スマホの位置情報はカンボジアに…「生きて帰ってきて」行方不明の息子へ向けた母親の悲痛の思い 大規模詐欺拠点での“恐怖支配”とは【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-04-09 14:20

JNNのカメラが撮影したカンボジアにある詐欺拠点。そこには日本人の名前や生年月日、銀行の預金額など、少なくとも40人分の個人情報が見つかりました。いま、こうした詐欺拠点に日本の若者が“かけ子”として巻き込まれている可能性があります。カンボジアで消息を絶ったとされる男子大学生。母親は「生きて帰ってきて」と悲痛な思いを訴えています。

【写真を見る】手錠などの拘束器具も多数…カンボジアの詐欺拠点内部の様子

「拘束されたと想像できた」少ない荷物で海外旅行にいった息子

Aさんの母親
「会話の途中から(メッセージに)既読がつかなくなって、そこから位置情報が移動したのでここから拘束されて連れて行かれたなと想像できた」

2025年の年末、カンボジアに入国後、行方が分からなくなったとされる福岡県に住む大学生のAさん。

家族には「友人と海外に行く」と伝え、当初の行き先は東アジアにある別の国でした。

Aさんの母親がJNNの取材に応じ、いきさつを証言しました。

Aさんの母親
「大きな荷物とかではなくて、本当に日帰りかなと思うような感じの荷物だった。行き先は最初から聞いていたが、『今日帰ってくるの?』というやりとりをしていたら『2泊3日だよ』と」

実は、Aさんと一緒に渡航した友人がSNS上で知り合った人物と数か月にわたって連絡を取り合っていて、その人物から海外旅行に誘われたというのです。

SNS上の人物
「会社の経費で(旅費を)支払う。現地で通訳の迎えがある」

別の国に友人と旅行に行っていたはずのAさん。ところが、スマホの位置情報はカンボジアを示していました。

「普通の旅行だよ」突然途絶えたメッセージ

Aさんの母親
「最初はちょっと意味が分からなくて、スマホだけ盗まれてカンボジアに行ったのかなとか思って、こちらからすぐにやりとりは開始しなかったが、息子とLINEをやりとりしていくなかでカンボジアにいることが分かったのでそれは危険だと思って」

