京都・南丹市男児殺害 “養父”安達被告を起訴、事件をめぐる「SNSのデマ」“過激なほど拡散”する仕組みとどう向き合うか【Nスタ解説】
京都府南丹市で、小学生の息子を殺害した容疑などで逮捕されていた父親が28日、起訴されました。逮捕からおよそ1か月半。いま地元の人たちはこの事件とどう向き合っているのか、取材しました。
【写真を見る】1000万回以上“拡散”されたSNSのデマ投稿
事件をめぐる「SNSのデマ」 1000万回超の“拡散”も
高柳光希キャスター:
今回、取材を受けてくれた安達結希さんのクラスメイトは、「悔しい気持ち、悲しい気持ちがある中で、学校全体で前に向かって頑張って進んでいる」と話していました。
そんな中、まずSNSとの向き合い方について見ていきます。
今回の事件で、デマの投稿が多数確認されました。
例えば、「中国人に殺された」というデマ投稿は1101万回、「17歳の少年が事件に関係している」というデマ投稿は2613万回表示されていました。(28日正午時点)
さらに、デマ投稿によって実際に業務に影響が出ているところもありました。
南丹市役所の担当者によると、「南丹市にある動物など捕獲個体の処分をする施設で男の子が殺された」というデマを流されていると、4月11日に職員が気づきました。
4月13日ごろから2週間で30数件の電話があったといいます。1件15分~30分くらいで、非通知や名前を言わない人もいて、日常業務に支障が出たということです。
さらにSNSでは、安達優季被告が死体遺棄の疑いで逮捕された4月16日を境に、「養父」「継父」「義父」を含む投稿数が、一気に6029件と急増しました。
中にはこういったコメントもありました。
「もう可哀想すぎる。マジでシングルマザーは安易に再婚するな」
「ようやく犯人が見つかったが、同時に子連れ再婚の闇が浮き彫りに…」
「養父」というもの自体を攻撃するような投稿も相次いだといいます。もちろん「養父」自体が悪いわけではありません。
“夫婦相談士”で日本家族問題相談連盟の岡野あつこ理事長によると、「シングルマザーの子連れ再婚をひとくくりに批判する風潮は危険。“新しい父親”による子への虐待や加害のケースがあるのも事実だが、親子関係の距離感を丁寧に築き、うまくいっている家庭も多い」ということです。
「何が正しいかわからない」 “過激なほど拡散”するSNSの仕組みとどう向き合うか
TBS報道局「Nスタ」 長田ゆりディレクター:
今回の事件は、結希さんの行方不明の期間が長かったです。
地元の方に「どこから聞いた話ですか?」と聞くと、「友達から聞いたんだっけ。テレビの情報だっけ。ネットだっけ」と、情報源を覚えていないことがたくさんありました。
私は取材者として、関係者から遠い話は一切、放送に出さないということを心がけました。
当時、地元住民でさえも、「何が正しくて何が正しくないのかがわからなくて本当に怖かった」と話されていました。改めて事実をしっかりと伝えることの大切さを認識しました。
高柳光希キャスター:
地元の人だからこそ、いろんな情報が錯綜している渦中に置かれているので、大変な思いだと思いますが、やはり自分の心の中でフィルターをしっかり持って情報を精査して欲しいですね。
井上貴博キャスター:
「不安が不安を呼ぶ」というのは往々にしてあると思いますが、個人的に、誰もが発信できる点においてSNSはすごく素晴らしいツールだと思います。
その一方で、人間は誰しも結論を求めたがるし、数ある情報の中からストーリーを作りたくなってしまう。なので、今回の事件では「養父だから」という言葉によってあらぬ方向に行ってしまうリスクがありました。
しかし、だからといってSNSがダメかというと、私はそうは思いません。
テレビ報道でも、やりすぎることや偏ることは往々にしてあるので、情報発信する際も情報を受け取る際も、自分自身が常に気をつけなければいけないというのは感じています。
教育事業家 岸谷蘭丸さん:
SNSのこうした投稿は、X(旧:Twitter)のアルゴリズムが変わってからは加速する一方だと思います。
「中国人がどう」や「17歳の未成年がどう」などといったすごくセンセーショナルなことを言えば言うほど拡散されて、それが人に届くシステムが変わらない以上は、惑わせてくるような情報は広がる一方だと思います。
これをどうやって受け取るかですが、やはりそのような投稿を見るとびっくりしてしまうし、「そうなのかも」と思うと人に伝えたくなってしまいますが、それを安易にやらないという一人ひとりの受け止め方が大事だとも思いました。
同時に、1か月間どこの局でもずっとこの話題を報道し続けて、進展もないのに何か言い続けたことに意味があったのかというと、それもどうかなと思う。
そのため、オールドメディアだとかニューメディアだとか、そういうところではなくて、情報の受け取り方に対する全員のリテラシーや思いやりが一番重要なんじゃないかと思いますね。
「日常に戻った」風景の裏で…いまも続く子どもたちの“不安”と“メンタルケア”
高柳光希キャスター:
もう一つポイントとしているのは、子どもたちのメンタルについてです。取材を行うなかで、様々な声を聞きました。
小学1年生の子どもを持つ親
「事件以来、子どもは1人になるのが怖くなっている。10分ぐらいなら留守番できていたけど、今はたとえ短い時間でも1人でいるのが怖いみたいです」
中学1年生の子どもを持つ親
「いまだに子どもながらに不安な部分はあると思う。通学路に結希くんの遺体発見現場があるので、どうしても事件を思い出す」
我々も取材をさせてもらった人たちの声を聞いて、どれだけの情報を提供すればいいのか本当に悩むところではありましたが、ひとまず実直に丁寧にお伝えすることが非常に大事だと思いました。そして、適切な量で報道することが何よりも必要なんだなということを感じました。
長田さんはこのような中で、どのように地元住民の方と向き合い、取材をしていましたか。
長田ゆり:
現在の南丹市にはメディアの姿はほとんどありませんでした。その風景を見ると、「南丹市はもう日常に戻った」という印象を持たれる方も多いと思いますが、取材をしてみると、これだけの影響が皆さんの心の中に残ってるということを改めて実感しました。
SNSは見たくなくても検索しなくても情報が出てきます。それが現地の小学生の携帯の中でも起きている中で、事件から時間が経つにつれて、メンタルケアの重要度はさらに増しているのかなと感じました。
井上貴博キャスター:
当然、大人以上に子どもは繊細なので、アルゴリズムで情報がどんどん出てくる中で、意識して情報を取りに行くときと、意識して情報から離れるときは、大人がある程度向き合ってあげないといけないのかなと思います。
岸谷蘭丸さん:
むしろ大人の方がSNSに慣れていないというパターンも往々にしてあると思います。
大人・子ども関係なく全員が協力して、情報を取りに行くときと情報から離れるときを区別するべきだと思います。むしろ、子どもから教わりながらやっていくくらいでもいいのかなとも思ったりします。
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<プロフィール>
長田ゆり
TBS報道局「Nスタ」ディレクター
京都・南丹市の現場で継続取材を行う
岸谷蘭丸さん
教育事業家
ボッコーニ大学在学中
海外大受験や英語試験対策の会社を経営