大国の「力の支配」にどう立ち向かう? フィンランド前首相マリン氏が警告「法の支配への覚悟が試されている」【サンデーモーニング】

アメリカやロシアといった大国が、いま国際社会を大きく揺るがしています。そうしたなか、日本のような国はどうしたいったらいいのか。大国に翻弄されながら国のかじ取りを行ったフィンランド前首相を取材しました。
【写真で見る】フィンランド前首相マリン氏にインタビュー 「法の支配」大切さ訴え
アメリカとロシアが“ディール” 思惑は…? 大国の「力の支配」を前に「法の支配」訴え
12日、ノーベル平和賞を受賞したナビ・ピレイ氏が訪れたのは、古巣であるICC=国際刑事裁判所。拍手で迎えられ、赤根智子所長と堅い握手を交わしました。
受賞が決まった直後の会見では…
ノーベル平和賞 ナビ・ピレイ氏(9日)
「この受賞によって決意を新たにしました。『法の支配を守るには団結しなければならない』と」
会見で「法の支配」を訴えたピレイ氏。しかし、“ICC解体”を公言するトランプ政権は、この直後、ICCへの制裁を発表します。
これに対し、16日、首脳会議を開いたEUは、制裁撤回を強く求めるとともに、ICCを守るため「あらゆる措置を講じる用意がある」と強調しました。
一方、この首脳会議の場で、ウクライナのゼレンスキー大統領は怒りを露わにしました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「アメリカとロシアで結ばれた軽油取引に関する合意について、私たちは知らされていませんでした。制裁解除もすべての人にとってサプライズでした」
9日、アメリカが突然、ロシアへの経済制裁を緩和し、軽油を輸入することで合意。ウクライナの頭ごしに、アメリカとロシアのディールが行われたのです。
アメリカ トランプ大統領(アリゾナ州・14日)
「中間選挙は負けるわけにはいかない」
背景には、劣勢が伝えられる中間選挙を控えたトランプ大統領が、燃料価格高騰に対する有権者の不満を抑えたい思惑があるとされます。
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏に「法の支配」重要性を聞く
大国の横暴ともとれる行動に振り回される国際社会。そうした中、ロシアの脅威にさらされながらも、「法の支配」の大切さを訴えてきた、北欧のリーダーがいます。
自伝の出版を機に来日した、フィンランドの前首相、サンナ・マリン氏(40)。
13日、マリン氏にインタビューしました。
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏
「世界を変えたいと思って、政治の世界に入りました」
北欧の国・フィンランド。マリン氏は、34歳で世界最年少となる女性首相に就任しました。(~2023年まで在任)
フィンランドは、ロシアと1300キロの国境を接し、常にその圧力に晒されてきた歴史を持ちます。
2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻。国際法を無視し、一般市民の犠牲をもたらしたロシアを、首相だったマリン氏は非難し、こう決意を語りました。
フィンランド サンナ・マリン首相(当時・2022年9月)
「人権・法の支配・民主主義への、私たちの覚悟が試されているのです」
そしてフィンランドは、これまでの軍事的中立の立場を大きく転換し、NATO=北大西洋条約機構への加盟という歴史的な決断を下します。
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏
「自分の任期中にNATOに加盟するとは思っていませんでした。小国の視点から言えば、国際ルールの尊重が最も重要なことです。なぜなら私たちには強大な力がないからです。私たちは人口わずか550万人の小国で、力で対抗することなど不可能です」
「“いいとこどり”をしてはいけない」 「法の支配」支える“民主主義”の尊さ訴え
大国の「力による支配」が国際社会を揺るがす中、フィンランドのような国は、それにどう立ち向かえば良いのでしょうか。
サンナ・マリン氏は、首相在任当時、ロシアによるウクライナ侵攻を受け「力による支配」から守るためNATO加盟を決断。同時に、マリン氏は決意したことがありました。その時思ったのは...
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏
「国際ルールを尊重し、国際法や『法の支配』の価値を守るため、闘うことを選んだのです」
「力による支配」に対抗できるのは、「法の支配」を尊重すること。マリン氏はそうした姿勢を一貫して示すべきだ、と語ります。
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏
「フィンランドのような小国や日本のような中堅国の視点から見れば、世界にルールが存在しない『力の支配』によって物事が決まるのは、極めて恐ろしいことです」
──このような状況下でリーダーはどう行動し、何を大切にすべきでしょうか?
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏
「国際ルールを尊重するなどの取り組みにおいて、一貫性を保つこと。『ここではルールを守るが、ここでは従わない』といった "いいとこどり”をしてはいけません。自らの取り組みや立場に一貫性を持たせなければなりません」
フィンランド建国100年を記念して建てられた、公立図書館「Oodi」。
図書館のテラスと、そこから望む国会議事堂の入口は、同じ目線の高さになるよう設計されています。それは“市民と政治が対等”であり「民主主義と対話」を象徴するものとされました。
そして、マリン氏は「法の支配」を支える「民主主義」の尊さをいま、改めて訴えます。
フィンランド前首相 サンナ・マリン氏
「何十年もかけて築いてきた、貴重な価値あるものを守るために行動しなくてはなりません」