「国家の命運」どうなる?日本の防衛政策の道筋“安保3文書” 改定前倒しのワケ【Nスタ解説】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-06-05 20:21

政府が前倒しで改定するとしている日本の防衛政策の道筋とされる安全保障関連の3文書。日本を取り巻く安全保障環境が劇的に変化する中、どんな中身となるのでしょうか。

【写真で見る】“安保3文書”改定前倒しのワケ

“安保3文書”1年前倒し 背景に“新しい戦い方”への移行 

高柳光希キャスター:
日本を取り巻く安全保障環境が変化をしていく中で、年内の改定に向けて検討が進められているのが、「安保3文書」です。

【国家安全保障戦略】
外交・防衛の基本方針

【国家防衛戦略】
防衛力強化の目標を設定

【防衛力整備計画】
装備品の調達量や予算

これが一体となって「安保3文書」となるのですが、いわば安全保障に対するロードマップのようなものです。

一般的に予算に関わるものに関しては、5年のサイクルで新しい計画にアップデートされます。これに伴い3つの文書がセットで部分的な微修正や見直しが行われるのが実態です。

前回の改定が岸田政権下の2022年の12月、予定通りいけば次回は2027年の改定となりますが、高市政権では2026年に1年前倒しをして改定することを目指しています。

なぜ1年前倒しを目指しているのでしょうか。

TBS報道局政治部 防衛省キャップ 渡部将伍記者 :
背景にあるのはロシアのウクライナ侵攻だと思います。世界の紛争の中で“新しい戦い方”への急速な移行です。

例えばドローンなどの無人機は、現行の安全保障戦略の3文書では対処がまだまだ薄く、世界の紛争のあり方が変わっている中で、この新しい戦い方に対応するためには早急な対応が必要ということで、今回は前倒しでの改定となります。

特に「無人機の活用」と「紛争の長期化」に日本としてどのように向かっていくのかというのが一つの要素だと思います。

高柳キャスター:
高市政権の中でも岐路に立たされているということですね。

無人機「導入するのであれば、逆に減らす部分も考えるべき」

国際情報誌「フォーサイト」元編集長 堤伸輔さん:
国家安全保障戦略は外交防衛の基本方針を決めるものですが、今回の自民党の提言案を見てみると、その外交部分の書きぶりが非常に薄いのではないかと思います。

「積極的な外交の展開」という項目では、いわば安保能力の強化支援みたいなものについて、拡大すると謳われていますが、本来の外交の活用についてはほとんど述べられていません。

それから、「ドローンなどの無人機」は一番ポイントになるところだと思いますが、実はロシアでさえ、今ウクライナのドローンを駆使した戦いについて行けていません。特にここ数か月、ウクライナが少しずつロシアに占領された地域を取り戻す中、ドローンを駆使した戦術においてロシア側は後れを取っています。

それに日本がどうやって追いついていくのかという問題があり、「多様なドローンの導入を大胆かつ迅速に推し進めるべき」と書いてありますが、ここで言いたいのは、ドローンに大きな予算を使って入れるのであれば、逆に減らす部分も考えなければいけないと思います。

日比麻音子キャスター:
従来のものが、この変わりゆく世界情勢に合わせて必要なのかどうなのか。ただ防衛費等を増やすだけではなく、今までのものを検証して減らすということも、見直しに必要だということですよね。

堤伸輔さん:
新しく必要になるものがあるとすれば、それによって時代遅れになっている装備もあり得るわけです。そういうものをきちんと見直して進めていかないと結局予算が膨らむだけです。

アメリカの要求に沿うためには、予算が膨らむ方が政府としてはいいのかもしれませんが、それは結果的に将来の増税や赤字国債の発行に繋がる可能性があります。そう考えると、国民にとっては安保能力が高まる安心感が大事である一方で、今の状況の中で負担が増えることはただ黙って見ているわけにはいかないと思います。

中国の無人機“3倍増” 自衛隊はどう対応すべき?

高柳キャスター:
ドローンなどの無人機に関して日本がどのような脅威にさらされているのか見ていきます。

九州の南に連なる南西諸島周辺では、中国の無人機が2024年度で30回確認(推定含む)されています。前年比で3倍以上に増加しているということです。

▼日本の対応
・自衛隊の戦闘機24時間監視
・無人機が来た際は戦闘機が緊急発進し対応

「無人機」と「24時間の監視・緊急発進し対応」を比較すると、やはり莫大な人員や費用などが変わってくるということです。

防衛省キャップ 渡部将伍記者 :
これは防衛省から公表されてる数字というだけで、実際はこれ以上だということは間違いありません。防衛省の中からは警戒監視のあり方について、「非常に費用対効果が悪い」という意見がかなりあります。

高柳キャスター:
ただ新たな戦略を実現するとなると、自ずと焦点となってくるのが防衛費についてです。自民党の提言案では防衛費について、「主体的な判断のもとで5年以内に防衛力を改革するための予算確保」とし、具体的な額については明記されていません。

防衛省キャップ 渡部将伍記者 :
これまでは、GDP比等が書かれていましたが、今回は明言されていません。ただ一方で、防衛費の増額が念頭にあることは間違いないと思います。

具体的な数字が出てこない理由は、今高市政権が進めようとしている消費減税のマインドと逆行する意見があることから、自民党の幹部の中でもかなり意見が割れたため、こういった非常に慎重な書きぶりになったのだと思います。

ただ、この厳しい安全保障環境について政府の中では「今の状況は100年に1度の状況」という意見もあります。

この状況が果たして国民に伝わっているのか、メディア側も考えなければいけないところでもありますが、そういったギャップを埋めるということも考えなければいけません。また、受け取り手側もある程度、関心を持つことは必要だと思います。

日比キャスター:
国民の安全や安心できる生活を考えると、十分な防衛力はもちろん、その手前の丁寧な説明、そして国民の納得こそ安心に繋がりますよね。

堤伸輔さん:
予算についても、今回の提言案では、NATO諸国や韓国の数字を挙げて日本のことは具体的な数字を言わずにいわば匂わせている状況です。

この段階から逃げるのは、将来的な議論の出発点になりづらいので、考えているのであれば示すべきだと思います。

逆に気になるのは、あたかもすぐ有事になるような有事色を打ち出していることです。国民に冷静な議論を求めるのであれば、議論の文書があまりに有事色を出しすぎたものになってしまうと、議論がゆがんだ方向に行ったり、行き過ぎを生むこともあり得るので、そこは気をつけて議論を進めてほしいなと思います。

日比キャスター:
戦うためではなく、守るためのものですからね。

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<プロフィール>

渡部将伍
TBS報道局 政治部 防衛省キャップ
マイブームは「十割そば」アレンジレシピ

堤伸輔さん
国際情報誌「フォーサイト」元編集長
BSーTBS「報道1930」ニュース解説

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