高市内閣支持率63%“横ばい”の裏で…外交支持6割を打ち消す「簗大臣発言」“擁護”が政権の打撃に?歴代政権にみる“致命傷”の歴史【10月JNN世論調査解説】

最新のJNNの世論調査で高市内閣の支持率が先月の調査から0.5ポイント上昇して63.0%となった。微増にとどまり実質的には“横ばい”と言える。
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9月から10月の1か月間、高市総理はアメリカ・ニューヨークを訪問し国連総会での演説やトランプ大統領との首脳会談を行った。また内閣改造、自民党役員人事を行い第2次高市改造内閣を発足させた。
一般的に外交や人事は支持率を押し上げるきっかけだと言われる。果たしてそれは本当か?今回は支持率の大幅な上昇には繋がらなかった。その原因を検証する。
高市訪米の成果については「6割」支持、人事の評価は「不支持が支持を上回る」結果に
高市総理は現地時間9月22日、国連総会で演説し「法の支配」に基づく自由で開かれた秩序の維持を訴えたほか、総理が強くこだわってきた国連憲章からの「旧敵国条項」の早急な削除などを訴えた。
さらに米中会談の直前というタイミングでトランプ大統領との会談を行い、アメリカに対して一定の牽制を行った形となったが、ICC(国際刑事裁判所)赤根所長の制裁をめぐっては、制裁撤回を直接求めたかどうかについては明らかになっていない。
こうした今回の一連の高市総理の外遊について6割が「評価する」と答えている。
またこれに先立つ9月16日には自民党役員人事、翌17日には内閣改造をおこなった。
この記事を執筆している10月初旬は、簗農水大臣の「予算カット」発言で、臨時国会冒頭から野党からの追及が相次いでいるが、今回の調査は10月3日、4日で、簗農水大臣の発言が明るみに出て間もない調査だったため、今回の内閣改造・党役員人事について判断が分かれる結果となった。
今回の人事について「評価する」は31%、「評価しない」は40%で、「評価しない」が「評価する」を上回る結果となった一方で、「答えない・わからない」と回答した人も30%いた。“評価できない”人が3割にのぼったことは過去のJNN世論調査と比較しても珍しい傾向で、今回の人事を評価するには時間が足りないタイミングの調査だったのだと推測する。
一方で今回、政治資金収支報告書で不記載額のあった2人の自民党議員が入閣した。23年末、いわゆる派閥の裏金発覚後、初めてのことだ。
高市総理はこの問題について24年、26年の2度の衆議院選挙などを経験し、有権者の審判や地元での説明を経て「みそぎは済んだ」という立場だが、実際“不記載議員”の入閣については「問題がある」と答えた人は58%、自民党支持層に限っても49%が「問題がある」と答えていて、「問題がない」と回答した人を上回っている。
裏金問題については関与のあった個々の議員が国会、地元で説明し、選挙を経ているものの「具体的にだれが、いつ、どのように決めて、お金をどう使ったのか」という肝心な部分が解明されず今に至っている。
人事が奏功して支持率上昇したのは過去25年・20例のうち「5例のみ」
冒頭、一般的に「外交と人事は支持率上昇の要因となる」と述べたが果たしてそうなのか、検証してみたい。
まず外交が支持率上昇要因になる理由は、単純にメディアへの露出が増えることだ。首脳会談など表に見える部分では不規則発言・行動が起こりづらく、外遊の詳細な内容はすぐにわからないことが多い。また連休など国会日程に影響せず、政治イベントが少ない時期に外遊が組まれることが多いため、総理の露出が相対的に増える。こういった背景もあり、外遊は評価されやすい傾向がある。
しかし、人事については評価が分かれることが少なくない。
支持率が低迷している内閣にとっては、抜擢人事をするなど人事を起爆剤として、支持率を上昇を狙う場合もある。ただそれが功を奏すパターンと、そうでないパターンがある。
歴代内閣の改造前後の支持率を比較してみて、人事が内閣支持率上昇に貢献しているのかどうか。遡るときりがないため、ここでは2001年以降の25年間で検証をする。
