イラン全土で2500人超死亡か 反政府デモ拡大、ネット遮断で情報統制? 記者に届いた音声データに違和感【Nスタ解説】
イラン各地で反政府デモをめぐる状況が悪化しています。これまでに2500人を超える人が死亡したとみられるほか、アメリカは軍事行動も辞さない姿勢を示していて、緊迫した状況が続いています。
【写真を見る】「独裁者に死を!」イランの激しい反政府デモの様子
反政府デモなぜ広がった? 背景に核開発めぐる“制裁”
井上貴博キャスター:
デモは2025年の12月28日、首都・テヘランで始まり、各地へ拡大しました。1月11日時点で、少なくとも67都市でデモが起きています。
アメリカに拠点を置く人権団体によると、▼拘束されている人は約1万8400人、▼死者は約2550人だということです。
一方、イラン独立系メディアによると、▼死者は約1万2000人、その多くは30歳未満の若者だとしています。
デモの拡大の背景にあるのが、核開発をめぐるイランへの制裁です。
「第2期トランプ政権」が経済制裁を強化したほか、2025年9月には国連の制裁が復活し、イランは経済的に大打撃を受けました。
影響が顕著に出たのが「通貨安」です。2025年末、イランの通貨「リアル」が暴落し、2年間で価値は約3分の1まで激減しました。
▼2024年1月6日:1ドル=約51万リアル
▼2026年1月6日:1ドル=約148万リアル
(ボンバスト・ドット・コムより)
こうして物価が高騰し、イラン国民が生活苦となったことが、デモ拡大の背景にあるといいます。
デモに立ち上がったのは…“支持基盤”だったはずの商店主ら
JNN中東支局長 増尾聡 記者:
今回のデモの特徴とも言えるのが、反政府デモに立ち上がったのが、バザールの商店主らだったという点です。
2025年末に通貨の価値が急落したことを受けて、バザールの主に輸入の電子機器を扱う商店主らが「これではやっていけない」と店を閉めてデモに出ました。
このバザールの商店主たちは、イランの中でも非常に重要なパートを占める人たちです。
さかのぼること1979年、かつての王政からイスラム制に移行するにあたって、革命が起きました。その際に、イスラム聖職者を支援していたのが、バザールの商店主たちでした。
それ以降、歴史的にバザールの商店主たちは保守派であり、今の体制の支持基盤でしたが、そうした人たちが今回デモの最前線に立ったというのが、一つ大きな特徴です。
これまでも経済を巡るデモはありましたが、デモが商店主から始まり、大学生や労働者といった、社会のいろいろな階層に行き渡って、多くの人たちがデモに参加しているというのは、極めて異例だと思います。
ネット遮断で情報統制? 記者に届いた音声データに違和感
井上キャスター:
イラン国内では情報統制も行われていて、1月8日、イラン全土でインターネットが遮断されました。
インターネット監視団体「ネットブロックス」によると、ネットの接続は、通常の1%程度になっているといいます。
これまでは、SNS上でデモの動画を多数確認することができましたが、ネットが遮断されて以降、見ることができません。
英・BBCによると、イランの国営メディアは抗議活動自体を否定しているということです。「人影のない通りの動画」を投稿するなどして、今のイラン国内の状況が、外部から見えにくい状況になっています。
JNN中東支局長 増尾聡 記者:
私は2025年末のデモが始まった直後から、イランに住む10人ほどの人たちとアプリ上でやり取りを続けていました。しかし、8日にインターネットが遮断されて以降、私たちも連絡を取ることができなくなりました。
ところが13日、イランで報道機関に所属するジャーナリストの1人から突如として返信がありました。その人は、「テヘラン在住の35歳男性とされる人物」の音声データを転送してきました。
テヘラン在住の男性(35)とされる人物の音声メッセージ
「通りは穏やかでデモは大幅に小さくなった。治安部隊の配備も今はない。トランプの脅しに不安を感じている。いまの一番の心配事は、今後不安定な状況が続いていくこと」
私はこのメッセージを受け取ってすぐに、ジャーナリストの男性に、「死者はどうなっているのか、今デモは起きていないのか、銃声などは聞いていないか」など細かい状況を質問しましたが、それに対する返信はなく、また不通の状態が続いています。
送られてきたメッセージが、今の政権が外に発信している「もうデモは落ち着いている」「アメリカが悪さをしている」というメッセージに酷似する内容だったことに、違和感を感じました。
そして重要なのは、私が10人ほどやり取りをしている中で、連絡がついたのは、このジャーナリストだけだという点です。それ以外の市民とは、一切接触することができない状況が続いています。
不安定化する国際情勢 アメリカの動きにイランは
「The HEADLINE」編集長 石田健さん:
今回は国内からのというところですが、国外に目を向けてみると、アメリカを中心にベネズエラ、グリーンランド、中東もそうですが、非常に世界情勢が不安定化しています。
そういった中で、このような動きがイランに何か影響を与えているのか気になります。
JNN中東支局長 増尾聡 記者:
イラン側としては、年始にあったアメリカのベネズエラに対する軍事作戦について、非常に影響を感じていると思います。やはりサプライズとして受け止められました。
イランの支持層としては、「今度は我々に矛先が向けられるのではないか」といった懸念・警戒が高い状況が続いていると思います。
井上キャスター:
こうした中、動きが注目されるのがアメリカです。トランプ大統領は11日、「殺されるべきではない人が殺されている。私達は非常に深刻にみている。米軍も検討中だ」と発言しています。
12日には、イランと取引している国からの輸入品に、25%の『二次関税』を課す意向をSNS上で示しています。(イランの主な取引国:中国・UAE・トルコ)
こうした動きについて、イランのアラグチ外相は12日、「我々は戦争を望んでいないが、完全に備えている」としていて、中東アルジャジーラのインタビューには、「脅迫や命令がなければ、核交渉のテーブルに着く用意がある」と答えています。
ただ、イランが核を手放すとはなかなか考えられず、どこまで本気なのかはわかりません。
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<プロフィール>
増尾 聡
JNN中東支局長
イランやイスラエル・パレスチナなど中東各地を取材
石田 健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説