餓えをしのぐため“魚釣りも” ホルムズ海峡周辺で足止めのタンカー乗組員が語る エネルギー施設に攻撃相次ぐ【news23】
イラン周辺では、依然として衝突が続いています。ホルムズ海峡周辺に取り残されたタンカーの乗組員が極度の緊張状態を語りました。
エネルギー施設も標的 応酬続く イラン報道官が死亡との報道も
勢いよく燃え上がる炎。イスラエルの攻撃の標的となったのは、イラン南部にある世界最大規模のガス田「サウスパース」と、その関連施設です。
対するイランも、即座に報復攻撃で応戦します。何かが打ち込まれ、光とともに煙が上がったのはイスラエルのハイファにある製油所。イラン側は、「弾道ミサイルで攻撃した」としています。
応酬の拡大が懸念されるエネルギー関連施設への攻撃。記者から、イスラエル軍のガス田への攻撃について問われたトランプ大統領は…
──(イスラエルの)ネタニヤフ首相とガス田への攻撃について話したか?
トランプ大統領(ワシントン・19日)
「そんなことはするなと伝えた。もう攻撃しないだろう。我々は良好で協力的な関係にある。時々望ましくないことをする時もあるが、その後は繰り返さない」
これを受け、イスラエルのネタニヤフ首相は…
イスラエル ネタニヤフ首相(19日)
「ガス田への攻撃はイスラエルの単独行動だった。トランプ大統領からの要請を受け、(ガス田への)さらなる攻撃は控えている」
それでも、イランへの攻撃の手は緩めていないようです。
イランメディアは20日、イラン革命防衛隊の報道官がアメリカとイスラエルの攻撃によって殺害されたと報じました。
魚を釣って飢えしのぐ 船内で2週間 ホルムズ海峡周辺で足止め
一方、極度の緊張状態を強いられ続けているのは、ホルムズ海峡周辺で足止めされているタンカーの乗組員です。
大量の原油を積んでいるとみられるタンカー。ペルシャ湾で2週間以上、足止めされている乗組員が切実な状況をSNSに投稿しました。
フィリピン人乗組員
「ホルムズ海峡近くで別のタンカーが爆撃を受けたと報告されました」
IMO=国際海事機関によると、船舶約2000隻と、乗組員約2万人がホルムズ海峡周辺で足止めされていて、命の危険にさらされているといいます。
フィリピン人乗組員
「我々はインドへ向かおうとしていますが、極度の緊張と恐怖を感じています。船外での作業は危険なため、許可されなくなりました」
備蓄された食料は底をつきかけ、今は魚を釣って、なんとかしのいでいるそうです。
また、日本関係の船舶も45隻が足止めされています。
イラン“報復攻撃”「目には目を」 イラン情勢の行方は
上村彩子キャスター:
今回の日米首脳会談。イラン側はどう受け止めているのでしょうか?
増尾 聡 中東支局長:
イラン国内では、今回の首脳会談への評価は一切報じられていません。この衝突が始まって以降、イランは日本だけではなく、アメリカの同盟国を名指しして非難することはありません。対立の矛先をあえてアメリカとイスラエルに絞っている印象です。
日本側の高市総理の発言は、イランにとってみれば想像の範囲内だったと考えられ、あえて言及する必要性はなかったとみられます。
喜入友浩キャスター:
こうしている間もホルムズ海峡の事実上の封鎖は続いていますが、イランがいつまで続けるのかも含め、イランの今後の出方をどうみていますか。
増尾 聡 中東支局長:
ホルムズ海峡の封鎖は基本的に続いているのですが、その一方で、パキスタンやトルコなど、特定の限られた国の船は通過ができるという動きが出ています。
イラン側は今回の衝突に関する各国の対応や評価を見極めつつ、通過を認める船を選別しているとみられます。「イラン寄りの国は便宜を図る」という政治的なメッセージとも読み取れます。
日本は伝統的にイランと友好関係にありますが、今回の首脳会談でもそうだったように、イランの対応を非難する立場を明確にしていますので、今後、日本の船舶の航行が認められる可能性は低いと思います。
そして戦闘の行方ですが、イスラエルがイランのガス田を攻撃するなど状況はさらにエスカレートしています。これに対し、イランも即座にカタールやイスラエルのエネルギー施設を標的に攻撃しました。
アメリカとイスラエルは、「イランの軍事力を大幅に削いでいる」と言っていますが、現状イランは「目には目を」という形でひるむ様子なく反撃しています。戦闘終結に向けた落としどころは見つかっていません。
終わらない応酬“泥沼化”懸念
上村キャスター:
アメリカ側は、出口戦略をどのように考えているのでしょうか。
涌井文晶 ワシントン支局長:
中々見えていないというのが現状です。イスラエルは長期戦も辞さないでイランの体制を徹底的に破壊したい考え方だと思います。一方でトランプ大統領の本音としては、「早く手を引きたい」と考えているはずです。泥沼化というシナリオを最も恐れています。
そのため、ミサイルで“中東の周辺国を攻撃する能力”や、“アメリカ軍基地を攻撃する能力”、“イランの核兵器開発能力”がなくなったというようなことをもって、アメリカは目的を達成したと言って近い将来一方的に勝利を宣言してアメリカが引き揚げるというシナリオがあるかもしれません。
ただ、それが本当に中東やイランの安定に繋がるのかは全く別問題です。アメリカが勝手に引き揚げてしまうというのは悪いシナリオになる可能性も十分にあります。
喜入キャスター:
仮に一方的な戦闘終結が宣言された場合、例えば、アメリカが日本に対して艦船の派遣など要求を突きつけてくる可能性はあるのでしょうか。
涌井文晶 ワシントン支局長:
戦闘が終わったとなれば、当然あると考えられます。アメリカは、「ホルムズ海峡の安定は、石油の輸入をしている日本や中国など、(中東に)石油を依存している国の責任であるべきだ」と主張していますので、戦闘が終わったとなれば、ますます日本に対して海上自衛隊の派遣などを求めてくることはあり得ると思います。
首脳会談で、日本は「協力する」という姿勢を示したわけですが、具体的な調整はこれからだと思われます。その中の調整が遅れるようなことがあれば、トランプ大統領からの圧力が高まるというシナリオは十分考えられます。
上村キャスター:
トランプ大統領は中間選挙の前に、今のうちにアメリカからの評価を上げたいという思惑がもちろんあると思います。アメリカ国内は依然としてイラン攻撃に反対の声の方が多いのでしょうか。
涌井文晶 ワシントン支局長:
今のところ世論調査でいうと、多くのものが「4割が賛成」「6割が反対」、保守系のFOXニュースでは半々ぐらいという感じです。
水準として聞くと、あまり低くない、それなりにあるなと感じるかもしれませんが、歴代のアメリカの対外介入の歴史から見ると、非常に低い水準です。
今後、ガソリン価格が上がり続けていくと、さらに支持率が落ちるということも考えられます。中間選挙を見据えて、トランプ大統領はなるべく早めに手を引きたいと考えているはずです。
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<プロフィール>
増尾 聡
JNN中東支局長
イランやイスラエル・パレスチナなど中東各地を取材