「台湾に武器を売却すべきではない」習近平氏の外交ブレーンが米中首脳会談前に送る警告 トランプ政権の台湾の“カード化”への不満

9月24日アメリカ・ワシントンで米中首脳会談が行われる。今年5月に北京で開かれた会談以来、約4か月ぶりにトランプ大統領と習近平国家主席が対面する。今回の会談で中国が重視することとは何か?中国政府が「断固反対する」と主張している台湾への武器売却をめぐりどのような議論が交わされるのか?
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中国外務省のアドバイザーを務め対米政策決定に影響力を持つ復旦大学国際問題研究院の呉心伯院長に話を聞いた。
(インタビューは9月15日に実施しました)
外国製人型ロボット輸入禁止のアメリカ「ますます遅れをとる」
――アメリカのトランプ大統領は製造業をアメリカに呼び戻したいと訴えています。中国はトランプ政権の方針をどう見ていますか?
呉心伯 院長
私は実現が難しいと考えています。アメリカの製造業は過去数十年間に大きな変化を遂げており、構造全体が変化しています。その結果、多くの製造拠点が海外、例えばメキシコや中国、東南アジア、インドへと移転しました。これらを全てアメリカに戻すことは不可能です。
アメリカの指導者がなぜ製造業、特に先端製造業を重視するのかは理解できます。しかし、本当に先端製造業を再興したいのであれば他国、特に製造大国・中国との連携を断ち切ることはできません。
――最近では中国の人型ロボットに関心が集まっていますが、アメリカは外国製の新型人型ロボットの輸入を禁止しました。
呉心伯 院長
アメリカの開発はますます遅れる可能性があると考えています。これはEV=電気自動車のケースと少し似ています。バイデン政権は100%の関税を中国製EVに課し、輸入を実質禁止しました。自国での開発を進めようとしたのです。しかし、現在、アメリカは技術・生産能力の面で中国に大きく遅れています。そのため、現在国内では、中国にアメリカでEVの投資・生産をしてもらい、技術を導入すべきだという声も上がっています。こうすることで、自国のEV産業を発展させることができるのだと。
人型ロボットの分野でも状況は同じです。アメリカは中国の技術と生産能力が必要です。そうでなければ技術は遅れをとり、製品価格が高すぎて市場競争力を持たず、長期的にみてますます遅れをとるでしょう。
中国の大手EVメーカー幹部らが同行か“中国の発展示す良い機会に”
――今回の首脳会談では製造業について議論されると考えますか?
呉心伯 院長
議論されることを願っています。トランプ氏は中国の対米投資を歓迎していて、最近も中国のEV関連の投資を歓迎すると述べていました。雇用や税収を生み出し、自国にメリットがあるからです。
アメリカの自動車業界は、議会に影響を及ぼし、中国の投資に反対しています。しかし、私は両国が製造業分野で協力する可能性はあると考えています。重要なのはアメリカの指導者が政治的決意と胆力を持っているかどうかです。
――中国のEVやスマートフォンの大手企業幹部が同行すると報じられています。
呉心伯 院長
5月にトランプ氏が訪中した際は、ビジネス界のリーダーを連れてきました。今回の習氏の訪米で中国企業の経営者たちを同行させるのは自然なことです。
その目的の一つは、アメリカの同業者と協力の機会を模索し、経済交流を拡大することです。
また、この機会を利用してアメリカ市民に対し中国がどの分野で優れた成果をあげ、どれほど先進的であるかを示すことも目的の一つです。多くのアメリカ人は依然として10年前、20年前の中国のイメージを持っていて、多くの分野で中国がすでに自国を凌駕していることを知らない可能性があるからです。これは、アメリカ市民が技術や産業における中国の発展をより深く理解するための良い機会です。
台湾向け武器売却“アメリカは実行すべきではない”
――今回の首脳会談で台湾問題についてどのような議論が行われるのでしょうか?
呉心伯 院長
中国は台湾問題、特にアメリカによる台湾への武器売却問題を重視しています。北京での会談以降、武器売却を行っていませんが、我々は依然としてアメリカの立場に不安を抱いています。習氏はこの問題が重要でデリケートであることを引き続き強調するでしょう。
アメリカ議会には親台湾派がいて、トランプ氏の現在の政策に不満を抱いています。親台湾派は台湾への武器売却を推進し、米台の高官レベルや軍事的な交流などを推進したいと考えています。
従って、習氏は台湾問題が両国関係において重要であることを引き続き強調するだろうと思います。
――トランプ大統領は台湾への武器売却について「有力な交渉材料」との見方を示しています。
呉心伯 院長
トランプ氏はビジネスマンとしての考えを持っていて、その観点から多くの問題は取引の対象となります。トランプ氏は台湾問題についても同じように考えているのでしょう。
しかし、中国にとって台湾問題は核心的利益に関わるものであり、交渉の余地はありません。
とはいえ、もしアメリカが台湾問題において中国の懸念を尊重し、中国の立場に配慮するのであれば、経済・貿易問題などにおけるアメリカの要求について中国がより真剣に検討する助けとなるでしょう。
――台湾問題をめぐりアメリカはどのような対応をとるべきだと考えているのでしょう。
呉心伯 院長
最も重要なことは、台湾統一が避けられないと認識することです。平和的統一は中国大陸、台湾、アメリカ、周辺地域の利益となります。
平和的統一を実現するためにアメリカは台湾に武器を売却すべきではありません。また、台湾を、中国を牽制するための戦略的なカードとして用いるべきではありません。この点を実践できれば両国関係は大きく改善し西太平洋地域の平和と安定も保障されるでしょう。これが最も重要なことです。
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呉心伯 氏
復旦大学国際問題研究院 院長
復旦大学アメリカ研究センター 所長
中国外務省のアドバイザーを務めるなど
中国の対米政策決定に影響力を持つ
聞き手 JNN北京支局 松尾一志