残りの任期2年はレームダックに?トランプ2.0 WATCHING~逆風の中間選挙とその後の展望~【調査情報デジタル】

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2026-10-17 09:00
残りの任期2年はレームダックに?トランプ2.0 WATCHING~逆風の中間選挙とその後の展望~【調査情報デジタル】

アメリカ大統領にとって任期のほぼ半分の時点で行われる中間選挙。歴代大統領の多くがこの選挙で試練に直面したように、トランプ大統領もまた逆風の中でその時を迎えようとしている。与党・共和党が敗北し、トランプ氏は残りの2年をレームダック(死に体)の状態で過ごすことになるのだろうか。トランプ第二次政権の定点観測6回目をお届けする。執筆はTBSテレビ記者でJNNワシントン支局の涌井文晶支局長。

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アメリカの中間選挙がおよそ2週間後、11月3日(火)に迫った。中間選挙は政権にとっての「中間テスト」「信任投票」などと言われるが、トランプ政権の支持率が就任後最低の水準に落ち込む中、与党・共和党にとって厳しい結果になるとの見通しが日に日に強まっている。

今回は中間選挙の見通しを概観しつつ、選挙後、トランプ政権がどのような行動を取るとみられるのか、展望していきたい。

焦点は共和党が上下両院で過半数を維持できるか

アメリカでは2年に1回(西暦で偶数の年)、11月に連邦レベルで大きな選挙が行われるが、「中間選挙」は4年ごとの大統領選挙の合間に行われる連邦議会議員選挙のことを指す。

下院は435議席がすべて2年ごとに改選されるため、すべての議席をめぐって選挙が行われる。

一方、任期6年の上院は2年ごとに定数100の3分の1ずつを改選することが憲法で定められている。今回は、上院議員だったバンス副大統領とルビオ国務長官の補欠選挙も行われることから、33+2=35議席が改選対象だ。 

また、同じタイミングで36の州で知事選挙が行われるほか、各州議会の選挙も行われる。

現在、アメリカは大統領職に加え、上下両院も与党・共和党(赤が党のシンボルカラー)が多数を占める「トリプルレッド」の状況で、共和党が上下両院の過半数を維持できるかが選挙の最大の焦点となる。

ただ、中間選挙は歴史的に与党に不利な結果が出ることが多い。大統領選挙に比べて有権者の関心が低く、投票所に足を運ぶのは時の政権に不満を持つ人が多くなりやすいことが原因とされる。

実際、第二次大戦後に20回行われた中間選挙の中で、与党が下院で議席を増やしたのは2回しかない。ITバブルのもと空前の好景気だった1998年のクリントン政権下の民主党、そして2001年同時多発テロの翌年、国民の団結ムードを追い風にした2002年のブッシュ政権下の共和党だけが例外で、それ以外はすべて与党が議席を減らす結果になっている。

第一次トランプ政権時の2018年には共和党が下院で42議席を減らし、その後、下院がトランプ氏を2度にわたって弾劾訴追することにつながった。

共和、民主、どちらが優勢?~直前の情勢~

選挙の勝敗の分かれ目となる数字も確認しておこう。

まず、下院は435議席の過半数=218議席をめぐる争いだ。共和・民主のいずれが218議席以上を押さえるかの争いとなる。

一方、上院は現在、共和党が53議席、民主党が47議席を占める。民主党が過半を取り戻すには、改選35議席の争いの中で、現在より4議席以上、議席数を伸ばす必要がある。

こうした数字を踏まえたうえで、現時点(10月12日)の情勢はどうなっているのか。選挙情勢調査に定評のある「クック・ポリティカル・レポート」の分析を見てみよう。

それによると、下院のうち、民主党は213、共和党は201の選挙区で優勢に選挙を進めている。民主・共和のどちらに転ぶか分からない「接戦州」は21だが、最終的には民主党が少なくとも224議席を押さえ、多数派を取り戻す可能性が高いとの見方を示している。

