言葉が違っても、助け合える。関西外国語大学で学生と留学生が学んだ「もしも」への備え
もし突然、火災や地震が起きたとき、そばにいる人と同じ言葉が通じなかったら——。安全な場所へ避難するという当たり前の行動も、多くの国や地域から人が集まる場所では、普段とは少し違った備えが必要なのかもしれません。
大阪府枚方市にある関西外国語大学では、9月の防災月間に合わせ、学生や留学生、職員が参加する防災訓練が行われました。避難や初期消火、心肺蘇生法を学ぶだけでなく、留学生を支えるRA(レジデントアシスタント)の学生たちが、言葉の違いも意識しながら避難誘導に取り組んだことも今回の訓練の特徴です。
世界各地から学生が集まり、日々ともに学び、生活するキャンパスだからこそ考えておきたい「もしも」のときのこと。言葉や文化の違いを越えて互いに支え合うために、関西外国語大学で行われた防災への取り組みを紹介します。
400人超が参加。「結-YUI-」で確かめた、もしものときの動き

9月5日、御殿山キャンパス・グローバルタウンにある「GLOBAL COMMONS 結-YUI-」では、400人を超える留学生や学生、職員が参加し、避難・誘導訓練が行われました。「結-YUI-」は、関西外大の学生と留学生が共同生活を送る国際学生寮。日本に来て間もない留学生や、留学生の生活をサポートする新任のRA(レジデントアシスタント)に向けて、年に2回こうした訓練を実施しています。

この日は、「結-YUI-」の2階から火災が発生したという想定で訓練がスタート。警報が鳴り、避難を促す放送が館内に流れると、RAの学生たちが留学生を誘導しながら建物の外へ退避し、キャンパス内の芝生広場へと移動しました。多くの学生がともに暮らす場所だからこそ、自分自身が避難するだけでなく、周囲に声をかけながら安全な場所へ導くことも大切になります。
避難後には点呼を行い、防災設備会社の担当者から訓練についての講評もありました。火災が起きた際には煙を避けるために体を低くすること、また地震の場合には建物の耐震性などによって屋内にとどまる方が安全なケースもあることなど、災害の種類や状況に応じた行動についてアドバイスが伝えられました。
災害は、いつ起こるかを選ぶことはできません。だからこそ、普段から同じ場所で学び、暮らしている人たちと一緒に「そのとき、どう動くのか」を確かめておく。400人を超える参加者による今回の訓練は、そんな日頃の備えを見直す機会にもなったのではないでしょうか。
言葉の壁を越えて命を守る。RAが学んだ「もしも」への備え

避難訓練を終えた後も、「結-YUI-」での学びは続きました。留学生の生活を日頃から支えているRAの学生たちを対象に、心肺蘇生法の講習やAED(自動体外式除細動器)の操作方法、訓練用の水消火器を使った初期消火の演習が行われました。
普段の生活では、留学生にとって身近な相談相手でもあるRA。しかし、災害が起きれば、その役割はいつもとは少し変わります。今回の訓練では、自分自身が避難するだけでなく、留学生を安全な場所へ誘導する役割も担いました。言葉や文化、災害に対する知識がそれぞれ異なるからこそ、実際に体を動かしながら対応を学んでおくことには大きな意味がありそうです。

9月12日には、主に中国出身の学生が暮らす「第4国際交流セミナーハウス」でも、避難・誘導と初期消火の訓練が実施されました。参加した英語国際学部2年のRA学生は、今回学んだ手順を忘れず、万が一の際には「中国語と日本語でしっかりと避難誘導ができるようにしておきたい」と話しています。
同じ場所で暮らしていても、生まれ育った国や話す言葉はさまざまです。それでも、いざというときに「誰かを助けたい」という思いに国境はありません。日常の交流だけでなく、もしものときにも支え合えるように準備しておくこと。今回の訓練からは、国際学生寮における防災の大切さとともに、RAの学生たちが担う役割の大きさも伝わってきます。
寮だけではない。キャンパス全体で高める防災意識