この25年間で内閣改造が行われたのは計20回。統計上、JNNの世論調査のようにサンプルが1000以上の場合、「プラスマイナス3ポイント」は誤差の範囲とされている。それを踏まえれば、内閣改造の前後の月で支持率が「上昇」したのは「7例」、3ポイント以内の「横ばい」は今回の高市改造内閣をあわせて「7例」、一方「下落」した例は「6例」だった。
ただ支持率上昇、下落の要因が人事だったかどうかはもう少し詳細の分析が必要だ。支持率が「上昇」した「7例」のうち、例えば2002年の第一次小泉改造内閣前後の支持率の上昇は人事と言うより、北朝鮮への電撃訪問が主たる要因だった。また2018年の第4次安倍改造内閣での組閣人事前後の支持率上昇は、安倍氏が総裁選3選した余波であり、このとき過去最多12人が初入閣したが、当時「在庫一掃内閣」などと揶揄され、人事自体はマイナスの評価が多数を占めていた。
こうした外部の要因を排除すれば、人事が評価をされて支持率が上昇したケースは過去25年、20例のJNN世論調査で分析すれば、2005年第3次小泉改造内閣、2007年第一次安倍改造内閣、2008年福田改造内閣、2011年菅再改造内閣、2014年第2次安倍改造内閣の「5例」ではないかと考えられる。
最も上げ幅が大きかったのは2007年の第1次安倍改造内閣で、前月比15.3%上昇した。このときは「消えた年金問題」で参院選で歴史的な大敗を喫した反動というのもあったが、第1次安倍内閣発足当初は「お友達内閣」と批判されたがこの人事でベテランを多く起用し、「政権運営の安定感」をアピールすることに成功したと見られる。
しかしせっかく上昇した支持率だったが、このJNN世論調査のわずか数日後、安倍総理は健康状態の悪化などを理由に退陣する。
人事が“失敗”して支持率下落した例は20例中「1例」か
逆に人事の前後で支持率が「下落」した「6例」のうち、純粋に人事の“失敗”とみることができるのは何例か。
例えば、前の月から5ポイント下落した民主党政権下の2010年菅改造内閣では、尖閣諸島近海の日本の領海で操業中の中国漁船と日本の巡視船が衝突した事件の対応、2012年野田改造内閣では消費税の引き上げを表明したことが下落の主要因で、人事による支持率回復も見込めなかった。
そのほかにも5ポイント前後下落した過去の内閣の例は、人事による評価以上に、支持率を押し下げる別の外部要因があることがほとんどである。
その中でも、純粋に人事の“失敗”による支持率の下落と見て取れるのは、9.4ポイント減と過去最も「下げ幅」が大きかった22年8月の第2次岸田改造内閣だろう。改造人事後、閣僚のうち7人に旧統一教会や関連団体との接点・関係があったことが発覚し、発足直後から激しい批判を受けた。その後、実際この年の10月以降、3閣僚の「辞任ドミノ」が始まることとなった。
まだこの時点では判定できないが、もしかすると今回の高市内閣の人事はこれに近い可能性がある。今回の調査結果に「簗大臣の発言直後なのに支持率微増は驚いた」など自民党内から聞かれることが多かった。外遊の評価は6割だったが、支持率が横ばいだったのは人事による起爆効果はなかったのではないか。
スパッと切った安倍内閣、守り続けて失敗した岸田内閣、高市内閣も…
内閣改造は、支持率が低迷している内閣にとっては心機一転をアピールでき、目玉人事で話題を作ることで、支持率上昇を図る狙いもある。
ただ高市内閣は総理就任後11か月となっても依然6割を越える高い支持率で推移していて、人事で支持率上昇を狙うというより、これまでの派閥推薦から脱した高市総理なりの適材適所の人事をおこなったものと見られている。誰しも驚くような抜擢人事というよりその分野に詳しい役人出身者を多く登用するなど堅実な人事と言える。
そうした中で発覚した簗農水大臣の「自民党を支持しなかった自治体の道路予算をカットした」という発言だ。
10月8日、所信表明演説に対する各党の代表質問で、高市総理は「発言は不適切だと考え厳しく注意をした」と述べる一方、「しっかりと説明をした上で襟を正して職責を全うしてほしい」と簗大臣を続投させる考えを明言した。簗大臣については衆院選の出陣式の際、バスで参加者を無料で送迎した“新たな問題”も浮上している。