一方、上院は改選35州のうち、13州で民主党が優勢、15州で共和党が優勢、7州が接戦州と分類されている。ただ、接戦州での選挙も民主党側に勢いがあり、最終的に民主党は2~6議席を伸ばすのではないか、と分析している。

民主党は4議席伸ばせば過半数に達するので、「上院でも過半数確保が視野に入った」との見方だ。

他の各種調査も似た傾向で、「下院は民主党が多数派を取り戻す可能性が高い。議席差がどこまで広がるかが注目」「上院でも民主党が議席を伸ばす。多数派を取り戻せるかはなお予断を許さない」というあたりに落ち着いている。 

トランプ政権不人気でも「ブルーウェーブ(民主党への追い風)」は起こらない?

ここまで細かく数字を挙げてきたが、要するに、現時点での選挙予測の大まかな一致点は、「トランプ政権率いる共和党は負ける、だが民主党が大勝することもない」だ。二大政党のどちらとも熱気を欠くというのが現状なのだ。

トランプ政権の支持率は第二次政権の発足以来、一貫して落ち込んでいる。発足当初は平均50%ほどだったが、最近は40%を割っている。特に今年2月のイラン攻撃はガソリンをはじめとする物価高騰を招き、支持率低下に拍車をかけた。

最新の世論調査(AP-NORC 10月1日公表)では、61%が「トランプ氏の大統領就任前より経済状況が悪くなった」と回答。71%が「トランプ氏のイランへの対応を支持しない」とする極めて厳しい評価となった。

2024年にトランプ氏に投票した人々の中でも特にヒスパニック、若年層などで共和党支持が減少している。これが「下院で民主党優勢」「上院も民主党が議席を伸ばす」との予測の背景にある。

一方で、「共和党への逆風」はそのまま「民主党への追い風」にはならないとみられている。

まず、アメリカの有権者は政治的に大きく分断していて、「共和党への投票をやめて、民主党に投票する」という行動をとる可能性がある層が限られている。

また、民主党は「反トランプ」以外の明確なメッセージを欠いていて、自分たちのビジョンを明快な対案として示せていない。党内では主流派と民主社会主義路線が主導権争いを演じていて、ハリス副大統領が2024年に大統領選で敗れて以降、明確なリーダーも現れていない。

こうした中で民主党は傷ついたイメージを払拭できておらず、世論調査(5月・ピューリサーチ)では、「好意的ではない」との回答が59%にのぼり、「好意的」との回答は39%にとどまった。

民主党はトランプ批判の受け皿になりきれていない。これが、選挙予測での「下院で民主党が過半数を占めても、議席差は大きくならないのではないか」「上院では民主党が過半数を押さえられるか分からない」との留保につながっている。

ただ、10月に入って以降も選挙情勢調査は一貫して民主党に有利な形での結果が続いている。

「クック・ポリティカル・レポート」は、これまでの94年間、共和党が上院議員選で勝ち続けてきた中西部のカンザス州について、10月上旬に「共和党やや優勢」から「接戦州」との予測に変更した。

共和党の牙城にすら揺らぎが見え始めた状況で、共和党系のアナリストからも「想像以上に地滑り的な変化が起こるかもしれない」という声が漏れ始めている。

トランプ氏が遊説で必ず触れる2つのメッセージ

強まる逆風に、トランプ大統領はどう対応しようとしているのか。

トランプ氏は今年、ガソリン価格の上昇につながるイランでの戦闘にこだわり続け、夏までは「本当に中間選挙に勝つ気があるのか」といぶかる声も多く聞かれた。しかし、9月に中間選挙前としては初となる共和党大会をテキサスで開催。10月に入ってからは各地での応援演説を開始し、かなり遅ればせながらではあるが、中間選挙に本腰を入れている。 