留学生が暮らす寮で行われた訓練に続き、9月26日には中宮キャンパスでも火災を想定した自主消防訓練が行われました。参加したのは学生と職員あわせて107人。避難の手順を確認したほか、訓練用の水消火器を使った初期消火や、簡易器具を用いた心肺蘇生法についても学びました。
「結-YUI-」や第4国際交流セミナーハウスでは、留学生との共同生活という環境を踏まえた避難・誘導が大きなテーマとなっていました。一方、中宮キャンパスでの訓練には学生と職員が参加し、普段多くの人が行き交う大学という場所で、火災が発生した際にどのように行動するのかを改めて確認しています。
避難経路を知っていること、消火器を扱えること、そして目の前で誰かが倒れたときに心肺蘇生を行えること。どれも説明を聞くだけでなく、実際に体験してみることで初めて気づくことがあるはずです。災害が起きてから初めて考えるのではなく、何も起きていない日常の中で一度経験しておくことが、いざというときの行動につながっていきます。
9月5日の「結-YUI-」、12日の第4国際交流セミナーハウス、そして26日の中宮キャンパス。場所や参加者はそれぞれ異なりますが、3回の訓練に共通しているのは、災害を「誰かが対応してくれるもの」にしないことです。一人ひとりが自分にできることを知り、必要なときには周囲とも助け合えるようにする。9月の防災月間を通じて、関西外国語大学ではキャンパス全体で「もしも」への備えを確かめました。
世界から学生が集まる関西外大。「ともに学ぶ」の先にあるもの

今回の防災訓練を見ていくと、なぜ関西外国語大学が「言葉の違い」を意識した備えに取り組んでいるのか、その背景も見えてきます。同大学は、世界55カ国・地域の432大学に広がる海外ネットワークを持ち、年間約1,300人の学生を海外へ送り出しています。一方、大阪府枚方市にある2つのキャンパスでは、年間約1,100人の留学生を受け入れています。
国や地域の異なる学生が行き交う環境では、国際交流は特別なイベントだけで生まれるものではありません。その象徴ともいえるのが、外大生と留学生が「学・食・住」をともにする「GLOBAL COMMONS 結-YUI-」です。同じ場所で生活し、日々顔を合わせながら過ごすことで、文化や習慣の違いに触れる機会も自然と増えていきます。
関西外国語大学では、語学を学ぶだけにとどまらず、文化や政治、経済など、それぞれの興味や関心に応じた専門分野を学べる教育環境も整えています。「語学の、その先へ。」という言葉が示すように、身につけた言葉を使って人や社会とどう関わっていくのか。その視点は、日々の学びだけでなく、今回の防災訓練にもつながっているように感じられます。
異なる言葉や文化を持つ人たちがともに学び、暮らすということは、楽しい時間だけを共有することではありません。もしものときにも声を掛け合い、互いの安全を考えられることまで含めて、「ともに過ごす」ということなのかもしれません。今回の防災訓練は、国際交流が日常にある関西外大だからこそ大切にしたい、もうひとつのつながりを感じさせる取り組みとなりました。
言葉が違っても、「助け合う」はきっと同じ
火災が起きたら、どこへ逃げればいいのか。消火器はどう使うのか。目の前で誰かが倒れたら、何ができるのか。知識として知っていることと、実際に行動できることは、必ずしも同じではありません。今回の訓練では、学生や留学生、職員が実際に避難や初期消火、心肺蘇生法を体験しながら、それぞれの「もしも」への備えを確かめました。
大切なのは、こうした経験を「訓練した日」だけのものにしないことなのかもしれません。災害は起こらないことが一番です。それでも、もしもの瞬間が訪れたとき、今回身につけた知識や経験、そして普段から築いている学生同士のつながりが、誰かを守る力になるかもしれません。
言葉が違っても、助け合うことはできる。今回の防災訓練は、関西外大で日々育まれている学生同士のつながりが、「もしも」のときにも力になることを感じさせてくれる取り組みではないでしょうか。
関西外国語大学 概要

関西外国語大学は、大阪府枚方市にキャンパスを構える大学です。世界55カ国・地域の432大学に広がる海外ネットワークを活かし、年間約1,300人の学生を海外へ送り出す一方、年間約1,100人の留学生を受け入れています。
語学を基盤に文化や政治、経済など幅広い専門分野を学べる教育環境を整え、国際社会で活躍できる人材の育成に取り組んでいます。