全国93%の自治体で「入札不調」児相や老朽化した町役場も…進まぬ公共工事 民間工事に“選ばれ負ける”背景【Nスタ解説】
工事を請け負う業者がみつからず、計画通りに工事が進まない状況が全国で相次いでいます。
病院や消防施設など、私たちの命に関わる建物も例外ではありません。
【写真で見る】「天井の板が落ちて水浸しに…」老朽化するも建て替えられない病院
公共工事が進まない…各地で相次ぐ「入札不調」とは
高柳光希キャスター:
マンションや商業施設など、民間の工事であれば、なじみの業者に頼んだり、話し合いで工事費を調整したりすることができます。しかし、税金を使う公共工事ではなかなか難しく、それが今回の問題につながっています。
そもそも公共工事は税金が投じられているので、公共施設を建設する際には、「いくらで作るのか」「どこの業者に依頼するのか」を決める基準が明確に定められています。
その基準に基づき、国や自治体が工事を請け負いたい業者を公募する「入札」という方式がとられています。
原則、複数の業者が価格を提示し、最も低い価格をつけた企業と契約するように競争が行われます。
しかし現在、入札に参加する業者がいなかったり、価格超過などにより条件が合わず不成立となったりする「入札不調」が全国的に相次いでいます。
東京・北区では「児童相談所」を新設する予定ですが、すでに入札不調を3回繰り返し、現在4回目の入札に向けて調整を行っています。
北海道・八雲町では、老朽化した「町役場」の建て替え工事が2回入札不調となり、計画を見直すことになりました。この場所は、津波の浸水区域でもあるため、早く別の場所への建て替えが必要となっています。
喫緊の課題…自治体の93%超が「入札不調あり」
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
実は、日本総研が155の自治体を対象に行った調査では、過去3年間で入札不調に陥った経験のある自治体は93.6%という結果となりました。
1回目の入札で決まることが最も望ましいものの、自治体は条件を変えながら2回目、3回目と、業者が決まるまで入札を繰り返さざるを得ない状況に陥っています。
井上貴博キャスター:
資材費の高騰や深刻な人手不足によって、被災地においては復旧・復興を加速させたい局面ですが、思うように工事が進まない現状があります。国としてどのような対策を講じていくかが問われています。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
具体的な課題はたくさんありますが、簡単な解決法がないから難しいですよね。
特に円安による資材費の高騰と人手不足は、工事現場に限った話ではないので、難しいと思います。
高柳キャスター:
そもそもなぜ、入札不調となるのでしょうか。
公共事業と民間の工事を比較すると、それぞれの理由が見えてきました。
民間に「選ばれ負けている」 公共工事が進まないワケは?
高柳キャスター:
公共工事は高度成長期に作られた建物が多いため、一斉に老朽化が進んでおり、新築や改修工事の発注が多くなっています。
一方、民間工事でもビルやマンションなどの投資を積極的に行っているため、公共・民間ともに発注の数自体が多くなっています。
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
工事業者は仕事が選べる状況のため、公共工事は民間より「選ばれ負けている」という状況があります。
なぜ選ばれないのか、取材を通して見えてきたポイントが2つあります。
▼1つ目のポイントは、「スケジュール」の課題です。
公共工事のスケジュールの例として、2~3月に自治体などが予算を決定し、数か月後に「こういう工事があります。やりたい業者は手を挙げてください」と募集が始まります。
その後、実際に入札が始まりますが、ここまでに業者は「いくらで工事を請け負えるか」という見積もりを出す必要があります。
ただ、このスケジュールは業者にとってはスパンが短すぎて「スケジュールを組んだり見積もりを出したりする時間がない」という状況です。
一方、民間は実際に工事に着手する前の早い時期から「こんな工事がありますよ、どうですか」と、工事計画を水面下で相談することができます。そうすることで、下請けである大工さんにも「こんな仕事があります」と根回しすることができて、計画が組みやすくなります。
井上キャスター:
時間をかければ、その間に資材費が高騰するリスクもあるのではないでしょうか。
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
募集から入札の期間を短くすると、見積もりを作る時間も短くなるので、手を挙げてくれる業者は少なくなります。
一方で期間を延ばすと、その分物価が上がっていくというジレンマがあります。
高騰を続ける建築費 自治体と業者に生まれる予算の乖離
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
▼2つ目のポイントは、「予算のタイムラグ」です。
入札価格の調査は、入札の前の年の「春から夏」が一般的とされています。しかし、自治体が予算を決めてから入札するまでの数か月間で物価が上がり、このタイムラグにより、自治体の提示額が工事業者によっては安いという乖離が発生してしまいます。
高柳キャスター:
一般財団法人 建設物価調査会の調査によると、2015年を100とした場合、建築費はコロナ禍以降に伸び続け、2026年1月には150を超えています。
井上キャスター:
このような状況下で、国や自治体には何ができるのでしょうか。
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
自治体でいえば、予算の決定を1年前倒しにするなど、型にはまったものを少しずつずらそうという努力をしていると思います。
出水麻衣キャスター:
そうすると時間的な猶予はできますが、物価変動についてはどのように対応するのでしょうか。
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
入札する直前でもう一回計算し直したり、あるいは契約した後に再契約のような形で価格を見直したりして対応しています。
「急いで契約しなければ…」入札不調に入札ではない選択肢をとる自治体も
TBSテレビ「Nスタ」 大北瑞季 ディレクター:
この入札不調が今後、解決できるのかについて、入札に詳しい岐阜大学の加藤義人客員教授は「自治体は工事の中で優先順位や規模の縮小など、折り合いをつけなければならない難しい判断を迫られることになる」と指摘しています。
こうしたなか、入札ではない選択肢をとる自治体もあります。
東京都目黒区では、老朽化した小学校の新築工事を計画していました。しかし、2回の入札不調に陥ってしまい、最終的に入札ではなく、大手ゼネコンと直接契約を結ぶ「随意契約」に至りました。
随意契約を行った理由について、目黒区総務部の佐藤公彦契約課長は、「急いで契約しなければ契約機会を失う」「当初の計画に間に合わせるために随意契約をした」と説明しています。
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<プロフィール>
大北瑞季
TBSテレビ 「Nスタ」ディレクター
元「報道特集」ディレクター
趣味はジオラマ作り
田中ウルヴェ京さん
五輪メダリスト スポーツ心理学者(博士)
こころの学びコミュニティ「iMiA」主宰