「猫の命を守りたい!」 超過密な刑務所で暮らす猫と囚人たちが結ぶ「更生への絆」 チリ

2026-09-21 06:00

過密で劣悪な環境にあるチリの刑務所。ネズミ駆除のための猫が繁殖を重ねて増え続け、衛生環境が悪化しています。このため動物保護団体などが猫の治療に当たり、避妊手術を実施しました。一方で囚人と猫はお互いの絆を深めており、更生に向けた「猫セラピー」効果も期待されています。

劣悪な環境に多くの囚人と猫が

檻の外をのぞく猫

画像はイメージです

南米のチリにある、国内最大で最古のSantiago Sur刑務所。最大収容人数は2400人ですが、現在はほぼ倍の約4900人が服役しています。それだけではありません。ここにはたくさんの猫もいるのです。

180年前に建設されたこの刑務所内で、10年前からネズミ駆除のための猫の飼育が始まりました。でも不妊手術を行ってこなかったため猫の数は増え続け、現在では100匹近くにまで達しているのです。猫は自由に刑務所内を出入りし、運動場に糞便を残し、衛生状態は決してよいものとはいえません。

それでも猫は受刑者から愛され、マスコットのような存在になっています。外部からのペットフードの持ち込みが禁止されているため、受刑者たちはプラスチック製のトレイで自分たちの食べ残しを猫たちに与えています。中には、猫のために何日も自身の食事を抜く囚人までいます。

受刑者が一番心配するのは「劣悪な環境で猫が病気になっても、獣医に診てもらうことができない」ということでした。病気の猫たちのために、彼らが限られた食料で自家製の薬を作ることもよくあるといいます。

この状況が猫と囚人双方に与える影響を危惧したチリの猫保護団体「Felinos財団」は、「猫たちの健康診断を行うために訪問したい」と刑務所に提案しました。しかし施設の責任者たちは当初消極的でした。そこで国際動物愛護協会(HSI)の協力を得て「刑務所内での衛生環境悪化が深刻だ」と指摘してもらうことで、やっと訪問が認められたのです。

猫が囚人たちの心の支えに

独房の囚人

画像はイメージです

「今では刑務所当局も、猫たちが囚人にとってどれほど重要で精神的な支えになっているかを完全に理解しています。看守のみなさんも積極的に協力してくれるようになり、活動が楽になっています」とHSIの広報担当者は話しています。

「刑務所の生活環境は、猫にとっても受刑者にとっても過酷なものです。猫たちは多くの健康問題を抱えていました」というのは、HSIチリ支部長のDaniela Paula Benavides Sanchez(45歳)さんです。

HSIとFelinos財団のチームは、チリ国家憲兵隊と協力して、3日間にわたり猫たちに医療を提供しました。猫には、耳や目の感染症、ノミやダニ、寄生虫、皮膚炎や発疹、栄養失調のほか、猫同士の喧嘩による傷なども多く見られたといいます。

「受刑者たちが、入れ墨の入った腕で大事そうにお気に入りの猫を抱えて持ち込むようすには、心が打たれました。猫たちの生活を少しでもよくしたい…という真摯な願いが感じられます」とDanielaさん。

3日間にわたる訪問中、猫たちは徹底的な健康診断を受け、避妊・去勢手術をしてもらい、狂犬病の予防接種も受けました。これとあわせて、囚人たちは刑務所の環境で猫を世話する方法について、専門家のアドバイスも受けました。

「何千人もの受刑者がいるのに収容スペースは限られており、多くの囚人が狭い場所に閉じ込められていて、非常に過酷な環境に置かれています。生まれたばかりの子猫の多くは、十分な餌がなく、病気やケガで死んでしまいます。受刑者同士の小競り合いで押しつぶされてしまうこともあるのです。成猫は必要に応じて隠れることを覚え、刑務所生活に適応しますが、子猫にとっては本当に大変なのです」と話すDanielaさんです。

更生に向けた効果も期待

猫を抱く男性

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「それでも猫たちが飼い主である受刑者に寄り添い、人々の心の支えとなって特別な絆を結んでいるのを見ると、心が温まります」とDanielaさん。

インコや熱帯魚、犬やモルモットまで、動物を刑務所に導入する「セラピープログラム」は、世界中で試験的に実施されています。こうした刑務所のペットは受刑者の緊張を和らげ、退屈な時間を減らし、責任感を育むよい効果があります。研究によると、釈放されたあとの再犯率を低下させることもわかっています。

また、チームワークやコミュニケーションといったスキルの向上、勤労意欲の向上など、社会復帰を円滑にする効果も期待できるのです。さらに、ペットの飼育を通じて受刑者と刑務官との関係が改善することもわかっています。

「受刑者は、猫たちを本当に大切に思っています。動物は受刑者の更生に重要な役割を果たし、刑務所生活をより耐えやすいものにしてくれますから。現に、まもなく出所予定のある受刑者は、ここの猫のうち1匹を家族として自宅に連れ帰るつもりだといっていました」と話すDanielaさんです。

出典:Inside the Chilean prison where inmates take care of almost 100 cats

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