猫の『寄生虫予防』の必要性について獣医師が解説

猫ちゃんと生活している飼い主さんの頭を悩ませる問題の一つとなるのが、猫ちゃんの健康管理問題なのではないでしょうか。気まぐれな性格の子が多い猫ちゃんの場合、抱っこをしながら何かの処置をするのが嫌という子も多く、健康管理や予防などの処置が難しくてあきらめてしまう飼い主さんも多いです。寄生虫予防、どのように考えていますか?

寄生虫予防をしない理由

獣医師と猫

猫ちゃんの飼い主さんとお話をして、寄生虫予防をしないとお話されるときに理由を聞くと、こんなお答えが返ってくることが多いです。

わんちゃんと性格も生態も少し異なるため、同じように上手くいかないこともあることを感じている飼い主さんも多いかもしれません。

猫ちゃんとの距離の問題

猫ちゃんは気まぐれで、自分から距離を縮めてくれるまで待たないと、機嫌を損ねてしまったり、良好な関係性を築くために猫ちゃんの性格や特性を把握しないと難しい生き物です。

お家で猫ちゃんのケアをするために触ろうとすると嫌がって逃げてしまったり、抱っこをしようとすると逃げてしまうなど、飼い主さんと猫ちゃんが何でもできる関係性であることが難しいこともあり、ケアなどを動物病院へお任せをしたり、投薬が苦手で飼い主さんがしようとすると嫌がるので代替できる方法で治療をおこなうなどの対策をとっているご家庭も多いと思います。

そんな中で定期的な投薬はハードルが高いというご意見もよくお聞きします。

予防の必要性を感じていない

以前はふらっとお外に出かけて、気が向いた時に帰ってくるという外猫ちゃんも多かった時代もありましたが、現在は事故や事件などの危険性や感染症のリスクなどもあり、現在ではほとんどお家の中でのみ生活をしている猫ちゃんが多いです。

そのため、寄生虫と接触する機会も少ないこともあり、あえて猫ちゃんが嫌がる可能性の高い投薬を行なわなくても良いと感じるというご意見もお聞きすることがあります。

猫ちゃんの予防の必要性というと今まではノミやダニの外部寄生虫の感染対策のイメージでした。しかし、最近では新たな病気もわかってきています。

本当に必要性がないのかどうかをきちんと情報を得たうえで判断することが大切かもしれません。

病院へ行く機会が少ない

猫ちゃんはとても繊細な子が多く、小さな変化でも恐怖を感じたり警戒心を感じたりすることが多いです。

そんな猫ちゃんたちが苦手とするのが動物病院と言えるでしょう。わんちゃんは法律で定められた狂犬病予防などで必ず受診をしなければならない機会が多いですが、猫ちゃんの場合、わんちゃんと比較すると少ない傾向があります。

そのため、大きなストレスになり得ることを考えて、よほどの病気などがないと動物病院へ行くことがなかったり、病院へ行くという選択肢が一番最後になりがちです。

そのため、動物病院で処方してもらう必要がある予防薬はあきらめようかなという考えもあるのではないでしょうか。

寄生虫予防はなぜ必要?

虫眼鏡と猫

猫ちゃんにとっては少し難易度が高そうに感じる予防薬の投与ですが、実は大切なことです。お家にずっといる猫ちゃんでもなぜ必要なのでしょうか。

感染症は身近なものであるため

感染症によっては死に至る危険性のある感染症もあります。

例えば、以前は感染する危険性がわかっていなかったフィラリアですが、猫ちゃんも感染をして、死に至る危険性があることがわかりました。

猫ちゃんの場合、多くはフィラリアの子虫が体内に入ってから、自身の免疫力で多くは成虫になる前に死滅することが多いですが、成虫に育ってしまうと突然死につながる危険性があると言われています。

猫ちゃんへの感染の危険性が知られてから、まだあまり長い年月が経っていないこともあり、実は以前も原因不明の突然死などは一部がフィラリアの感染が原因だった可能性もあるのではないかという説もあります。

外へ出なくても蚊は室内に入ってくることや、近隣でフィラリア感染動物がいる場合、蚊と感染動物が存在することで猫ちゃんへの感染は成立してしまうことから、実は身近に感染の危険が迫っています。

