単身高齢者の入居拒否を救う!若者の「見守りとお茶会」で家賃軽減、20代〜90代が一つ屋根の下で助け合う新たな共生賃貸アパート

「高齢者は部屋を借りにくい」を解決したい
2021年1月に神奈川県藤沢市亀井野にできた2階建てのおしゃれなアパート「ノビシロハウス」。2年更新の賃貸住宅で部屋数は7部屋あり、このうち1階の4部屋が高齢者向けのバリアフリーになっていて、20代から90代までの7名が暮らしています。
【写真で見る】おしゃれなアパート「ノビシロハウス」室内の様子
「ノビシロハウス」の名前には「最期までのびのびと暮らしてほしい」「何歳になっても人生を輝かせるノビシロがある」という意味が込められているそうです。
代表の鮎川沙代さんは、不動産仲介の仕事をしていた際に、高齢者が部屋を借りにくく、特に管理会社やオーナーが単身の高齢者に部屋を貸したがらないことを知り、これを解決できるような賃貸物件を作りたくて株式会社ノビシロを立ち上げました。
高齢者が一人暮らしできないという問題の背景に、鮎川さんは「地域や人のつながりが希薄になっているのでは」と感じたものの、職員を配置したりボランティアの人が家をまわるという形では、本当の意味での地域コミュニティにはならないと思ったそうです。
住民同士の交流というつながりをどうしたら作れるか考えたとき、若者にも一人で寂しいと思っている人がいて、金銭的なゆとりがない人も多いことに着目しました。そこで「家賃を安くして、そのぶんコミュニティの核になるような動きをしてもらえたら良いのでは」と考え、ノビシロハウスを作ったといいます。
若者は「コミュニティメイト」に
若者には「週に2回くらいは高齢者に声を掛けること」と「月に一度お茶会を企画・主催すること」の2つの『お願いごと』があります。一方で高齢者には『お願いごと』はないですが、住民同士の交流がコンセプトなので、この考えに共感できるかを住む前に確認しています。
取材に伺った日曜の朝、月に一度のお茶会が開かれていて、併設するカフェに住民が集まってお菓子を食べながら盛り上がっていました。ノビシロハウスに住み始めて4年目の70代女性はこう話します。
「楽しい!いい感じの距離感なんですよ、人との距離がね。一人でのんびりしたければ部屋にこもって、でもそれじゃまずいなと思ったら降りてきて、カフェの人と話したり、ご近所さんとお喋りしたり。好きなように人との関わり合いができるから本当に楽ちん!こういう場所に出会えたのは本当にラッキーだったと思います」
一方、入居して半年ほどの20代後半の女性の感想です。
「一人で暮らしていると、一日誰とも話さないで終わる日があるのですが、この家では玄関先で誰かと顔を合わせて立ち話するなど、自然に人とのコミュニケーションが生まれていて、そこが楽しみになっています。お茶会の日は、友達とカフェに行く約束をしている日みたいな、歳の離れたお友達みたいな感覚で仲良くさせていただいてます」
この方は基本的には在宅での仕事ということで、お昼休憩の際に声掛けのために高齢者の部屋を訪ねたりしているそうです。
そしてもう一人、お茶会で司会をつとめた大学4年生の宮川陸さん。ノビシロハウス歴はまもなく2年。いま自分の役割についてどう感じているか聞きました。
「人の役に立ててるなというのは感じていて、例えば電球を替えたいときに手が届かないからお願いとか、携帯電話でわからないことがあるから手伝ってほしいとか、そういうときにすぐにパッと手伝えるので、そのときはすごく感謝してくださいますし、自分も役に立てて良かったなと思います。(コミュニティメイトとしての役割も)義務的なものもなく、大変だなと思ったこともないです。むしろ落ち込んだときにすぐ周りに話せたりとか、話す機会があるというのは自分にとってもすごく良い環境かなと思っています」
本当に終の棲家にできる賃貸物件に
最高齢の92歳男性から戦時中の話を聞いたり、70代女性から料理を教わったり、なにより人生の先輩がすぐそばにいる安心感があるそうです。
最近は全国から住みたいという問い合わせがあり、取材をした日も「将来こういうところで暮らしたい」と50代くらいの女性がお茶会の見学に来ていました。若い人向けの部屋にも30~40代の希望者が増えているそうです。年齢制限はありませんが、人生のプラスになって欲しいという思いがあるため、住む前に個別に話をさせてもらっているといいます。
代表の鮎川さんに、これからのことを聞きました。
「最期まで居られる賃貸を作りたいと思って最初からやっているのですが、その最期までという言葉の重みをすごく感じています。人が亡くなるというのは色々なことがあるので、まだまだ私も知識が浅く体制も甘いので、ちゃんと最期まで伴走できるように、介護施設やデイサービス、ケアマネジャーや訪問看護・訪問医療などいろんな方の協力を得て、本当に“終の棲家”にできるような賃貸にしていきたいなと思っています」
6年目を迎えた「ノビシロハウス」。最初から更新を重ねて住み続けている人は2人で、他は施設に入るなどの理由で入れ替わりがありましたが、現在は満室です。ニーズを受けて東京・東久留米市に新たに建設していて、完成予定は来年春頃。鮎川さんは「今後も増やしていきたい」と話していました。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:TBSラジオキャスター楠葉絵美)