イラン攻撃「5日間延期」トランプ氏は市場を意識か イランは徹底抗戦で世界経済も“道連れ”の恐れ【Nスタ解説】
「ホルムズ海峡の封鎖を完全に解除しなければ、イランの発電所を攻撃する」としていたアメリカのトランプ大統領は23日、突如、攻撃を5日間延長すると表明しました。
イラン側との食い違いも明らかになっています。
【写真で見る】「イラン側から電話をしてきた」発電所攻撃の延期を表明したトランプ大統領
米・イラン 「協議」に食い違い
井上貴博キャスター:
アメリカのトランプ大統領の頭の中は、2026年の秋に予定される中間選挙から逆算して、誇れる結果が欲しい。ここは一つ、確実に言えそうです。
そのため、いろいろな情報を出しては二転三転しています。
もともとトランプ大統領は、3月22日の午前8時44分(日本時間)時点では、SNSに「48時間以内にホルムズ海峡を完全に開放しない場合、イランの発電所を攻撃し壊滅させる」と投稿していました。
発電所を攻撃するということは、市民生活に多大な影響を及ぼすため、今までとフェーズが変わってくるという脅しをかけました。
しかし23日の午後8時23分(日本時間)、タイムリミットまで12時間の段階で、トランプ大統領は「この2日間、アメリカとイランは非常に良い生産的な協議を行ってきた。(進行中の協議の成功を条件に)イランの発電所などへの攻撃は5日間延期する」とSNSに投稿したのです。
アメリカのニュースサイト・アクシオスは23日、「仲介国があり、アメリカとイランの協議を調整している。早ければ今週中にもパキスタンで行われる可能性がある」と説明していました。
一方で、イラン外務省の報道官は23日、「仲介国を通じてアメリカの要請を受けたが、交渉を行っていない」としています。
「協議を調整している」というアメリカに対し、「交渉を行っていない」とするイラン。
イランのガリバフ国会議長は、「偽情報で金融・原油市場を操作し、アメリカとイスラエルが陥っている泥沼から逃れようとしている」という見立てです。
もう一つ付け加えると、アメリカ側は交渉相手の名前を公にしていません。もし公にすると、イスラエルは今度、その人物を暗殺するのではないかという見方もできます。
トランプ大統領は“チキンレース”に折れたのか?
俳優・タレント 大和田美帆さん:
何が本当か、どなたが嘘をついているのか、どれを信じていいのかわかりません。今後、何がどうなっていくのかまったくわからないので心配ですし、不安です。誰が仕切っていくのでしょうか。
上智大学教授 前嶋和弘さん:
残念ながら今回、アメリカとイランが本当に交渉しているのかわかりません。
今アメリカでは、トランプ大統領が自分の鏡に向かって話しているXの投稿が流行っています。要するに、2人で話しているように見えても、それはトランプ大統領の脳内プランだという話です。
しかし、実際はそういうわけでもなさそうで、やはりトランプ大統領は何らかの形でイランにコンタクトを取ろうとしていると思います。
ただ、イラン側はそれを認めたらまずいわけです。なぜかというと、先日もアメリカとイランが交渉しているときにアメリカとイスラエルが裏切って攻めてきたので、また同じことになってしまいます。2025年6月の12日間戦争もそうでした。
イランにとっては、とりあえず「フェイクニュース」「嘘情報」だと言っておいたほうがいいのだと思います。
出水麻衣キャスター:
「交渉が進んでいるから期限を延ばした」というのは、チキンレースでトランプ大統領が折れたわけではない……という見立てですか?
