波乱のスタート…簗大臣めぐり国会運営に早くも支障 高市総理「続投」判断に党内からも厳しい声 野党警戒の“国会改革”は何をもたらすか【edge23】

今週スタートした臨時国会は、早くも波乱含みだ。直前に発覚した築和生 農水大臣の「予算カット」発言や“シャトルバス”問題は、野党の委員会開催拒否を招く事態に。一方、国会運営のあり方を変えようとする「国会改革」の動きも加速している。
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高市政権が直面する国会の攻防と、その先に描く国会運営の姿を、TBS政治部の自民党担当・佐藤浩太郎記者の取材とともに読み解く。
「謝るのが遅すぎた」―“予算カット発言”で早くも躓く臨時国会
12月12日までの会期で始まった秋の臨時国会。高市総理は5日の所信表明演説で、経済を最優先課題に掲げ、「責任ある積極財政元年」だと強調した。しかし、目下の課題として浮上したのは、経済政策論争ではなく築農水大臣をめぐる問題だった。
発端となったのは今年5月、栃木県大田原市での自民党支部の会合で、自民党を支援しなかった自治体について「予算をカットした」などとする発言だ。これは自民党を支持しなかった有権者や自治体への“脅し”とも捉えられかねない。
発言の撤回と謝罪が遅れたことも事態を大きくしたと佐藤記者は振り返る。また、取材に対して関係者は、「侍」とあだ名される簗大臣の「一本気」な性格が関係するのではないか、と話していたと明かす。
さらに、2年前と今年の衆院選公示日の出陣式にあたり、シャトルバスで支援者を無料送迎していた問題も浮上。これが買収にあたる公職選挙法違反ではないかとの指摘も上がっている。
8日には代表質問での国民民主党の玉木代表らの追及に加え、参議院では、立憲民主党の斎藤嘉隆国対委員長が「早期に大臣という職を退かれることを強く求めたい」と述べ、築大臣が辞任しなければ農水委員会の審議に応じないと通告するなど、さっそく国会運営に影響をきたしている。
「とにかく働いて仕事で返せ」高市総理 続投判断の裏に“タイムリミット”か
今回の人事は、高市総理が党内のアンケートを丹念に読み込んで決めたとされ、こうした事態に、大臣を任命した高市総理の責任を問う声も上がる。
自民党のベテラン議員からは「今回の件で高市さんの人選に疑問が残る結果になってしまった。見る目がない」という辛辣な声も漏れる。
野党が“審議拒否”のカードを切る中、かつて応援演説で「私の大事なやなちゃん」と呼びかけた高市総理の判断が問われる中で、高市総理は8日の代表質問で、「とにかく働いて仕事で返せ」と述べ、築大臣を続投させる考えを明確にした。
この判断の背景には、築大臣への追及に「タイムリミット」があるためだと佐藤記者はみている。
実は今回の臨時国会では農水関連の法案提出が予定されていないため、築大臣が農水大臣として国会で答弁に立つ機会は、他の大臣と比べて多くない。
主な舞台は代表質問と、今後予定されている衆参両院の予算委員会。
農水委員会での所信表明はあるものの、野党から追及される機会は減ることになる。この予算委員会を乗り切れるかが、一つの分水嶺になると佐藤記者は指摘する。
“タイパ重視”?村井国対委員長が旗振り「国会改革」が具体化
簗大臣をめぐる波紋とともに、まさに分水嶺を迎えつつあるのが、国会そのものの在り方だ。従来の国会運営が大きく変わる可能性をはらむ動きが進行している。
その旗振り役が、先日の人事で国会対策委員長に抜擢された村井英樹氏だ。国会改革に意欲をみせる村井氏の登場は、永田町に期待と警戒の両方をもたらしている。
佐藤記者の取材によると、その動きはすでに具体化し始めているという。
一つは、与野党による国会改革の協議が週に1回というハイペースで始まったことだ。AIの活用やペーパーレス化といったデジタル改革を皮切りに、多岐にわたる議論が進められることが期待される。
もう一つは、7日に与野党間で合意された予算委員会の「質問通告」をめぐる新たな取り決めだ。「1行通告」や「問い合わせ不可」を禁止し、質問の趣旨を明確にすることで、答弁を作成する官僚の負担を軽減し、審議の中身を充実させようという狙いがある。
これまでは“職人芸”とされ、野党との交渉においてはときには「非効率」ともいわれる協議もしてきた「国対」。党内の一部で村井氏に期待されているのは、合理的で透明性の高い「新しい国対」への転換だ。
佐藤記者は、これまでの国対も知る村井氏であれば「効率と泥臭い非効率のバランスを取れるのではないか」と話す。
総理不在の国会に? AI・ペーパーレスの先に見据える改革に野党警戒
村井氏は自身のYouTubeチャンネルで「日本の総理大臣は忙しすぎる」「国会審議が大きな負荷になっている」と述べ、総理が外交や国の方針決定により多くの時間を使えるよう、国会への出席を減らすべきだとの考えを示している。
佐藤記者によると、この考えは、高市総理が過去に示した改革案とも通ずるものがあるという。
高市氏は、衆議院議院運営委員長を務めていた2018年、一般質疑の機会を減らすことなどを盛り込んだ「改革の私案」を提示。野党から「議論封じだ」と猛反発を受け、撤回に追い込まれた経緯がある。
だからこそ野党は、村井氏が進める国会改革は結果的に総理を国会の場から遠ざけ、議論の機会を奪うのではないかと警戒を強めているのだ。
AI活用やデジタル化といった誰もが賛成しやすい改革から着手し、その先に、与野党で意見が真っ向から対立するテーマに踏み込むのではないかと、国対関係者は見ている。そのときに、村井氏率いる“新しい国対”の真価が問われることになると佐藤記者は話す。
「効率化」の名の下に進められる改革は何をもたらすのか。臨時国会の論戦の裏で、日本の国会のあり方が岐路に立たされている。