米国産原油は「中東産」の代替になる?“輸入拡大案”に疑問の声も 高市総理が日米首脳会談へ “二転三転”発言・トランプ氏の出方は?【news23】
アメリカへと出発した高市総理は、中東情勢が焦点となる日米首脳会談に臨みます。日本政府は“アメリカ産原油の輸入拡大”を打ち出すことを検討していますが、その実現性などについては疑問視する声も出ています。
大部分のNATO加盟国“参加したくない” 日本はどうアメリカと向き合うか
アイルランドにキリスト教を伝えた聖人を称える日を祝うパーティー。
トランプ大統領
「きょうは一日中、アイルランド人と過ごした。本当はイラン人と過ごすべきだったが」
冗談を交え話すトランプ大統領でしたが、内心は穏やかではなかったかもしれません。
イランが事実上、封鎖しているホルムズ海峡への艦船の派遣をめぐり、 同盟国からの艦船の派遣を期待していたトランプ氏。
しかし、一夜明けて不満をあらわにしました。
トランプ大統領
「NATOはとても愚かな間違いを犯した。ずっと言ってきたように、NATOが我々の味方なのか疑問だった。これはテストだったんだ」
不満の理由は、NATO加盟国の大部分から「参加したくない」との連絡があったためです。
トランプ氏(SNSより)
「イランへの軍事作戦で大きな成果を収めたから、もはやNATOの支援を必要としない。日本や韓国の支援もだ」
この件でトランプ氏と電話で話したという共和党の重鎮議員は…
共和党・グラム上院議員
「これほど怒っているトランプ氏を私は知らない」
中東情勢が緊迫化する中、日本はどうアメリカと向き合うのか。
3月18日の参議院・予算委員会。
懸案となっているのが、事実上、封鎖されているホルムズ海峡への自衛隊派遣です。
立憲民主党・杉尾秀哉参院議員
「現在戦闘状態にあるペルシャ湾・ホルムズ海峡への派遣。困難じゃないかと」
「出来ないことは出来ないと伝えるべきではないかと思いますけど」
高市早苗総理
「日本の法律に従って、出来ることは出来るけど出来ないことは出来ない。それをしっかりとお伝えするつもりですし、先方もこれまでの経緯から、日本の法律よく御承知のはず」
レギュラーガソリンの小売価格の全国平均は過去最高に アラスカ産原油の輸入検討
ホルムズ海峡が事実上、封鎖されていることで原油の輸入が不安定になっている日本。
3月18日に発表されたレギュラーガソリン小売り価格の全国平均は、1リットルあたり190円80銭と過去最高を更新しました。
政府は、3月19日から新たな補助金を導入する予定です。ガソリンは小売り価格が170円を超える分には、全額補助する方針で、軽油・重油・灯油にも同額の補助が行われます。
こうした状況の中、政府はアメリカ産の原油の輸入を拡大することを検討していて、3月19日に予定されている日米首脳会談でアメリカ側に伝える方針です。
アラスカ州で生産された原油を輸入する案が有力で、アメリカ産の原油を日米共同で備蓄することも検討しているということです。
日本は原油の9割以上を中東からの輸入に頼っていますが、政府は原油の調達先を多角化させ、安定したエネルギー供給を確保したい考えです。
アラスカ産の原油は中東産の代わりになるか 「輸送・コスト面で未知数」
アラスカ産の原油は、中東産原油の代わりになるのでしょうか。
INPEXは、世界約20か国で石油や天然ガスの開発や生産などを行う会社。
喜入友浩キャスター
「こちらには、世界各国の原油が並んでいますが、産地によって成分が異なり、色も違います。ちなみに国産の原油もあります」
原油といっても様々なものが世界にはあります。
INPEX技術統括本部 サブサーフェス開発ユニット 櫻井里紗さん
「ここの2つはオーストラリア。こちら3つはUAE・アラブ首長国連邦の物になります」
喜入キャスター
「その2つだけでも大分濃さが違いますね。日本の地名の原油もありますが、かなり透明度が高いですね」
原油は、一般的には色が濃い方が粘りけが強い状態で、透明な方がサラサラで粘りけが弱い状態だということです。
この会社では、主に中東産の原油を開発。とりわけ中東産は品質が高いそうです。
高品質だとガソリンなどの製品にするための精製の手間やコストも低くなるといいます。
喜入キャスター
「アラスカ産の原油という情報は何かあったりしますか」
INPEX技術統括本部 サブサーフェス開発ユニット 櫻井里紗さん
「少し品質が落ちるような、中品質の物ではないかと推測している。ガソリンとか生活の用途には問題ないのかなと」
この会社では、アラスカ産の原油を扱ったことがなく“多くのことが未知数だ”としたうえで…
INPEX技術統括本部 サブサーフェス開発ユニット 櫻井里紗さん
「今まで中東から原油を輸入していた時は、船に乗せて確立した運搬で日本に運ばれてきたと思うが、アラスカからだと今までやったことがないので、輸送の新たな検討も必要だしコスト面においても未知だと思う」
ある石油元売り大手の関係者によると、日本国内の製油所は、これまで歴史的に中東産を蒸留しやすい仕様になっていますが、それ以外の国の原油には対応しづらい可能性があるといいます。
トランプ氏は3月18日夜、自身のSNSを更新。艦船の派遣に消極的な同盟国に対する不満を改めて記しました。
トランプ氏(SNSより)
「“イランというテロ国家”の残党を一掃し、海峡を利用している国々に(安全確保の)責任をとらせたら何が起きるのか。消極的な同盟国も一気に動き出すだろう」
発言が二転三転するトランプ氏。高市総理の“外交力”が問われる局面です。
