筋トレ人口は減少も店舗は増加? 倒産が相次ぐジムと好調のチョコザップ・カーブスの差とは

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-10-22 07:00
筋トレ人口は減少も店舗は増加? 倒産が相次ぐジムと好調のチョコザップ・カーブスの差とは

2020年から2024年にかけて筋トレ人口は減ったのに、ジムは増え続けています。チョコザップは国内で2,000店を超えた一方、フィットネスジムの倒産は過去最多のペースです。同じようにコーチやトレーナーが指導するジムでも、カーブスは売上高・営業利益とも過去最高、トレーナーが1対1でつくパーソナルジムは倒産が続いています。その差は、新規顧客の獲得に頼るか、会員に長く通い続けてもらうかという収益構造の違いにありそうです。コスト構造と退会率から見えてくるジムの明暗について、リサーチャーのcomugiが解説します。

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(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2026年10月20日配信『運動が続かないのは、意志が弱いからじゃない。なぜチョコザップは増えるのに、ジムはつぶれるのか?』より)

筋トレの人口は減り、ジムは増える

まず、運動人口を見てみます。笹川スポーツ財団の推計では、20歳以上で1年に1回でも筋トレをした人は、2020年におよそ1,820万人いました。それが2024年には、およそ1,630万人。4年で190万人ほど減っています。財団の研究員は、コロナ禍に筋トレを始めた人の多くが、続けるまでには至らなかったのではないかと見ています。

ところが、ジムは増えています。矢野経済研究所の調査では、2025年8月の時点で、全国の民営のフィットネス施設はおよそ1万4,000か所。いちばん多いのは、チョコザップやエニタイムフィットネスのような24時間型です。チョコザップは2022年に始まり、運営するRIZAPの発表では、2026年7月に国内2,000店を超えました。スターバックスの国内店舗数とほぼ同じです。

市場規模は、帝国データバンクの見通しで、2024年度におよそ7,100億円です。過去最高ではあるものの、コロナ前の2019年度とほぼ同じで、成長したというより、コロナ禍の落ち込みから回復した水準です。筋トレ人口は減り、市場はコロナ前とほぼ同じ水準なのに、ジムの数は増えています。ここに、つぶれるジムが増える理由がありそうです。

ジムの倒産は、過去最多のペース

東京商工リサーチによると、フィットネスクラブの倒産は、2026年1月から8月までで26件にのぼりました。これまででいちばん多かったのは2023年の1年間で27件です。8月の時点で、すでにそれに迫っています。

帝国データバンクが2026年1月から7月までを調べた別の集計では、倒産したジムの運営会社の3分の2近くが、設立から10年たっていない新しい会社でした。この中には、トレーナーが1対1で教えるパーソナルジムを含む会社もあります。帝国データバンクの集計で、事業にパーソナルジムを含む会社の倒産は、2024年に13件、2025年に11件と、2年続けて10件を超えました。

ただ、パーソナルジムへの新規参入が止まったわけではありません。矢野経済研究所の同じ調査では、2024年9月から2025年8月までの1年間に、パーソナルジムが全国で280か所近く新しく開業しています。小さな物件と最低限の設備で開業できるため、新規参入が続いています。参入障壁が低いぶん、経営基盤が弱いまま開業するジムも出てきやすいのかもしれません。

前払いのトラブルも増えている

消費者トラブルも増えています。国民生活センターは2026年10月7日、パーソナルトレーニングの契約トラブルについて注意を呼びかけました。全国の消費生活センターに寄せられた相談は、2024年度の885件から、2025年度には1,457件に増えています。1年で、およそ1.6倍です。

寄せられた相談には、複数回のコース料金を前払いしたのに途中から予約が取れない、途中で解約したら入会金まで請求された、といったものがあります。前払い方式には、ジムの経営が悪化したときに、利用者が損失を負いやすい面があります。

パーソナルジムのコスト構造

では、なぜパーソナルジムの経営は難しいのでしょうか。パーソナルジム「24/7Workout」を展開する上場企業、トゥエンティーフォーセブンホールディングスは、費用の内訳を開示しています。持株会社になる前の2024年11月期の単体決算を見ると、売上に対して、店舗で働くトレーナーなどの労務費がおよそ33%、地代家賃がおよそ18%、広告宣伝費がおよそ21%でした。人件費、家賃、広告費の3つで、売上の7割強を占めています。