ノミやダニなども、飼い主さんの衣服についた状態でお家に持ち込んでしまう場合や、お庭やベランダに野良猫ちゃんや野生動物が入ってくることで、間接的に接触する危険性があります。

また、普段は他の猫ちゃんと接触する機会がなくても、入院や急なペットホテルへのお預けなどで接触する機会ができる可能性があります。

急に訪れる万が一の日のためにもきちんと予防をしておくことが大切です。

寄生虫により二次感染があるから

寄生虫による感染というと、ノミやダニの感染やおなかの虫などの感染によるもので、死に直結する可能性は低そうに感じがちです。

ノミやダニの感染は大量に感染することで貧血や不快感などの大きな問題につながりますが、少数寄生であれば皮膚炎や体質によってアレルギーにつながるなどの危険性が考えられます。

しかし、ノミやダニを媒介してさらに寄生虫やウイルスなどを媒介する危険性があるため注意が必要です。

例えば条虫と呼ばれる消化器に寄生する寄生虫はノミを媒介してわんちゃんに寄生します。腸炎を起こし、下痢や嘔吐などの症状が見られることが一般的です。

ダニは最近話題になっているSFTSと呼ばれる病気を引き起こすウイルスを媒介することがわかっています。

飼い主さんにも感染する感染症を媒介してしまうから

実は特に気を付けなければいけない病気として、近年話題になっているのがSFTSと呼ばれる重症熱性血小板減少症候群という病気です。

この病気はわんちゃんや猫ちゃんだけでなく飼い主さんにも感染する病気であり、重度になると死に至る危険性もある怖い病気であるため注意が必要です。

発熱や消化器症状などが見られ、原因となるウイルスをもつマダニに噛まれることによって感染します。

お互いの健康を守るために、媒介するマダニの予防をすることが大切です。

どんなタイプの予防薬がある?

滴下タイプの薬と猫

予防の大切さがわかりましたが、猫ちゃんの性格によってはお薬の投薬が難しく感じる場合もあるでしょう。

猫ちゃんの特徴によって、お薬を選ぶことで飼い主さんの投薬のハードルも下げられる可能性が高いです。

滴下タイプ

よく知られているタイプのお薬なのではないでしょうか。背中や首元に液体を滴下するタイプのお薬です。

1ヶ月に1度投薬する必要がありますが、体を触られることが問題ない猫ちゃんであれば比較的使いやすいお薬だと思います。

動物病院が苦手でない猫ちゃんであれば、動物病院を受診し、体重測定などとともにかかりつけの先生に滴下してもらうというのも良いかもしれません。

べたついたり、揮発させるためにアルコールが含まれている場合もあるため、舐めやすい場所に滴下してしまうと、体調が悪くなったり嘔吐したりしてしまう場合があるというデメリットもあります。

経口タイプ

飲むお薬タイプの予防及び駆虫薬も存在します。

外猫ちゃんで触れない猫ちゃんや警戒心の強い猫ちゃんなどにもおすすめの投薬方法になります。

お薬をごはんの中に混ぜて与えることが可能であるため、食欲旺盛な子やおいしいものが大好きな子には適した方法と言えるでしょう。

ただし、多頭飼育の飼い主さんや食べ物への執着があまりない猫ちゃんの場合、確実な投与が難しくなるため、あまり適さない方法かもしれません。

持続型タイプ

最近注目されているのが、薬効が持続するタイプのお薬です。滴下タイプのものになりますが、約3か月の効果の持続が期待できます。

お薬が苦手な猫ちゃんでも、3か月に1度の我慢と考えたら頑張れる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

病院が苦手で処置をされることを嫌う猫ちゃんにもメリットの多いお薬のタイプだと言えると思います。

まとめ

大変そうに感じる寄生虫予防ですが、猫ちゃんの健康を守るためや飼い主さんの健康を守るために欠かせません。最近では様々なタイプの予防薬が存在します。

猫ちゃんの性格やこだわりなどに合わせて、適した予防薬を選んであげましょう。

どのようなお薬がいいのかわかりづらい場合はかかりつけの先生に相談してみることをおすすめします。

地域によって、よく見る寄生虫や予防すべき感染症が異なる場合もあるので、どんなお薬だと注意すべき寄生虫が予防できるのかということも含め、確認してみると良いと思います。

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