「塾に入るための塾」まで…過熱する韓国の教育競争 名門大でも安心できない「小学生が医学部クラス」を目指す“厳しい就職事情”【Nスタ解説】
学歴社会で知られる韓国では今、高所得層を中心に子どもへの教育投資が過熱しています。
そんな中、小学生で、高校数学を全て終わらせる「医学部進学塾」が人気を集めています。
塾に入るための塾に入る?韓国で過熱する“子どもへの教育投資”
高柳光希キャスター:
小学生の塾の「医学部クラス」が韓国全土で広がりを見せていて、現在は136コースあるということです。(※市民団体「私教育の心配のない世界」2024より)
日本ではあまりなじみがない医学部クラスですが、韓国では相当人気があるということです。
JNNソウル支局長 中道秀宜 記者:
「136コース」という数字は市民団体が調査して判明したもので、「看板を隠して営業する塾」も含めると、実際はもっと多いと言われています。
一時、「小学生への過酷な勉強を規制しよう」という動きもありましたが、親たちの強い反対で見送られました。
また、医学部クラスを持つ名門塾に入るために、小学2~3年生が入塾テストを受けましたが、6割以上が不合格になりました。(※考える雄牛の公式HPより)
塾に入るのも超難関で、「塾に入るための塾に入る」という本末転倒な事態まで起きています。
家庭教師は時給2万円!?私教育費は過去最高3.4兆円に…
高柳キャスター:
韓国では出生児数が年々減少傾向にある一方で、私的な教育にかけるお金は2020年以降、徐々に増えています。
2024年には過去最高の約3.4兆円を記録し、2025年も約3.2兆円と、依然として高い水準を保ったままです。
JNNソウル支局長 中道秀宜 記者:
韓国では、小学生の2人に1人が英語や数学などの塾に通っていて、1日に2~3つを掛け持ちするのが当たり前です。
実際、ソウル支局スタッフの小学3年生の子どもは、毎日英語や数学、テコンドーなどを掛け持ちしていて、「家に帰るのが夜9時すぎ、寝るのは夜11時すぎ」だと話していました。
また、取材したある父親は「我が子だけ遅れるわけにはいかない。どんなに古いアパートでもいいから、有名塾が集まる江南(カンナム)エリアに引っ越したい」と切実な思いを語っていました。
家庭教師の授業料もすごいことになっていて、我々が取材した、3歳児に英語を教える家庭教師の場合、1時間の単価が2万円だそうです。1日7時間まで受けるそうで、仮に1年間教えるとすると年収4000万円ほどになります。
なぜ医学部が人気?名門大でも安心できない“厳しい就職事情”
高柳キャスター:
なぜここまで「医学部」にこだわるのでしょうか。
韓国には「SKY」という言葉がありますが、実は韓国のトップ大学の略称なんです。
S=ソウル大学
K=高麗大学
Y=延世大学
日本でいう東京大学や京都大学などの最難関大学にあたるのですが、「SKY」に入っても、将来が保証されていないという現実があります。
2025年度のSKYの中退者は約2200人。(※韓国教育部の大学情報サイト「大学アリミ」によると)
これは多くが医学部への再受験のためとみられているそうです。
JNNソウル支局長 中道秀宜 記者:
理由としましては、大卒でもサムスンなどの財閥系の大企業に入れる人は一握りです。
中小企業に行くという選択肢もありますが、大企業と中小企業では月収で約2倍、年収で400万以上の圧倒的な差があります。
【賃金労働雇用所得(報酬)結果】(※出典-2024年 国家データ処)
▼大企業
月平均所得:約72万円
年俸換算:約865万円
▼中小企業
月平均所得:約36万円
年俸換算:約433万円
韓国には、「一生懸命勉強して名門大に入っても、大企業に入れなければチキン屋になるしかない」という自虐的な言葉すらあります。
だからこそ、唯一の絶対的ライセンスである「医師(医学部)」に小学生から全振りしているという社会構造があります。
「大学進学より半導体」 韓国で広がる実利主義のサバイバル戦略
高柳キャスター:
「名門大学に入っても大企業に就職できない」「医学部に行くにも血がにじむような努力にお金が必要」ということで、いま韓国の若者たちから脚光を浴びているのが、「半導体専門高校」への進学です。
JNNソウル支局長 中道秀宜 記者:
半導体を専門に学ぶ高校の合同説明会には多くの中学生や保護者が集まっていました。中学生たちは「大学に行けば4年遅れる。サムスンなら1番お金をくれる」と、将来性のある半導体にものすごい高い関心を示していました。
高柳キャスター:
いま韓国では空前の半導体バブルで、大手半導体メーカー「SKハイニックス」では来期のボーナスが7000万円規模と試算されています(来年の従業員1人あたり平均)。※韓国メディアより
こういったところからも、韓国でいかに半導体が注目されているかがわかりますね。
JNNソウル支局長 中道秀宜 記者:
大学に行くくらいなら、高校の3年間で手に職をつけて、大企業(サムスンなど)に潜り込むという、まさに実利主義のサバイバル戦略がいま、韓国で現れ始めています。
井上貴博キャスター:
実際に韓国で暮らしていて、今の韓国の現状をどう感じていますか?
JNNソウル支局長 中道秀宜 記者:
最終的には良い生活を送るため、良い会社に入るためにこれほどまで勉強しても、大手企業に入れる人たちはほんの一握りなので、努力が報われないという苦しさがあり、今の仕事を休んだり、やる気が出ないことから就職活動自体をやめてしまう人がたくさんいて、これも韓国では社会問題になっています。
井上キャスター:
何が国のためなのかと考えてしまいますね。
会社経営者・投資家 池澤摩耶さん:
中学生で「半導体」というカテゴリーに決めるのは良いけれども、本当にそれがやりたいのか。30歳、40歳になったときに、そのキャリアで幸せなのかというのは親が考えてあげないといけないですからね。
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<プロフィール>
中道秀宜
JNNソウル支局長
大統領選挙や過酷な競争社会など取材
池澤摩耶さん
元外資系投資銀行のトレーダー
2児の母で会社経営者・投資家