第2次安倍内閣当時、官邸にいた議員や関係者はこぞって「安倍総理なら即更迭だ」と口を揃える。
思い出されるのは2017年、当時二階派に所属していた今村雅弘復興大臣が二階派の政治資金パーティーの講演の中で東日本大震災について「(首都圏ではなく)東北だったから良かった」と発言し、その数時間後に更迭された。当時二階派担当だった私はその一部始終を会場で目の当たりにした。安倍総理による電光石火の“更迭劇”だった。
一方、私が官邸キャップとして取材した岸田内閣はぎりぎりまで守り抜く内閣だった。
22年10月、山際大志郎経済再生担当大臣が旧統一教会との接点が相次いで発覚した際や、翌11月、寺田稔総務大臣が自身の政治団体をめぐる「政治とカネ」の問題が発覚したときなど、岸田総理は「説明責任を果たしてもらう」として起用し続けるものの、野党からの追及に耐えきれず結果辞任に至った。
旧統一教会問題、派閥の裏金問題はその後、岸田政権の致命傷となっていく。
現在の高市内閣はこのときに似ている。
今年3月、松本文科大臣の女性スキャンダルの際も「反省した上で一生懸命に職責を果たしてほしい」として守り抜き、今回の簗農水大臣も現状更迭する考えがないことを繰り返し述べている。
まもなく総理就任1年。高い支持率で推移する高市内閣だが、この判断が政権の分水嶺になるのかどうか、正念場を迎えている。
TBS政治部 世論調査担当デスク室井祐作
【10月JNN世論調査の結果概要】
●高市内閣の支持率は63.0%(先月より0.5ポイント上昇)。不支持率は33.9%(先月より1.0ポイント下落)。
●政党支持率は、
自民 34.7%(2.5↑)
維新 3.2%(1.0↑)
国民 2.9%(0.3↑)
立憲 2.5%(0.2↓)
参政 3.4%(1.0↓)
公明 2.8%(1.6↑)
民主 0.4%(-)
みらい0.6%(1.3↓)
共産 2.5%(0.5↑)
いのち0.3%(0.0→)
保守 0.8%(0.5↓)
社民 0.3%(0.2↓)
その他0.6%(0.0→)
支持なし41.4%(1.7↓)
●今回の内閣改造、自民党役員人事について「評価する」31%、「評価しない」40%
●政治資金収支報告書に不記載があった2人の自民党議員を大臣に起用したことについて「問題があると思う」58%、「問題があると思わない」29%
●高市総理の国連総会の演説や日米首脳会談など一連の外交について「評価する」60%、「評価しない」26%
●高市総理が表明した食料品の消費税を来年4月から2年間1%に引き下げる方針について
「賛成」54%(先月より3ポイント上昇)、「反対」36%(先月より6ポイント下落)
●食料品消費税1%は物価高対策として「非常に効果がある」4%(先月より3ポイント下落)、「ある程度効果がある」39%(先月より3ポイント上昇)、「あまり効果はない」42%(先月と変わらず)、「全く効果はない」13%(先月と変わらず)
●高市総理や総理官邸のSNSによる情報発信について「大いに評価する」20%、「ある程度評価する」35%、「あまり評価しない」29%、「全く評価しない」12%
●臨時国会で重点的に取り組んでほしい政策について
1位「年金や医療などの社会保障対策」20%
2位「物価高対策」19%
3位「賃上げなどの景気対策」16%
4位「外国人政策」10%
5位「教育や子育て政策」9%
6位「外交・安全保障」7%
7位「消費税率の引き下げ」6%
8位「衆議院の定数削減」5%
9位「憲法改正」2%
「それ以外」3%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。10月3日(土)、4日(日)に全国18歳以上の男女2757人〔固定735人、携帯2022人〕に調査を行い、そのうち37.1%にあたる1022人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話434人、携帯588人でした。インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。今後とも世論調査にご理解とご協力をお願いします。