若者殺到の「立ち飲み」なぜ人気?銀座330円ワインから野毛の"せんべろ"まで進化する新潮流【THE TIME,】

かつて「サラリーマンの聖地」といったイメージが強かった立ち飲み。しかし今、その姿は大きく変わり、若者を中心に新たなブームが巻き起こっています。居酒屋チェーンが立ち飲みスタイルの店舗を展開したり、グルメサイト「食べログ」が昨年から立ち飲みの特集を開始したりするなど、店舗数も右肩上がりに増えているのです。
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かつては「入りづらい」と感じていた女性たちも、「ずっと立ち飲みのときもある」と話すなど、客層は確実に変化しています。なぜ今、立ち飲みが若者に選ばれているのでしょうか。その理由をTIMEマーケティング部の原千晶部員が調査すると、「大人のサイゼリヤ」「原宿みたい」といった、これまでのイメージを覆すキーワードの数々が浮かび上がってきました。
「大人のサイゼリヤ」!? 地価日本一・銀座で“1500べろ”
「丁寧に作っているイタリアンが、料理もワインも楽しめて1500円ぐらいで済んでしまう。言うなれば“1500べろ”ですね」こう語るのは、これまで1万2000軒以上の居酒屋を訪れたというライターの塩見なゆさん。まず塩見さんが案内してくれたのは、高級感が漂う銀座の一角にあるイタリアンバル「オステリア ダ アダ」。店内に足を踏み入れると、入口から奥までお客さんでぎっしりと埋め尽くされ、特に若い世代の姿が目立ちます。多い日には300人以上が訪れるというこのお店は、女性を中心に賑わっているとのこと。
人気の理由は、その圧倒的な値段の安さにあります。白ワインも赤ワインも1杯330円と破格。さらに、本場で修業を積んだシェフが作る40種類以上のイタリアンおつまみは、200円台から楽しめます。
原部員はバイ貝や生ハムなど4品と赤ワインを注文して、会計は1570円。
ワインを口にした人は「ほんとに330円の味じゃないです」と驚きを隠せません。この安さの秘密は、イタリアからの直輸入による大量仕入れでコストを削減していることにあります。また、カウンターに並べられた料理をお客さんが自分で取るスタイルにすることで、調理や配膳の手間を省き、人件費を抑えているといいます。
利用客からは「大人のサイゼリヤみたいな感じ」「値段を考えずに好きなものを頼んじゃう」「気負わなくてもふらっと入れて、ちょっと飲みたいな、で寄れるのがいい」と、その気軽さが支持されていました。
若者が集う“のんべえの聖地”は「まるで原宿」
立ち飲みの新たな潮流は、じわじわと広がりを見せています。中高年世代からも「立ち飲みで若者たちが日本酒を飲んでる」と、驚いている様子。
そんな若者たちに今、人気の立ち飲みエリアとして名前が挙がるのが、横浜市の野毛地区です。
600以上の居酒屋が軒を連ねる野毛は、“のんべえの聖地”としてSNSなどで話題沸騰中。
塩見さんによるとその中の立ち飲みは、「かつては10軒か20軒ほどでしたが、今では50軒以上に増えた」といいます。
その中でも特に賑わっているのが、おでんや寿司など4軒の店が集まった立ち飲み横丁「野毛のスタ場」です。建物の老朽化を理由に、当初は3年間の期間限定営業の予定でしたが、あまりの反響に営業延長が決定。その人気の秘密が、信じられないほどお得なセットメニュー「スタセン」で1000円でドリンク4杯とおつまみ4品が楽しめます。
横丁内の4店舗それぞれで1杯1品ずつ注文できるシステム。ドリンクはハイボール、ウーロンハイ、レモンサワー、キャミハイ(紅茶ハイ)、ジャスミンハイ、の5種類の中から毎回選べ、おつまみはお店のお任せメニューです。
原部員も「スタセン」」を試してみることに。おでん屋さんでは1杯のドリンクに対しておでんのタネが2つ登場。口にしてみると、「大根の中にほぼ100%出汁がしみ込んでいるぐらい、噛んだ瞬間にお出汁の美味しさがじゅわっと出てきますね」と思わず笑みがこぼれます。
この驚きの安さは、お得なセットをきっかけに追加注文を促すことで利益を確保する仕組みになっているそう。お店の人によると、「じゃあ、もう1杯」とさらにお酒や料理を注文していくそうです。
若者が若者を呼ぶ…コミュニケーションが生まれるワケ
野毛に若者が集まる理由は、安さだけではありません。この街では、若い店員さんが増えているのです。中には、20代の女性がひとりで切り盛りするお店も。
「同世代だと話も合うし入りやすい」と客が話すように、若い店員がいることが来店へのハードルを下げているようです。
塩見さんによると、若い店主が増えた背景には、街の歴史が関係しているそう。野毛の最寄り駅である桜木町は、かつて東急東横線の終着駅でしたが、2004年にみなとみらい線が開業したことで廃止に。人の流れが大きく変わった結果、一時空きテナントが増え、家賃が下がったことで若者がお店を始めやすくなったのだといいます。
若者が若者を呼ぶ好循環が生まれた野毛。常連の男性は「若い子と友達になれるのがすごい」と、その魅力を語ります。
では、なぜ立ち飲みでは初対面の人とも仲良くなりやすいのでしょうか?
コミュニケーションを専門に研究するニッセイ基礎研究所の島田壮一郎さんによると、「椅子がないので自分のエリアが確定しにくく、誰かが入ってきても自分の領域を侵された感じがしない。そのため、他人を受け入れやすい」とのことです。
年齢も職種も知らない人と楽しく飲めるのが立ち飲みの良さ。「色々な人生経験をされた方の話を聞くと、明日も生きていけるかもって思える」「東京の息抜きができる場所」と語る若者たち。安さや気軽さに加え、世代を超えた人とのつながりが生まれる“立ち飲み”は、現代のコミュニケーションの場として、さらに注目されていきそうです。