心配する母親に、Aさんは…

【メッセージのやりとり】

「今日帰ってくるんだよね?今どこ?」
息子「カンボジアにいる。今日中には帰るよ」

「え?なんで?危なくない?」「何かあったら大使館に行って」
息子「普通の旅行だよ」

「いつ帰ってくるの?」

帰国する予定の日にAさんの位置情報は途絶え、メッセージに既読もつかなくなったということです。

母親は、息子がカンボジアで特殊詐欺グループに巻き込まれているのではないかと、不安を募らせます。

Aさんの母親
「長期化することで、本人の意思に反して“犯罪に加担させられる”可能性がある。そういった不安はある」

個人情報や拘束器具も カンボジアの詐欺拠点の内部には…

カンボジアにある詐欺拠点はどのような場所なのか。

記者
「高い壁を抜けると、中に詐欺拠点の建物がいくつも並んでいます」

内部に入ると…

記者
「日本語で書かれた詐欺電話のマニュアルとみられるものや、日本人の個人情報と思われるメモ書きなどが大量に残されています」

紙に書かれていたのは、日本人の名前や生年月日、銀行の預金額など。少なくとも40人分の個人情報が見つかりました。

さらに、別の建物には、かけ子らを監禁していたとみられる部屋もありました。

天井には「監視カメラ」が設置されています。手錠などの拘束器具も多数見つかりました。

詐欺拠点では、ノルマを達成できなければスタンガンで暴行を受けるなど、恐怖支配の実態が明らかになっています。

公開された部屋の壁には「家に帰りたい」という文字が残されていました。

福岡県警は2024年以降、カンボジアに渡航した県内の複数の男性が行方不明になっているとして、詐欺などの犯罪に巻き込まれた可能性があるとみて調べています。

タイでも行方不明多発 毎日のように行方不明者の救出要請

カンボジアに渡った若者が行方不明になるケースは、隣国のタイでも多発しています。

カンボジアとの国境に近いサケーオ県にあるNGO。

タイ当局とも連携しながら、詐欺拠点に連れて行かれるなどした人たちの救出を支援しています。

タイのNGO ポンナリット代表
「助けを求めてきた家族などからの相談について記録した書類。今年1月以降だけで500人~600人はいる」

ほぼ毎日のように寄せられる行方不明者の救出要請。その多くは、SNSや知人などを通じた“ウソの勧誘”“ニセの求人”にだまされた若者たちです。

ポンナリット代表
「(リクルート役の)車に乗ると脅され、時には銃を突きつけられ、携帯電話を取り上げられる。薬物を投与され、抵抗できない状態にされることもある」

詐欺拠点を仕切るのは多くが中国系の犯罪組織で、身代金を要求されるケースもあるといいます。

ポンナリット代表
「(詐欺)拠点から逃げようとすれば家族に身代金が要求されるが、身代金を支払っても解放されず別の拠点に売られることもある」 

この日、詐欺拠点で監禁されていた16歳のタイ人の少女が、NGOの支援で拠点を脱出したとの連絡が入りました。

ポンナリット代表
「若い女性だと(詐欺拠点で)売春を強要されたり、中国人のボスの愛人にさせられたりと危険」

“詐欺拠点”16歳少女が脱出「毎日泣いていた…」

少女は、国境地帯のジャングルを抜けてタイ側に渡ろうとしていました。

カンボジア側の協力者とも調整し、国境近くで少女を引き受けることに。

記者
「詐欺拠点から逃げてきた女性が、NGOの関係者に保護されています」

少女に目立った外傷などは確認されなかったものの、精神的なケアが必要な状態でした。

ポンナリット代表
「(彼女は)拠点から逃げた後、(詐欺組織の)メンバーに追いかけられた」

詐欺拠点から脱出した少女(16)
「1人で逃げているときはすごく怖かった」

少女は、友人に紹介された中国人の男から飲食店の仕事を持ちかけられましたが、実際に連れて行かれたのは、特殊詐欺の拠点だったといいます。

詐欺拠点から脱出した少女(16)
「レストランで働く仕事だと思っていた。詐欺に関わるようなことはしたくなかった。家に帰りたくて毎日泣いていた

NGOはタイ当局に通報し、少女は人身取引の被害者として認定されるための調査を受けました。

自力で脱出し家族と再会 「何度も暴行された」

一方、詐欺拠点を自力で抜け出し、NGOに一時保護されていた18歳の男性を、この日、両親が迎えにきました。

母親
「もう二度と行かないで。どうして電話をくれなかったの?」

詐欺拠点を抜け出した男性(18)
「携帯電話をとられて…」

母親
「息子が行方不明になり、食事もできず眠れなかった」

詐欺拠点を抜け出した男性(18)
「『携帯のロックを解除しろ』と言われ何度も暴行された。家族に再会できてとても嬉しい」

特殊詐欺の拠点をめぐっては、国際的な圧力を受けたカンボジア当局が、「詐欺組織を根絶する」として取り締まりを強化。

2025年以降、約200か所の詐欺拠点を閉鎖し、日本人を含む外国人ら3万人以上を国外退去させたほか、20万人以上の外国人が自主的に国を出たとしています。

“逮捕”も覚悟 息子を探す母「生き延びて帰って」

一方、福岡県の大学生Aさんは、約3か月が経ったいまも連絡が取れない状態で、有力な手がかりも得られていません。

Aさんの母親は3月、同じように行方不明になった人がほかにもいるのではないかと考え、家族同士の情報共有などを目的に「行方不明者家族会」というSNSアカウントを立ち上げました。

息子が現地当局に拘束され、日本で逮捕される可能性も覚悟しています。

それでも“とにかく帰ってきてほしい”と待ち望んでいます。

Aさんの母親
「同じような被害に遭ってほしくないという(思い)があるし、実際にどれくらいの方が同じような状況に遭っているのか(国は)明らかにしていただきたい」
「もし(息子が)犯罪に加担させられているのなら、きちんとそこは取り調べていただきたい。どうにか生き延びて帰ってきてもらえればと願っている」

特殊詐欺グループに巻き込まれないためには?

小川彩佳キャスター:
日本を離れたきり、3か月も連絡がつかないことへの母親の底知れぬ不安を感じます。

カンボジアの詐欺拠点では、意図せず犯罪に巻き込まれてしまう日本人の若者も少なくないということです。

トラウデン直美さん:
詐欺の被害に遭うだけではなく、詐欺グループ側に巻き込まれるケースが身近に迫ってきていることが本当に恐ろしいです。

若いとき、20代のときは「世界を見たい」「新しい人と出会いたい」と、外国へ行くことに対するハードルが下がっていると思います。

そういうこと自体は悪いことではないと思うので、(家族などに)誰に会うか、どこに行くかを伝えて、連絡を取り続けておく。そして、危ないことになりそうな場合にどう回避するかが大事だと感じます。

詐欺グループは様々な手法で勧誘してくるはずなので、危険を回避する方法を事前に話し合っておくことはとても大事です。

また、詐欺の被害に巻き込まれないために、携帯電話を国際電話がかからないような設定にしておくことも必要だと思います。

==========
<プロフィール>
トラウデン直美さん
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞
趣味は乗馬・園芸・旅行

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