中東依存から脱却?多角化が進む日本の「ナフサ」調達の現状、民間企業が模索する「脱ナフサ」【Nスタ解説】
中東情勢の影響で石油製品の供給が不安定な状況が続く中、食品メーカーではパッケージの変更の動きが相次いでいます。
【写真を見る】ポテトチップス以外にも“パッケージなど”を変更するものが…
原油からわずか10%しか取れない「ナフサ」とは
井上貴博キャスター:
そもそもナフサとは何なのでしょうか。大元になるのは「原油」。原油を加熱して精製した石油製品の1つです。
原油を加熱して蒸発させた温度によって出てくるものが変わってきます。
重いものから、重油、軽油、灯油、ガソリン・ナフサ、石油ガスとなります。
原油を精製する沸点の違いで、黒っぽい重油から不純物などが取り除かれ「ナフサ」はガソリンに似た透明な液体となります。
ナフサは液体で、原油の中でわずか10%しか取れないという貴重な物となっています。
そのナフサを元にして、さまざまなものが作られています。
▼プラスチック:自動車部品、電子部品
▼塗料・溶剤:自動車・鉄道用、パッケージ
▼合成繊維:衣料、毛布
▼合成ゴム:タイヤ、医療用手袋
▼洗剤原料:シャンプー、化粧品 など
中東依存から脱却?多角化が進む日本のナフサ調達の現状
井上キャスター:
ナフサが「日本にどのくらいあるのか」が焦点です。
経済産業省による「日本の原油調達状況」を見ますと、2025年は中東に依存していましたが、政府が調達先の多角化に努め、大きく変化しています。
▼2025年実績:
全体の90%以上を中東に頼っていました。
▼2026年4月調達分:
ホルムズ海峡を通れなくなったため、中東からの調達量が激減。米国、その他が少しありますが、大半を備蓄(国家備蓄と民間備蓄を合わせたもの)の放出で補充。
▼2026年5月調達分:
ホルムズ海峡を通らない他の中東から賄えるものが急増。また、外交努力によって米国からの調達分を約4倍増加。その他も増やしました。それでも足りない分は備蓄放出で補充。
▼2026年6月調達分:
ホルムズ海峡を通らない中東、米国からの調達を増加。足りない分は備蓄放出で補充。
6月分も備蓄で補充とありますが、高市総理は5月12日の会見で「新たに国家備蓄の放出はしない」と話しました。つまり、海外から調達してくる部分の多角化が、より進んでいるということが言えます。
民間企業「今後どうなるか不安」政府「量は足りている」
井上キャスター:
政府の説明通り「量は足りている」。一方で、民間企業からすると今後どうなるかが分からず、在庫を積み増しておこうと考えるのも自然だと思います。
高市総理は「原油・ナフサ由来の化学製品の供給は、年を越えて継続できる」としており、政府は「業界に対して、前年同月比同量を基本とした調達を行うよう要請する」ということです。
しかし、エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表によりますと「ナフサは幅広い分野で使われている。調達が不安定で将来的な不安が募り、あらゆる業界がナフサ関連製品の在庫を多めに確保し始めている」と話しています。
政府の説明が間違いということでは全くない。しかし、今の漠然とした安心感を与える説明から、もう少し細分化した説明が必要なのではと個人的に思います。
「The HEADLINE」編集長 石田健さん:
政府も多角化を非常に頑張っているな、民間企業も努力をしているなと思います。
そのうえで、何が問題として残るかといった時に、我々の生きている社会は、エネルギーや電気などが生活の根幹を支えています。それを中東や米国など他国や他地域に依存せざるを得ない状況です。
そこに対して、細かい民間企業の努力によってカバーするのではなく、この状況を大局で見たときにどうするのかを、政府からのメッセージなり、我々が話していくべきところですよね。
おそらく5年、10年経ったときに、エネルギーの在り方が大きく変わるだろうと思います。その時に日本は常に「供給されるのか」という不安に踊らされてしまいます。
常時、単なる受け手側として存在しなくてはいけないのか。それとも、新しいエネルギーなどインフラを作る側に回り主導的な立場に立てるのか。ここはあまり議論されてない重要なポイントだと思いますね。
“調達不安”の企業努力、各社が模索する「脱ナフサ」
井上貴博キャスター:
ナフサ不足と言われているなかで、民間企業はどのような努力をしているのでしょうか。
▼ローソン
コーヒーカップの蓋をプラスチック製のものから紙製にする。
→年間127トン削減の見込み
▼イオントップバリュ
“8月31日までは値上げしない宣言”をしており、
・プラスチックの使用量削減のため、トレーを廃止。
・産地変更(イタリア→トルコなど)して仕入れを工夫
▼カルビー
ポテトチップスなど14商品を白黒のパッケージにする。
白黒パッケージに変更することに、消費者からは「レア感はありますね。買っちゃうかもしれない(30代夫婦)」「食べた時の食感とか味が想像しにくいかも(20代女性)」などの声が寄せられています。
一方で、全部の企業が“削減”などの方向に舵を切るということでもありません。
▼日清食品ホールディングス
商品パッケージ(変更等)決定しているものはない。
→パッケージ印刷に関しての調達は、特に問題がないことを確認。
▼森永乳業
今後様々な形で対応を検討していく。
1つの企業が“削減”などの方向に舵を切ったからといって、別にそうではない企業もあります。我々情報を受け取る側も、冷静に見ていかないといけないのかなと思いますね。
「The HEADLINE」編集長 石田健さん:
パニックにならずに受け取ることが大事です。また、こういう問題が出てきたときに、政府が、我々に対して「経済安保の細かい話は分からないでしょう。だから僕らがうまく決めとくよ」ということではなく、「日本の安全保障あるいは経済安保はどういう方向に進んでいくべきかを議論していきましょう」というオープンな議論が求められています。
しかし、細かいことは政府が決めていく、企業は企業で努力をしていく。それでいいやと我々も思っていませんか?もっと大きい話から考えましょうと1つ強調しておきたいです。
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<プロフィール>
石田健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説