支持者を前にした演説で、トランプ氏が必ず触れる要素が2点ある。

まず、トランプ氏は「私が投票用紙に載っていると思って、共和党に投票してくれ」と訴える。中間選挙ではトランプ氏は候補者ではないことから、トランプ支持者の中には投票に行かない人が少なくないとされる。そこで自分自身を前面に押し出すことで、トランプ支持者に確実に投票所に足を運んでもらい、共和党の票を上積みしようという戦略だ。

そして、演説でのもうひとつの定番は、民主党内で「急進左派」と呼ばれる社会民主主義系の候補者や議員らについて、「共産主義者だ」「アメリカを共産主義にしようとしていて、危険だ」と危機感を煽ることだ。

いまなおアメリカ国内で嫌悪感情が強い「共産主義」というレッテルを貼ることで、「共和党に投票しないにせよ、民主党に投票すると大変なことになるぞ」というイメージを醸成し、民主党側の勢いを削ぐ狙いだ。

トランプ氏は10月に入ってからは週に3か所程度のペースで地方での選挙集会を開いていて、毎回、この2つのメッセージを強調している。

一方、政策面で目立っているのが、有権者に直接現金を給付するなりふり構わないバラマキ政策だ。

まず、9月の共和党大会の演説の中で突如発表したのが、成人1人あたり5000ドル=約80万円の「トランプ配当金」だ。

ただ、給付の実現に「中間選挙で共和党が上下両院で多数派を維持した場合に限る」と条件をつけた。いわば5000ドルを人参として目の前にぶら下げて共和党への投票を呼びかけるもので、税金を原資にした露骨な票の買収だと批判を受けた。

また、アメリカの成人全員=約2億4000万人に配布するとなれば日本円で200兆円近い規模の財源が必要になるが、共和党内にも財政悪化への慎重論があり、議会での同意を得られる見通しは立っていない。

実現性が極めて不透明な「空手形」とも言えるが、トランプ氏は意に介する様子はなく、集会などで「5000ドルを受け取りたければ共和党に投票を」と、呼びかけを続けている。

またこれにとどまらず、10月に入ってからも2000万人超の高齢者に1人当たり90ドルの現金を給付すると表明した。高齢者向けの公的医療保険「メディケア」の加入者の一部を対象にしたもので、名目は医療費負担の軽減だ。ただ、支給時期に定めた10月上旬に行う必然性は薄いことから、選挙直前に有権者にアピールするための政策であることは明らかだ。

ただ、すでに選挙情勢の見通しで示した通り、一連のトランプ氏が打つ手は共和党の窮状を好転させるには至っていない。

特に、「トランプ氏が投票用紙に載っていると思ってほしい」とアピールする戦略はMAGA層の動員には役立つとみられる一方、穏健な中間層の離反を招くリスクが指摘されていて、特に激戦州ではプラスにならないとみられている。ロイター通信は「激戦の62の選挙区のうち、41の選挙区で候補者はトランプ大統領と距離を置く姿勢をとっている」と伝えた。

中間選挙後にトランプ氏はどう動くのか

ここまでトランプ氏率いる共和党が選挙戦で劣勢に置かれている現状を見てきた。では、選挙結果によってトランプ政権の先行きはどのように変化するのだろうか。

現時点で予測される選挙結果は大別して以下の3つだ。

(1)上下両院で民主党が多数派に
(2)下院は民主党が多数派を奪還、上院は共和党が多数派を維持
(3)上下両院で共和党が多数派を維持

私は現時点で(1)>(2)>(3)の順に可能性が高いとみている。

まず、(3)になれば政権は現状の路線を継続するだけだ。大きな変化は生まれない。そして、ここまで見てきた通り、可能性はかなり低い。

(1)と(2)の場合は、いずれもトランプ氏は議会を通じた政策実現が難しくなる。

(1)となれば、議会での閣僚などの人事承認も難しくなるし、(2)の場合でも民主党は下院で大統領の弾劾訴追を行うことができるようになるほか、議会による不正の調査を押し進めることができるとみられている。巷間、「中間選挙で敗れれば、トランプ大統領の政策運営が難しくなる」と言われる所以だ。

