猫に『譲り合いの精神』はあるの? 譲っているように見える5つの場面や行動の意味
多頭飼いをしていると、ときどき片方の猫がもう片方の猫の主張を聞き入れて妥協する、いわゆる「譲っている」というように感じる行動をすることがあります。主張する側と譲る側が固定されていないことが多く、猫にも譲り合いの精神があると感じるかもしれません。果たして、実際はどうなのでしょうか。筆者の経験や猫に関する研究などを参考に、考えてみたいと思います。
猫同士の「譲り合い」が見られそうな場面や行動

筆者が一緒に暮らしていた3匹の猫たちの行動から、譲っているように見える場面や行動を抜き出してみました。猫は、体の大きなオス猫(Big)と体が小さめのオス猫(Middle)、そして1歳年下のメス猫(Small)で、いずれも生まれて間もない頃に別々に保護された猫です。
1.食事時
不在時はドライフードを自由採食させていましたが、朝と夜は、必ず筆者の目の前でウェットフードを与えていました。Bigはいつも早く食べ終わるため、よくMiddleのお皿に割り込みます。するとMiddleはすぐにお皿をBigに開け渡すので、筆者が介入しなければなりませんでした。
しかし、BigがSmallのお皿に割り込むと、年下で一番チビなはずのSmallはBigをパンチでかわし、自分のお皿を死守していました。
一見するとMiddleがBigにフードを譲っているように見えましたが、元々Middleは少食なため、あまりフードに執着していなかったのかもしれません。またBigの方が大きくて力もあるため、争いを避けようとした行動だったのかもしれません。
2.おもちゃでの遊び
猫じゃらしやボールなどで一緒に遊ぶ際、不思議と同じおもちゃに3匹が一斉に飛び掛かるということはありませんでした。猫は短時間、集中して遊ぶことが多いため、1匹が遊び終わると次の子がやってくるという感じの遊び方が多かったです。
1つのおもちゃを譲り合っているようにも見えますが、仲間たちと協力し合って狩りをする習性のない猫には、本来、仲間と同時に同じ獲物を追う必要がないのだとも考えられます。
3.居心地の良い場所選び
猫は居心地の良い場所を見つける天才と言われていますが、Big、Middle、Smallも、それぞれに居心地の良い場所を見つけてくつろいでいました。場所の優先権は「早い者勝ち」のようで、取り合いや譲り合いはあまり見た記憶がありません。
ただし、それぞれの猫たちが特に執着しているお気に入りの場所に関しては少し異なります。猫たちも「ここは○○の場所」とわきまえているようで、空いている隙にその場所を陣取ったとしても、該当する猫が来るとごく自然に場所を譲っているように見えました。
また、3匹が同時に共有する場所も決まっていて、そこに3匹で丸まり、1つの大きなお団子のようになっているのを見て、慌てて暖房を入れることも多かったです。
4.就寝時の寝床
夏は思い思いの場所で寝ていた猫たちですが、冬の寒い期間は、筆者の布団の中に潜り込んできて一緒に寝ていました。布団の中のそれぞれの寝場所が定まるまでは、奪い合いや譲り合いのような行動も見られましたが、固定してからは見られなくなりました。
5.飼い主への甘えや帰宅時の出迎え
同じ布団で寝る時を除くと、筆者に甘えにくるのもそれぞれ時間差がありました。特に面白かったのは、帰宅時の出迎えもバラバラなことが多かったことです。大抵、出迎えは1匹だったので、留守中にくじ引きでもして出迎えの権利を譲り合っているのかと思ったくらいです。
ただし、あまりにも帰宅が遅くなると、3匹が並んで玄関で出迎えてくれて、ウェットフードを出すまでニャーニャーと矢のような催促をされました。
猫に譲り合いの精神はあるのか

我が家の猫たちは、喧嘩をすることもなく仲良く暮らしていましたが、特段「譲り合い」の場面が多かったような印象はありません。ただし、ご紹介したように、フードや場所、飼い主を譲り合っているように見える行動がなかったわけでもありません。
猫の社会性に関する研究に、麻布大学の研究チームが行った「一緒に暮らす猫たちのホルモンと腸内細菌叢の調査」というものがあります。シェルターで暮らしていた猫たちを5匹ずつのグループに分けて同居させ、その前後でホルモンの分泌量や腸内細菌叢を計測し、行動を合わせて解析したというものです。
通常、一部の社会性動物では、オキシトシンと親和行動との関連性が報告されています。しかし、この調査の猫たちでは、オキシトシン値の高さと親和的な行動との間に、他の社会性動物で見られるような関係が確認されませんでした。
このことから、研究チームは、猫には他の動物とは異なる社会関係形成のメカニズムがある可能性を指摘しています。
ただし、この研究では一緒に暮らした期間が2週間と短いため、子猫時代から何年も一緒に過ごしている猫同士や、性別の異なる構成にすると、異なる結果になる可能性もあると述べられています。
このように、猫の社会性に関してはまだ科学的に未解明なことが多いです。一見譲り合っているように見える行動も、私たちが思うような「譲り合い」とは異なり、「無用な争いの回避」や「相手との距離の調整」「資源をめぐる競合の回避」といったような意味合いなのかもしれません。
まとめ

猫の社会性や行動、認知などには、まだわかっていないことがたくさんあります。今回、筆者の実体験や比較的新しい研究を参考に考えてきましたが、猫が「譲っているように見える行動」をしていても、人と同じような感覚で「譲ろう」と考えているとは限りません。
しかし、猫には猫なりの社会性があり、だからこそ私たちとも一緒に暮らすことができています。個々の猫の気持ちに寄り添い、個性を尊重しながら一緒に楽しく暮らしていきましょう。
関連記事
・まったく人に懐かなかった『警戒心の強い保護子猫』…新しい家族に愛され『変化した様子』が75万再生「涙が出た」「幸せな気持ちになった」
・先住猫と仲良くなりたい子猫→何度近づいても拒否されて…思わず応援したくなる光景に反響「ママだと思ってるのかなw」「あたって砕けろw」
・猫が足を噛む6つの理由と対策
・2階にいる猫が1階にいる飼い主と『キャッチボール』…賢すぎる『遊びの様子』に「素晴らしい」「前世は犬だったのかな」「すごい」と反響
・先にベッドに向かって、飼い主を待っていた猫…とんでもなく尊い『就寝前のルーティン』が45万再生「むしろ待ちたい」「愛しすぎるぅぅ」