とくに重いのが、人件費と広告費の組み合わせです。RIZAPのBASICプランは、2か月16回の場合、入会金とあわせて税込およそ38万円です。トレーナーが1対1でつく、短期集中型のサービスです。

ここで、説明のための仮の計算をしてみます。トレーナー1人が1か月に100回のトレーニングを担当するとして、顧客1人が2か月で16回なら、予約を埋めるには、常に12人ほどの顧客が必要です。さらに、全員が2か月でコースを終え、空いた枠をすべて新規顧客で埋めると仮定すると、毎月6人ほどを新たに獲得し続けなければなりません。その多くを広告で集めるなら、広告費は毎月かかり続けます。一方、マシンのリース代や家賃、トレーナーの給料は固定費なので、顧客が少ない月でも減りません。

カーブスは、何が違うのか

カーブスは、30分のフィットネスです。女性向けのカーブスに加えて、男性向けの別ブランド「メンズ・カーブス」もあります。女性向けのカーブスだけで、2026年8月末に2,013店、会員はおよそ90万人です。運営するカーブスホールディングスの2026年8月期の決算では、連結売上高がおよそ434億円、営業利益がおよそ78億円で、どちらも過去最高でした。

カーブスにも、指導するスタッフがいます。同社の決算資料によると、コーチは全国で8,000人あまりです。ただ、カーブスのコーチは、1人の会員につきっきりにはなりません。マシンが輪になって並び、会員は30分のあいだにその輪を順番に回ります。コーチは、その輪の中で何人もの会員に声をかけます。

そして、カーブスが売っているのは、2か月のコースではなく毎月の会費です。2026年8月期の平均で、月間の退会率は2%台でした。会員が100人いれば、1か月に退会するのは2人か3人という計算です。退会率が低ければ、パーソナルジムのように広告で新規顧客を獲得し続けなくても、同じコーチと同じ店舗で売上を支え続けられます。

パーソナルジムもカーブスも、コーチやトレーナーが指導するジムであることは同じです。違うのは、収益構造です。短いコースを中心にするパーソナルジムでは、1人のトレーナーが1人の顧客につきっきりになり、2か月ほどでコースを終えてもらいます。カーブスでは、1人のコーチが何人もの会員を支え、何年も通ってもらいます。分かれ道は、人がいるかどうかではなく、同じ人件費で、何人を、何か月支えるかにあるのではないでしょうか。

業界は「長く通ってもらう」ほうへ

ジム業界では、この「長く通ってもらう」形を重視する動きが広がっています。24/7Workoutは2025年1月から、回数をまとめて前払いするコースを中心にした料金体系を、月額制を軸にした体系に切り替えました。前払いのコースは、終わると契約も切れやすく、そのたびに新規顧客の獲得が必要になります。月額制なら、継続率が高いほど売上が安定します。

象徴的なのがRIZAPです。パーソナルジムのRIZAPは2012年に、2か月で結果を出すジムとして1号店を開きました。そのRIZAPが2022年に始めたのが、チョコザップでした。2か月で卒業するジムで知られた会社が、自ら、低価格で気軽に続けてもらうジムを始めたのです。

そのチョコザップも、会員が減ったと話題になったことがあります。RIZAPグループの資料では、2025年5月から11月までの半年で、会員は135万人から110万人に減りました。ただ、減った分の多くは、会社と契約したお試しの会員や株主優待の会員といった、無料で使える会員でした。有料の会員も少し減ったものの、109万人前後で大きくは変わらず、2026年8月には、会員は116万人あまりまで戻っています。

筋トレ人口は減っているのに、ジムは増えています。市場がほとんど広がらないなかで、新規顧客の獲得に頼るジムほど、広告費と固定費の負担は重くなります。これからのジムの明暗を分けるのは、どれだけ多くの顧客を集めるかよりも、集めた会員にどれだけ長く通い続けてもらえるかなのかもしれません。

<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年10月20日配信『運動が続かないのは、意志が弱いからじゃない。なぜチョコザップは増えるのに、ジムはつぶれるのか?』から抜粋してまとめたものです。