ただ、トランプ氏はトリプルレッドの現在も議会を通じて法案を通すことには熱心ではなく、行政命令である大統領令を駆使して関税政策などの実現を図ってきた。

そのため、上下両院の多数派が民主党に変わっても、トランプ氏の基本的な政治の進め方には変化がないのではないかとも指摘される。民主党が議会での多数派になっても、トランプ氏はこれまで通り、大統領令を中心に同じような政策を続けるのではないかという見方だ。私もこの見方が最も蓋然性が高いと考えている。

就任以降、関税政策を中心に世界を驚かせる大統領令を連発してきたトランプ氏だが、これまでも法的根拠を十分に持たない大統領令を通じた政策実現は最高裁などによってストップがかかってきた。

議会との協調路線に転じなければ、これまで同様、「トランプ政権が無理筋な政策を大統領令で打ち出す」→「司法により一定の歯止めがかかる」というサイクルが続き、内政面では停滞感がより強まるものとみられる。

一方で、内政に比べて大統領の裁量が大きい外交政策ではさらに「トランプ色」を強く打ち出してくる可能性が高い。

イランでの失敗を上書きしようと、▼ロシア・ウクライナの戦闘終結の再度の模索(ウクライナへの圧力強化か)▼中国とのビッグディールを画策▼キューバへの体制転換圧力の強化▼北朝鮮の金正恩総書記との会談、平壌訪問などの模索、といった動きが本格化する可能性がある。 

トランプ氏がわかりやすいレガシー=遺産を求めて、長期的な米国の戦略を捻じ曲げたり、同盟国の利益を犠牲にしたりすることがないのか、日本を含めた諸外国も神経をとがらせることになる。

注目はバンス氏とルビオ氏の動向

そして、選挙後のシナリオを考える上で、私が注目しているのは、2028年の大統領選挙の有力候補とされるバンス副大統領、ルビオ国務長官の動向だ。 

仮に中間選挙で共和党が大差で敗れ、「これまでのトランプ氏の政権運営にノーが突き付けられた」となった時、バンス氏やルビオ氏はこれまで通り、トランプ氏の路線を支える立場を貫くのか。不人気なイランとの戦闘の後押しを続け、トランプ氏によるホワイトハウスの宴会場建設などのレガシーづくりに諸手を挙げて賛成し続けるのか。

「トランプ氏との距離の近さ」は、共和党内の候補者レースでは依然として大きな力になる。おそらく2028年の時点でもそうだろう。しかし、無党派層も含めた幅広い支持を得る必要がある大統領選を戦う上では、中間層へのアピールという点でマイナスに働く可能性が高い。

バンス氏、ルビオ氏はこのバランスをどう考えるのか。2人が内々にでも距離を置くような展開となれば、政権の意思決定は停滞し、実質的にレームダック化する可能性が出てくる。

一方、トランプ氏は退任する2029年1月以降にも反対勢力から法的な追及を受ける可能性があるため、自らを絶対に裏切らず、影響力を行使できる人物を後継に据えたい考えとみられている。バンス氏やルビオ氏に対して、自身の持つ共和党内での集票力を梃子に、一段の忠誠を迫るような展開も想定される。

中間選挙が終わればただちに2028年の大統領選挙レースが本格化する。政権中枢にいるバンス氏、ルビオ氏は中間選挙で示される民意をどう受け止め、どう振る舞うのか。トランプ氏は2人をつなぎ留めておく政治的な力を保持し続けるのか。トランプ政権の残り2年間を左右する重要な要素となる。

〈執筆者略歴〉
涌井 文晶(わくい・ふみあき) JNNワシントン支局長
2004年TBS入社。政治部と経済部で総理官邸・経済産業省・日本銀行などを担当したほか、「NEWS23」の制作を担当。経済部デスクを経て、2023年4月からワシントン特派員。2025年7月から支局長を務める。

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