サムライの時代に誕生した「ペットフード」

2024-07-22 13:00

皆さんが普段、日常の買い物として当たり前のように購入し、ペットの日々の食事として使っている「ペットフード」は、いつ誕生して、どのように進化してきたのかご存知ですか? 今回は、ペットフードの歴史についてお話ししますね。 と […]

皆さんが普段、日常の買い物として当たり前のように購入し、ペットの日々の食事として使っている「ペットフード」は、いつ誕生して、どのように進化してきたのかご存知ですか?

今回は、ペットフードの歴史についてお話ししますね。

と、その前に、「ペットフード」とは、どんなものでしょうか?

私たちペットフード協会では、「ペットフード」を以下のように定義づけています。

『ペットの飼育の際には、ペットの適正な発育と健康維持・増進のために必要な栄養素をペットへ毎日食物補給する必要があります。 また、ペットは飼い主から食物を与えられなければ、適切な日常の食物摂取ができない生き物です。その為に考え出され、安全・安心に製造・流通・小売されているのがペットフードです』

犬用の食事としての「ドッグフード」の誕生

私たち人間が犬とともに暮らすようになったのは、1万5,000年くらい前からだと考えられてきましたが、近年ではそれよりももっと古く、約3万2,000年前からだという学説も出てきました。

1万5,000年と3万2,000年とではかなり大きな違いですが、ここではあまり深く追究せず、「とにかくずいぶん古くからの付き合いなんだなぁ」くらいに考えておきましょう。

現代の犬は、野生のオオカミやコヨーテが先祖だと考えられていることは、皆さんご存知のことでしょう。

いま身近にいる犬たちの食性は「肉食に近い雑食」になりますが、人間と暮らす以前の彼らは、狩りをすることによって自らの食料を得る「肉食動物」だったと考えられます。それが、人間と暮らし、人間から食べ物を与えられる存在になると、次第になんでも食べる「雑食動物」へと変化しました。

気が遠くなるほどの長い年月、人間とともに暮らしてきた犬ですが、犬用の食べ物として、「ドッグフード」が開発されたのは、わずか160年ほど前のこと。

1856年、ロンドン在住のアメリカ人、ジェームス・スプラッツ氏は、愛犬が「シップビスケット(かつて、ビスケットは船旅の重要な食料だった)」を美味しそうに食べているのを見て、犬用のビスケットを作ることを思いついたそうです。

そして、1860年にロンドンで犬用のビスケットを販売。これが史上初の「ドッグフード」となり、ペットフードの元祖となったのです。

余談ですが、この頃の日本は江戸末期にあたり、幕末のサムライたちがもたらす不穏な空気が世間を覆っていた時代です。1860年に桜田門外の変、1863年に薩英戦争、そして、1868年には鳥羽伏見の戦いが起こっています。いつの時代でも人間は争ってしまうのですね…。

缶詰や粉末が誕生したペットフードの黎明期から近代へ

犬用ビスケットの次に生まれたのは、1922年にアメリカのチャペル社が開発した馬肉を使った犬用の缶詰です。

当初、アメリカでは馬肉を食べるという習慣がなく、人間に馴染みのない馬肉を犬に食べさせるということにいささか抵抗があったようですが、イギリスで大人気となり、1930年代にはドッグフード用に馬を特別に飼育するほどだったと言います。

馬肉の缶詰に次いで登場したのが、1927年にアメリカのゲインズ社から発売された、粉末タイプのドッグフードです。

粉末は製造が比較的簡単なことが利点ですが、なんといっても食べにくく、嗜好性もよくなかったようで、あまり普及しませんでした。

記録によると、1941年の時点で、市販されているドッグフードの90%を缶詰が占め、残り10%程度がビスケットだったようです。

ドッグフードとして一般に普及していた缶詰ですが、第二次世界大戦による鉄板不足で製造が難しい状況に陥ってしまいました。

そこで、缶詰に代わるドッグフードとして開発されたのが、世界初となる発泡タイプのドライフード(ピュリナ社・アメリカ)とセミモイストタイプのフード(ゼネラルフーズ社・アメリカ)です。

現代のペットフードの原型ともいえるドライタイプ。その開発を成功に導いたのが、ピュリナ社のジェームズ E コービン博士です。

博士は1957年、プラスチック用の射出成型機からヒント得て、現在のようなドライタイプのペットフードを開発しました。そのため、博士は「ペットフードの父」と言われています。

ちなみに、キャットフードはドッグフードより遅れて開発され、1950年代に缶詰タイプ、1970年代になってようやくドライタイプが開発されました。

日本にドッグフードがやってきた!

日本にアメリカ製の「ドッグフード」がやってきたのは、戦後に進駐軍が持ち込んだものが最初だと言われており、それらは主に軍用犬や警察犬に与えられていたようです。

1950年代には、日本にもアメリカ製の「ドッグフード」が輸入されるようになりましたが、国産のドッグフードができるのはもう少し後のこと。

日本で初めて国産のドッグフードが誕生したのは、1960年、協同飼料株式会社(のちの日本ペットフード株式会社)が作った粉状の「愛犬の栄養食 VITA-ONE」です。

続いて1966年には日本農産工業(現・ペットライン)が自社開発したエクストルーダー(ドライフードを成型するための装置)によって、国産2号となる「ドッグビット」を開発。以後、国内メーカーから続々と国産のドライフードが発売されるようになったのです。

ペットの食事を改めて考える日

2013年9月、私たちペットフード協会は、「家族同様である犬、猫、その他ペット全般の食事を改めて考える日」として、2×10=20(「フー」×「ド」)で、毎月20日を「ペットフードの日」と定めました。

この日は、飼い主の皆さまに「ウチの子」の食事について、それぞれに合ったペットフード選びができているかどうか、ペットフードを正しく使えているかどうかを改めて考えていただく日です。

そして、飼い主の皆さま、および業界関係者にペットの体を作る大切な「ペットフード」をより深く理解していただき、ペットに必要な「ペットフード」の普及と品質向上、そして業界の発展にもつなげていきたいと考えています。

まとめ

私たち人間が犬とともに暮らすようになって千年万年、星の数ほど多様な食事を犬や猫にあげてきたのでしょうね。

かつては、なんでもいいからその時手近にあるものをあげていたのでしょうが、現代の飼い主さんは犬や猫の健康を考え、できるだけ病気をしないよう、できるだけ長く一緒にいられるよう、昔とは比較にならないほどペットの食事には神経を使っていると思います。

そして、ペットの健康のためのフードの探求はこれからも続きます。今よりもさらに進化した形で。

飼い主の皆さんは、「ウチの子」の日々の健康状態をしっかりと見て、私たちと一緒に、ペットの食事についていろいろと考えてみてください。

もしかしたら、ペットの健康への想いを共有する中で、まったく新しいタイプのペットフードが生まれるのかもしれません。

記事の監修
獣医師
徳本一義
  • 一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会委員長
  • 一般社団法人ペット栄養学会 理事
  • 有限会社ハーモニー 代表取締役
  • 日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学非常勤講師

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