長期金利18年半ぶり高水準、「固定金利」「変動金利」住宅ローン返済額はどれだけ変わる?【Nスタ解説】
急上昇を続ける長期金利、約18年半ぶりの高水準となっています。大きく影響を受けるのが「住宅ローン」。どれくらい負担が増えるのでしょうか?
【写真で見る】固定金利50年ローンも登場… 年金でローンを払うことに?
住宅ローンの選び方「固定金利」「変動金利」の違い
井上貴博キャスター:
住宅ローンについて見ていきますが、固定金利と変動金利の大きく2つに分けることができます。
▼固定金利
借り入れ時の設定金利が全期間または一定期間変わらない
→約2%
▼変動金利(約8割が選択)
政策金利の動向に連動して適用される金利が定期的に見直される
→約0.75%
金利がない世界から金利がある世界に変わって、上がりつつあると考えられますか。
TBS報道局経済部 佐藤祥太デスク:
両方上がりつつありますよね。一番顕著なのは変動金利で、「政策金利」という言葉は馴染みがないかもしれませんが、これは日銀が決める一番短い期間の金利で、去年、ゼロ金利政策を解除してから、徐々に日銀が金利を引き上げています。
金融機関も住宅ローンを貸し出す側ですが、そこに手数料やリスク管理のお金を上乗せして、そこに連動する形で金利も上がっていって、いま約0.75%ぐらいになってるということです。
プロが試算 変動金利が上がるとローン返済額はいくら増える?
井上キャスター:
視聴者の皆さんの中にも固定金利・変動金利で頭を悩ませている方が多くいらっしゃると思います。
8割が変動金利を選んでいるということで、金額を具体的に算出していただきました。住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」の取締役・塩澤崇さんの試算です。
▼変動金利で借入額3500万円(返済期間35年)ローン返済額はどれだけ変わる?
・変動金利0.75%で借りた場合
⇒月返済額:約9万5000円 総返済額:約3980万円
・変動金利1.25%になった場合
⇒月返済額:約10万3000円 総返済額:約4320万円
月の返済が約8000円増えて、総返済額も350万円ほど増えることになります。
山形純菜キャスター:
頭がついていかないのですが、変動金利がこれからもっと上がっていくんじゃないかという不安を、皆さんは抱えているということですよね。
会社経営者・投資家 池澤摩耶さん:
最近の金利の上げ方や日本国債の売られ方はスピード感がありすぎるなというところがあって、そこになかなか考え方が付いていけない。
今月中にもう1回利上げをすることになってくると、もちろん実質賃金が上がれば、変動金利が上がってもいいんですよ。実質賃金が上がらないのに、金利が上がっていくから、こういった制度ができないと家が買えなくなってるわけです。なので、かなり苦しい状況だと思います。
「50年ローン」も登場…長期のメリット・デメリット
井上キャスター:
苦しい状況というのは、年収倍率からもわかります。
▼年収倍率(東京カンテイによると)
新築マンション平均価格(70㎡換算)÷平均年収(地域ごと)
→全国平均:約10倍 東京都:約17倍
このようになってくると買えませんよねということで、様々な商品が出てきています。
最近出てきているのが「50年ローン」です。
▼3500万円を固定金利2%で借りる
<35年ローンの場合>
⇒月額返済:約11万6000円 総返済額:約4870万円
<50年ローンの場合>
⇒月額返済額:約9万2000円 総返済額:約5540万円
TBS報道局経済部 佐藤デスク:
これは物の値段が上がっていく中で住宅の価格も非常に上がっていき、なかなか手が届かないとなったときに、借りる期間を伸ばすことで月々の支払いを抑えたいというニーズが出てきて、ここ数年で広がっている話です。
しかし、総返済額で見ると50年間、元本に対して利息がついていくわけですから、支払い額はかなり増えます。
あとは「80歳までに返済をしなければいけない」というルールを設けている金融機関が多いので、基本的には若い人たちじゃないと借りることができない。我々はもう借りられないということになります。
井上キャスター:
50年後をどう考えるかということもありますが、このような商品が出てくるのもこういう時代には仕方がない感じもします。
池澤摩耶さん:
年金でローンを払うことになりますよね。それぐらい長期で見なくてはいけないのですが、もちろんこれにはメリットとデメリットがあると思います。
メリットとしては月の返済額が少ない。もう1つは余剰資金があるならば、その分を運用で回せるというメリットは大きくある。そのうちインフレが進むなら、家の価格も上がるのでそこはいいと思います。
デメリットは家計にとってはかなり厳しい未来の請求書がやってくるという話ですから、ずっと50年間請求書が来るという。
政策金利0.5%→0.75%に引き上げ?「固定金利」「変動金利」はどうなる?
井上キャスター:
ではそのもとになる、金利はどう決まるのでしょうか。
TBS報道局経済部 佐藤デスク:
変動金利に関しては日銀の政策で決まるということで、いま政策金利は0.5%ですが、来週これを0.25%引き上げて0.75にするのが確実視されているため、変動金利はいずれかの形で上がっていきます。
長期金利は少し複雑ですが、物の値段が上がっていくだろうという予想と、高市政権が積極的な財政をすることによって金利が上がっていきます。長期金利も変動金利も上がっていく傾向にあります。
井上キャスター:
それは目先も考えてどちらも上がっていくと考えた方がいいですか。
TBS報道局経済部 佐藤デスク:
どちらも上がっていくと言って差し支えないと思います。
井上キャスター:
それを政府としてどうやって手当していきますか。住宅ローン減税という話も出てきていますが、どんなことが考えられますか。
池澤摩耶さん:
金利をここまで上げていくならば、円高に振れないとおかしいんですよ。
金利を上げます、円高に振れます、だからインフレが収まります、物価高が収まりますというのが教科書通りシナリオなのですが、今それが起こらない。
金利も上がって、円安に進んでいくという状況になるので、物価高をどうするかをきちんと考えないといけないと思います。
井上キャスター:
為替の部分もしっかり見ていくということですか。
池澤摩耶さん:
そうですね。必ず連携して動くものなので。
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<プロフィール>
池澤摩耶さん
会社経営者・投資家
元外資系投資銀行のトレーダー2児の母
佐藤祥太
TBS経済部デスク
「CROSS DIG」で金融を深掘りする番組のMC担当