“二転三転”するトランプ氏の発言 高市総理はどのように日米首脳会談に臨むのか
藤森祥平キャスター:
連日お伝えしているトランプ大統領の発言。中東地域に向けた各国からの艦船派遣について14日には、“期待を表明”していましたが、17日には、“もはや必要ない”と変わっています。
こうしたトランプ氏の発言がまた変わるのではないかなどと勘ぐる動きもある中で、どのような首脳会談になると注目していますか。
ワシントンDC支局長 涌井文晶 記者:
首脳会談の冒頭は、メディアに公開で行われるのではないかということで、今調整されています。一般的に首脳会談の冒頭撮影は、両首脳が短い発言をしたところで終わりということになるわけですが、トランプ大統領はそうではありません。
カメラがずっと残り、トランプ大統領が報道陣に「何か質問があるか」と聞き、時には何十分もトランプ大統領と報道陣のやり取り、さらには外国の首脳もやり取りをするということがあります。そのため、事実上、首脳会談が全てカメラの前で行われているというケースも少なくありません。
高市総理は、そういう環境で首脳会談に臨むということになります。そうなると、報道陣の質問やトランプ大統領がその場でどういう発言をするか、その場の流れで決まっていきます。
事務スタッフがいかに事前に準備を積み重ねても、その場のやり取りということになってしまうので、高市総理ご本人の対応能力や、その場での瞬発力が問われることになると見ています。
またトランプ大統領は、3月18日午後8時20分頃、「イランという“テロ国家”の残党を一掃し海峡を利用する国々に責任を取らせたら何が起きるのか。消極的な同盟国も一気に動き出すだろう」というSNS投稿をしましたが、ホワイトハウスのレビット報道官も「NATO各加盟国は貢献すべきだとトランプ大統領は考えている」と説明していました。やはり本音としては協力して、艦船を出してほしいということのようです。
小川彩佳キャスター:
どのような要求が首脳会談で出てくるのか、戦々恐々というところがあるとは思いますが、トランプ大統領の発言がコロコロ変わっているのは、果たして場当たり的なのか、予測不能を演出するような動きもあるのか、トランプ大統領の言葉の変遷をどのように見ていますか。
ワシントンDC支局長 涌井文晶 記者:
トランプ大統領は、ビジネスマン時代に交渉の技術に関する本を出しているぐらい、相手を振り回す交渉術には自信があるのだと思います。発言を変えることで、相手を揺さぶって自分に有利な条件を引き出そうという意図は、一定にあると思っています。
ただ、トランプ大統領の交渉術というのは、実は非常に短期的な視点で有利かどうかを考えているところがあり、長期的な戦略があるかと言われるとあまりそうは感じません。
例えば、この間もNATOに非常に厳しい攻撃をしています。また日本や韓国など同盟国の名前を挙げ、艦船の問題で「積極的でない」と非常に厳しく攻撃しているわけですが、これは各国の国民から見たら国民感情は悪化しますよね。
これは長期的に見たときに、アメリカの同盟国との関係を損なうと見られていますので、長期戦略があるかと言われるとあまりそうではないという感じもします。
アメリカメディアの中からも、関税をかけたり、ある種の脅しのような交渉で、コロコロ発言を変えることによって同盟国を振り回してきたので、今ホルムズ海峡で困っているから助けてくれと言ったって、すぐに来てくれないというのは当たり前じゃないかというような突き放した論調も見られます。
トランプ氏に“時間稼ぎ”通用する?
藤森キャスター:
野村さんは、日々中東情勢も配信などされていますが、どんなことをポイントとして気にしていますか。
Podcastプロデューサー 野村高文さん:
トランプ大統領は、国際関係をディール=取引のように捉える傾向が強いです。ディールということは、自分たちの都合と相手の都合をぶつけて均衡点を見いだしていくということがあります。
日本としては、とにかくホルムズ海峡の安全な航行が我が国にとっても不可欠だということ、そして一方でアメリカにとって日本の戦略的重要性が非常に高いことを改めて伝えるのが大事だなと思っています。お願いするだけではなくて、アメリカにとっても日本は重要なパートナーだということを改めて伝える機会だと思います。
トランプ大統領が交渉の場で白黒つけず無理な要求をされた時、例えば、少し曖昧にして回答するという戦略は有効なのでしょうか。
ワシントンDC支局長 涌井文晶 記者:
トランプ大統領は時間稼ぎだと判断すると、非常に圧力を強めてくることが予想されますので、そう思われないようにある程度満足してもらえる回答をする必要があります。一方で、日本はいろいろできないことがあると高市総理も言っています。そこの線を踏み越えるような回答をしてしまってはいけないということで、本当にギリギリまで判断し、オプションをいろいろ考えているのだと思います。
一方で、高市総理は他の外国首脳に比べて少し有利な点があります。通訳が挟まるため、他の英語圏の国のようにポンポンと会話しなくて良いのです。トランプ大統領の言葉が通訳されている間に、事前に用意したオプションをしっかりと吟味して回答することができるはずなので、有利に活かしていくということが重要だと思います。
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<プロフィール>
野村高文さん
Podcastプロデューサー
Podcast制作会社の代表
経営者への取材多数
外資系ファームでコンサルタントの経験も