難病の子どもと家族を招待してプロ野球観戦へ

プロ野球選手の共感がきっかけでイベントに
プロ野球・埼玉西武ライオンズの本拠地であるベルーナドームで行われた、難病の子どもとその家族を招待してのプロ野球観戦を取材してきました。このイベントを企画した「公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を」の伊藤洋さんは、普段の活動と企画の経緯について次のように話しました。
私達の一番メインの活動は、旅行中の身体的ケアや金銭的な面も含め、難病を患う子どもとその家族全員を旅行に招待する「ウィッシュ・バケーション」です。患児だけではなく、家族全員を2泊3日で招待しています。それ以外に自前で「ダイジョブ」という訪問看護ステーションを運営しているほか、沖縄の恩納村に宿泊施設として「青と碧と白と沖縄」という施設を運営しています。
今回のイベントは、埼玉西武ライオンズの炭谷銀仁朗選手が、法人の設立当初から私達の活動に共感してくださり、難病の子どもとその家族をご招待いただいています。おおよそ年に2回から3回ご招待をいただいて、ずっと支援をいただいています(伊藤洋さん)。
埼玉西武ライオンズとしても、社会貢献活動の一環として、選手のやりたいことをサポートするという形でこういった招待イベントを開催しているそうです。
伊藤さんのお子さんも難病を患っていて、以前このイベントに参加したことをきっかけに「難病の子を持つ親」としてその視点から今度は支える立場になりたい」ということで、この法人の運営に参加するようになったそうです。
イベントへの参加が日常の励みに
今回は、先天性の心疾患のお子さんがいる家族や、脳の病気で呼吸器が必要なお子さんのいる家族など、あわせて7家族ほどが参加していました。
参加していた家族の中には、元々ライオンズが好きだったり、スポーツ観戦に興味はあったものの設備の問題で来られなかったり、多くの人が集まったり大きい音が鳴ったりすることから現地でのスポーツ観戦は控えていた家族もいました。皆さん、「難病の子どもとその家族へ夢を」の別のイベントに参加した時に紹介されたり、病院内の張り紙などを見て申し込んだということでした。
参加した家族にイベントの感想を聞きました。
▼体温の関係や、呼吸器をつけているので電源の問題もあって、なかなか外に出るのは難しかったんですけど、今回はサポートをしていただける形なのですごく助かっています。
▼やっぱり車などの移動も長距離だと難しかったり、行った先でも障がいがあることが見た目で分かるわけではないので、ちょっと大きい声出しちゃったりで人の目が気になる部分もあるんですけど、こういうイベントに参加できるというだけで、私達自身の気持ちもちょっと楽になるところがあるのでありがたいと思います。
▼今日も「これ行くよ」って言ったときには嫌だって言い出したんで、どうなるかなとは思ったんですけど、来てみたらあんまり見たことないような風景を見て、結構気に入ったようだったので来てよかったです。
このようなイベントに今回初めて参加したという家族も、過去に同じようなイベントに複数回参加したことがある家族もいたのですが、皆さん口にしていたのは「サポートのありがたみ」でした。また、イベントに参加できることが日常の励みになるという言葉もありました。
皆が当たり前の日常を送れるように
今回、チーム事情で選手の参加はなく、その代わりにサインボールやタオルなどのグッズのお渡しのみとなったのですが、回によっては選手が参加して交流会があったり、写真撮影をしたりということもあるようでした。
他にも試合前の練習見学など、普段ではなかなか体験できないことを経験できるイベントとなっていました。
「難病の子どもとその家族へ夢を」伊藤さんは、今後の展望についてこう話します。
日本もバリアフリーなど色々と言われますが、やっぱりまだ難病のご家族だったり、子供自身もそうですけどなかなか目が向かない中で、かわいそうじゃないんだと、こういう子供がいるんだ、病気の子がいるんだと知っていただくきっかけになりますし、また自分自身を考えるきっかけにもなると思いますので、社会との距離を置くことなく、社会の方々に難病の家族をもっともっと知ってもらう。
皆さんが当たり前に外に出かけられるように、難病のご家族も当たり前のように外に出かけて行っていいんだって。肩身の狭い思いをして「すみません」とか言わずに、当たり前に過ごしていける。当たり前に過ごしていける日常を実現することが私達にとっての課題ですし、社会が良くなっていくために頑張っていきたいと思います(伊藤洋さん)。
難病の子どもとその家族が、当たり前のように外に出かけられる。そのような日常を実現する上では、イベントとしてだけでなく、もっと日常的にこのようなサポートの場が増えていくことが必要だと感じました。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:恒藤泰輝)