作品を制作

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「Tournée du Chat Noir de Rodolphe Salis」は、Steinlenが制作した商業ポスター10作品のうちの1つです。1894年に制作した展覧会ポスターには黒猫と三毛猫が大きく描かれ、翌年のチョコレート広告のポスターには猫とともに彼の妻と娘が描かれています。
ミルクの広告ポスターでは、小さな女の子が3匹の猫に囲まれながら小皿で牛乳をすすっている様子が描かれています。3匹の猫はトラ猫と三毛猫、黒猫です。この三毛と黒猫は、以前の別の作品にも登場していました。彼はポスターのほかにも、熱心に猫の像や置物を制作しています。
1889年に彼が制作した「Pierrot and the Cat」(ピエロと猫)という小さな絵画には、フランスの古典的な定番キャラクターであるピエロに扮した小さな子どもがぎこちなく黒猫を持ち上げている様子が描かれており、近年はソーシャルメディア上のミームのネタとしてもよく用いられています。
猫が「ボヘミアン生活の象徴」に

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Steinlenにとって、猫は非常に重要な主題でした。彼はモンマルトル地区にいる大勢の地域猫に餌やりをしていたほどの猫好きで、猫を描いた習作も多数残しています。
当時、猫は「自由気ままで社会規範にとらわれない、ボヘミアンの生活スタイルを象徴する存在」と考えられていました。モンマルトルでは飼い猫ではなく地域猫が街を自由に徘徊していたため、「猫は、ブルジョア的な社会規範を否定する存在」ともみなされたのです。
Steinlenはこうした猫を描くことによって、パリの資本主義経済とは距離を置き「ボヘミアン的な生活を追求した」といえるかもしれません。
出典:
・The Surprising Story of the Cat-Obsessed Artist Behind the Famed ‘Le Chat Noir’ Poster
・世界で最も有名な「黒猫」の作者とは? 権力への抵抗と自由への渇望を猫に重ねた画家スタンラン
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