日銀追加利上げ、ベッセント財務長官の「要求」への高市政権の回答は?【播摩卓士の経済コラム】

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2026-09-19 07:00
日銀追加利上げ、ベッセント財務長官の「要求」への高市政権の回答は?【播摩卓士の経済コラム】

アメリカFRBと日本銀行が相次いで0.25%利上げに踏み切り、インフレ高騰と長期金利の上昇に立ち向かう姿勢を鮮明にしました。しかし、同じ週に行われた内閣改造で、高市総理は「責任ある積極財政」推進を重ねて強調し、主要経済閣僚も留任させました。「リフレ政策はやめるべきだ」というアメリカのベッセント財務長官の「忠告」に耳を貸さない姿勢は、今後のマクロ政策運営を一層、難しいものにしそうです。

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日銀、3か月で追加利上げ

日本銀行は18日、政策金利を1.0%から1.25%に引き上げることを決めました。利上げは6月以来3か月ぶりのことで、利上げのペースが、これまでの「半年に1回」程度から加速した形です。

ベッセント財務長官は、「植田総裁が正しい措置をとると信じている」と繰り返すと共に、円の過小評価や長期金利高騰に対して「断固たる措置を講じることを強く支持する」とまで公言していました。その意味では、日銀は、まずは第一弾として要請に応じた格好です。

今後の利上げ日程は明言せず

記者会見した植田総裁は、「基調的物価は2%に近づきつつあり、政策の局面は変化した」と、利上げの継続を明確に示しましたが、今後の引き締め加速の具体的なペースについては、慎重な言い回しに終始しました。

日本経済にとって1.25%は、1995年以来31年ぶりの金利水準である上に、中東情勢の先行きが不透明なことを考えれば、景気の先行きを慎重にみる必要があるからです。

また、政治的にも、今回は、ベッセント長官という「援軍」もあって、高市政権が利上げを黙認したものの、「リフレ政策」志向の高市総理が、今後の利上げ加速をすんなり認めるかどうかは、依然、見通せないからでしょう。

「リフレ派」2人の審議委員が反対

現に、今回の決定には、審議委員6人のうち、高市政権が新たに任命した、浅田、佐藤の2人の審議委員が、利上げに反対票を投じました。ECB(欧州中央銀行)やアメリカのFRBが揃って利上げを決めた直後の、このタイミングで、敢えて利上げを見送れば、円安の加速や日米間の亀裂など大変な事態になる、と私は思いますが、そんな主張をする審議委員を送り込んだのは、高市政権そのものです。2人の審議委員の行動に、高市総理の本音が表れていると、受け取るのが自然です。

城内大臣留任が市場で注目

また、この2人の審議委員選定に関わったとみられる城内実経済財政担当大臣が、今回の内閣改造で、結局、留任したことも、市場では大きな注目を集めています。城内氏は、自民党内の積極財政派グループのリーダーを長らく務め、金融緩和と財政拡大、円安容認といった、いわゆる「リフレ政策」を信奉する政治家とされています。

このため市場関係者からは、今回の城内氏の留任を、ベッセント財務長官の政策修正要求に対する、高市総理の事実上の「ゼロ回答」と受け止める声も上がっています。こうした「受け止め」が広がれば、円安の修正や、長期金利上昇の抑制といった、市場のトレンド(方向感)に、影響を及ぼす懸念もあります。

一方、財政政策では回答なし?

「今はリフレ政策はやめるべきだ」というベッセント長官の求めには、(1)金融引き締めを進めること、(2)財政赤字拡大懸念を払しょくすることの、2つの意が込められています。しかし、17日の内閣改造にあたって、高市総理は「責任ある積極財政」の推進を第一の目標に掲げ、「積極財政」の旗を降ろすどころか、さらに大きく振ってみせました。

「初心貫徹」、「ブレない発言」は、高市さんらしいと言えばそうですが、「時」や「状況」が変わっているにも拘らず、です。

高市総理が尊ぶアベノミクスの、いわば「生みの親」でもあるエール大学の浜田宏一名誉教授は、「現在の局面での積極財政はインフレを悪化させ、とんでもない」と強く批判しているほどです。10兆円もの消費税減税をしなければいけないほどにインフレが心配な時に、わざわざ「積極財政」などと喧伝するのは、どう見ても方向が逆です。まして、それに「責任」が伴っていなければ、どれほどのツケが回ってくるでしょうか。

財源論は年末に先送り

食料品の消費税8%を1%に引き下げ、低所得者への給付も行うためには、2年で10兆円の財源が必要です。信じられないことに、未だに財源は明示されていません。要は、インフレによる税収の上振れを当て込んでいることがミエミエです。

しかし、インフレによる自然増収だけで10兆円すべては賄えないでしょうし、高市総理肝いりの、370兆円の官民投資のためにも、毎年10兆円オーダーの予算が必要です。これに防衛費の増額や、積み残しになっている子育て支援の財源確保なども含めれば、年末の予算編成時に先送りされている財源の議論は、相当な難航が予想されます。一歩間違えば、財政拡張懸念の「火の手」が、市場に広がってしまうリスクを抱えたままです。

円安の悪夢を防ぐべき

ベッセント長官の要求に、金融面では今回の利上げで一定の回答をしたことになったとしても、財政政策については、何も答えを返していない状態です。円安と日本の長期金利の上昇は、世界の長期金利を押し上げ、金融市場に思わぬ緊張をもたらしかねません。だからこそ、ベッセント長官は危機感を募らせているのです。軽く見ない方が良いと思います。

ベッセント効果が失われ、再び、円安が進めば、日本経済はさらにインフレに苦しむという悪循環に陥ります。1回の追加利上げだけで、ほとんどゼロ回答だったとしたら、次回、ベッセント氏は為替市場への協調介入という「助け舟」を、果たして出してくれるでしょうか?

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