上智大学教授 前嶋和弘さん:
いや、折れたように見えます。
要するに、アメリカが「めちゃくちゃなことをしてやるぞ」と言ったら、イランがそれ以上に「ホルムズ海峡を止めちゃうぞ」「中東のさまざまなアメリカ関係のところに撃つぞ」と言ってきたので、アメリカは「これじゃまずい」となったわけです。また原油価格が問題になりますし、株価もおかしくなると思ったので、少し延ばしたという形でしょう。
「TACO」(=トランプ・オールウェイズ・チキン・アウト)、つまり「トランプ大統領はいつも怯えて先延ばしにする」という言葉がありますが、このとおりになったようにも見えます。
明日ぐらいになるとイラン側の動きも出てきて、このあたりの詳細がわかってくるのではないかと思います。
「5日間延期」は市場を意識か
井上キャスター:
トランプ大統領が何に怯えているのかは明確で、やはり市場の動きです。
WTI原油先物価格(1バレルあたり)の推移をみていくと、アメリカ時間(以下同)で、2月27日には67ドル(終値)でした。
そこから戦闘状態に入り、3月20日には98ドル(終値)まで上がりました。
しかし、トランプ大統領が“攻撃5日間延期”と発信すると即座に反応し、3月23日には84ドル(一時)まで下がりました。
やはりトランプ大統領としては原油価格が上がると物価高になって「中間選挙に勝てない、これはまずい」ということになるため、ここは本当に注視しています。
それに連動してダウ平均株価は一時1100ドルあまりに急激に上昇し、トランプ大統領は「俺がやったから上がったんだ」という成果を中間選挙に持っていきたいわけです。
アメリカ国内の世論は、▼イランに対する軍事行動について「賛成」は40%、「反対」は53%となっています(クイニピアック大学世論調査より、調査期間3月6日~3月8日)。
上智大学教授 前嶋和弘さん:
補足すると、同じこのデータで、共和党支持者は85%が「賛成」です。民主党支持者で「賛成」は7%しかおらず、「反対」が89%なので、そもそもこのデータ自体がどうなのかという問題もあります。
ここからも、アメリカは未曾有の分断の中にあることがわかると思います。
世界経済も道連れ? 米圧力にイランは徹底抗戦
井上キャスター:
ホルムズ海峡についてもみていきます。
もともとイランはホルムズ海峡の封鎖をカードにしているようですが、「あなたたちにここを封鎖する権利はない」と、これ自体が国際法違反ではないかという向きがあります。
ただ、トランプ大統領がしていることも国際法違反に近く、どちらも同じだという見方ができるわけです。
また、アルジャジーラによるとイランは23日、アメリカと関連があるインフラ施設・淡水化プラントを攻撃すると警告しました。
砂漠地域は、淡水化プラントがなくなったらもう生活していけません。8日にはバーレーンで、イランのドローン攻撃で淡水化プラントが実際に破損しています。警告だけではなく、本当に攻撃する可能性があります。
もう一つイランが踏み込んだのが、アメリカがカーグ島を攻撃してくるのであれば、紅海の迂回ルートを止めようとしていることです。ここには親イラン武装組織であるフーシ派の活動拠点があります。
イランにそのような権限はあるのかというところもありますが、このあたりをどうカードとして使い交渉していくのでしょうか。
上智大学教授 前嶋和弘さん:
イランにとってみたら、これだけミサイル攻撃をされ、トップも変わりました。大変なので、最後はもう中東全体や、世界経済を道連れにしていくということでしょう。
イスラエル側が何をするかわからないところはありますが、イラン側は「この手を使えばアメリカが折れてくれる」と考えているのだと思います。
井上キャスター:
イランとしては引き延ばせば引き延ばすほどアメリカが疲弊していくので、有利な立場で交渉できるということでしょうか。
上智大学教授 前嶋和弘さん:
それもありますが、イランも疲弊します。
ただ、イランには手が山ほどあって、紅海や淡水化プラントの話については「こういうものもあったんだ」とみんな思っているでしょう。
最終的に地上決戦などになったら、だいたい核施設は山の中にあるので、イランも相当犠牲者が出ていますが、アメリカが入ってきたら多くの死者が出てきます。
こうなっていくと、アメリカの国内世論が大きいだろうと思います。経済とともにアメリカ人の犠牲者もこんなに出たということで、民主主義のアメリカの人々は、メディアを見ながら心が揺れていくわけです。
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<プロフィール>
前嶋和弘さん
上智大学教授
専門は現代アメリカ政治
中でも「メディア」「選挙」「連邦議会」の関係を研究
大和田美帆さん
俳優・タレント
音楽療法士・子供心理カウンセラーなどの資格を持つ
「一般社団法人 子どもが笑えば世界が笑う」代表 1児の母