「レイプされた」証言が消えた…アメリカの名門コーネル大で1000人が抗議 “7人から集団性暴力”の訴え なぜ「今」批判が再燃したのか

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-10-24 07:00
「レイプされた」証言が消えた…アメリカの名門コーネル大で1000人が抗議 “7人から集団性暴力”の訴え なぜ「今」批判が再燃したのか

「I am Jane Doe(私がジェーン・ドウだ)」
ニューヨーク州にある名門コーネル大学のキャンパスを、1000人を超える学生たちの叫びが埋め尽くしました。

【写真で見る】「私が被害者だったかも」1000人集結 胸に貼られたシール

契機となったのは、2024年に起きたとされる集団性的暴行の訴え。
捜査や大学側の処分に対し、他大学も巻き込んだ全米規模の抗議運動へと発展しています。

なぜ事件から2年が経った今、怒りの声が爆発しているのでしょうか。

「私が被害者だったかも」1000人集結 胸に貼られたシールの意味 

マンハッタンから車で4時間半。ニューヨーク州のイサカにあるコーネル大学は、アイビーリーグの一つに数えられる名門大学です。

10月5日、キャンパスに学生や教職員ら1000人以上が集まり、大学の対応に抗議しました。
学生たちが求めていたのは、大学の対応の検証と、関係した男子学生へのより厳しい処分。そして、コトリコフ学長の辞任です。

デモに参加した学生たちの胸には、「ジェーン・ドウ」と書かれたシールも。
「ジェーン・ドウ」とは、アメリカの裁判などで、女性の身元を守るために使われる仮名です。
今回、被害を訴えている女性も、裁判では「ジェーン・ドウ」として名前を伏せています。
学生たちは「I am Jane Doe」「私がジェーン・ドウだ」と掲げ、性被害を受けた女性への連帯を示しています。

「性被害は誰にでも起こり得ることです。私が被害者だったかもしれません。こうして声を上げることで、問題の大きさを示したいです」

胸に「Jane Doe」と書かれたシールを貼った学生の一人はこう話します。

なぜ、これほど多くの学生が大学に抗議しているのでしょうか。
問題となっているのは、2024年10月に起きたとされる事件とその後の対応です。

「自分が餌のように感じた」 2年越しの訴訟で明かされた惨状 

女性の訴えによると、事件が起きたのは、2024年10月19日から20日。
当時コーネル大学の学生だった女性は友人に会うため「フラタニティ」の施設を訪問しました。
しかし、女性は酒や薬物を強要され、同意できる状態ではなかったにもかかわらず、7人の男子学生から数時間にわたって性的暴行を受けたといいます。

「フラタニティ」とは男子学生の社交団体で、「フラタニティ・ハウス」と呼ばれる寮のような施設で共同生活や交流を行います。女子学生の社交団体は「ソロリティ 」と呼ばれます。
アメリカの大学特有の学生コミュニティで、時に飲酒やハラスメントの温床として以前から問題となっていました。

女性は被害を申告しましたが、検察は「性的行為が強制されたとは判断できない」などとして訴追を見送っていました。

しかし、2026年9月、女性が男子学生や大学を相手取り、民事訴訟を起こしたことや、大学新聞がこの訴訟を伝えたことで再び注目されました。

「自分が餌のように感じました。周りにはライオンがいるようでした。そこは本当に、身動きが取れなくなるような状況でした」

AP通信によりますと、女性は大学の学内調査でこのように発言。
訴状によりますと、男子学生らがメッセージアプリで女性についてやり取りし、ほかの男子学生を呼び込むようなメッセージを送っていたとする記述があったということです。

一方、訴えの対象となった男子学生らは、関与を否定したり、性的行為は合意に基づくものだったと主張したりしています。

「レイプされた」証言が消えた? 捜査へ深まる疑問 

事件が注目されると同時に大学警察の対応に疑問の声が高まりました。
大学警察とは大学の従業員として常駐している警察官です。

女性は大学警察による詳しい聞き取りの中で、「100%の確信で、レイプされたと言えます」と話していました。
しかし、現地メディアの報道によりますと、聞き取り記録は約120ページに上っていた一方、検察側に提出された供述書は6ページにまとめられ、女性が「レイプされた」と話した証言が抜けていたということです。

こうした判断をめぐって「大学の従業員である大学警察は、大学を守るために事件を小さく見せかけようとしたのではないか」という強い疑惑の目が向けられました。 
批判が高まり、ついには地方検察が捜査を再開。

「コーネル大学警察とその対応に、深く憤りを感じています」

キャシー・ホークル知事はこのように批判。州の司法長官を特別検察官に任命し、捜査を引き継ぐと発表しました。

また、ニューヨーク州法では、薬物やアルコールの影響で判断能力を失った状態について、本人の意思に反して摂取させられたことが法律上の要件の一つになっています。

この規定を見直そうと、本人が自ら酒や薬物を摂取していても、相手が同意できない状態だと知っていた場合などには性犯罪として罪に問えるようにする法案が州議会に提出されました。

「反省文で処分軽減」甘い対応に批判噴出…学長謝罪

事件をめぐっては、大学側の対応も厳しく問われています。

大学は独自に調査を行い、関係した男子学生らに退学や停学などの処分を科しました。
一方、訴状によりますと、一部の男子学生に対し、反省文を提出することで処分を軽減する機会が与えられたということで、学生たちからは処分が不十分だという批判が上がっています。

コトリコフ学長は事件が大学内で起きたことに「強い衝撃を受けている」としたうえで女子学生に対し「深く申し訳なく思う」と謝罪。あわせて以下の対応策を発表しました。 

大学側が発表した主な対応策
・独立調査の実施: 元司法副長官が率いる法律事務所に検証を委託
・団体活動の停止: 男子社交クラブ(フラタニティ)の行事を年度末まで禁止
・体制強化: 支援職員を増員し、大学警察ではなく州警察による直接捜査の仕組みを導入 

著名人や他大学へ波及「#IAmJaneDoe」のうねり

コーネル大学では、10月7日にも学生たちがキャンパス内で座り込みを行い、大学に説明責任を果たすよう求めました。

抗議の声は大学の外にも広がっています。

ニューヨーク市のコロンビア大学やカリフォルニア大学ロサンゼルス校などでも女性への連帯を示す集会が開かれました。
SNS上でも「I am Jane Doe」と投稿し、被害を訴えた女性への連帯を示す動きが広がっています。

歌手のオリヴィア・ロドリゴさんや俳優のフローレンス・ピューさんら、著名人も女性への連帯を表明したと報じられています。

一方、シカゴ大学のフラタニティ施設でも別の女子学生が性的暴行を受けたとの申し立てがあり、警察が捜査を始めました。
大学キャンパスでの性暴力への対応が全米で改めて注目されています。

女子学生の35%が「同意なき被害」経験  

コーネル大学の調査では、2025年の学内調査で、学部の女子学生の35%が入学後に強制や判断能力の喪失を伴う同意のない性的接触を経験したと回答しています。

キャンパスで学生たちに話を聞くと、今回の事件を他人事とは捉えていない様子がうかがえました。
また、性暴力が身近でも起こり得るという不安や、同じような問題が繰り返されることへの憤りが聞かれました。

女性の訴えから2年。
キャンパスでの性暴力をどう防ぐのか。
フラタニティという文化を廃止すべきなのか。
そして、被害を訴えた学生を守るべき大学や捜査機関はどうあるべきか。
学生たちが全米に問いかけています。

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