「網走監獄和牛」で更生を目指す北海道・網走刑務所の受刑者たち 拘禁刑導入から1年 牛の命と向き合う姿に密着【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2026-06-06 16:37

「網走監獄和牛」で更生 拘禁刑導入から1年

北海道・網走市にある「二見ヶ岡農場」。牛の世話をしているのは、畜産農家ではありません。罪を犯した受刑者たちです。

【写真で見る】牛の命と向き合う受刑者の姿 「大事にしないと」考えに変化も

子牛を慣れない手つきで固定するのは40代の鈴木受刑者(仮名)。

鈴木受刑者(仮名)
大麻の栽培で捕まりました」

──今回は?
「同じです」

大麻取締法違反の罪に2度問われ、今回が2度目の刑務所です。

鈴木受刑者(仮名) 
「自分まだ3日目なんですよね。どれくらいか分かってなかった。いきなりやった。足腰もきますし糞尿もある。臭いもありますし、全然何が何か分からない

畜産はもちろん初めて。戸惑うことばかりです。

先輩受刑者
「手が空いていてやることがなかったら、やっちゃっていいから」

鈴木受刑者(仮名)
「はい」

先輩の受刑者に教わりながら、作業を学んでいきます。

受刑者たちが育てた牛は、ブランド牛「網走監獄和牛」として地元の焼肉店などで提供。A5ランクの評価も相次いでいます。

「息子を大事にしなきゃ」牛の赤ちゃんと息子を重ね合わせる受刑者

2025年6月から国は、以前よりも受刑者の社会復帰を重視した「拘禁刑」を導入。網走刑務所が運営するこの農場では、14人の受刑者が寮で生活をし、牛の世話や農作業を通じて、命の大切さや、社会性を学んでいます。

この日は、膀胱炎にかかった牛に、薬の投与をするためのサポートを任されました。

刑務官
「足踏まれんなよ」

何度か試みますが、うまく縄をかけられません。見かねた先輩受刑者が縄をかけます。

鈴木受刑者(仮名)
全く分からない。これは分からないです」

先輩受刑者の作業をじっと見つめ、覚えようと必死です。

刑務官
「はい、いいよ。離れていいよ」

無事、牛への薬の投与が終わりました。動物を相手に苦戦する鈴木受刑者ですが、こちらの牛が気になっていました。妊娠中の牛です。

鈴木受刑者(仮名)
「(出産の)経験がまだないから、どんなもんなんだろうっていう好奇心と、死んじゃったりするときとかもあるらしい。それに対するドキドキですね」

5日後の朝、誰もいない牛舎で、牛の赤ちゃんが産まれました。

──子牛が産まれたときは?

鈴木受刑者(仮名)
「思っているより感動しました。生まれたなって。純粋にかわいいなって思ったし、自分の子どもが生まれたときのこととか考えました。思い出しました
息子を大事にしなきゃいけないなって強く考えるようになりましたね」

牛の赤ちゃんと自らの子どもを、重ね合わせます。

育てた牛の出荷に「命の大切さ考える」

これから、最後の作業に立ち会います。育てた牛の出荷です。

鈴木受刑者(仮名)
「(肉は)好きなんですけど、こうやって携わって生きているところを見てるから、大事にしないと

牛の世話を始めてから2か月。鈴木受刑者の考えに変化も見られます。

鈴木受刑者(仮名)
「それでちょっとずつ、ナイス。それでちょっとずつ短くしていく」

最近配属された受刑者に、縄での牛の固定の仕方を教えています。教えられる立場から、教える立場になりました。

鈴木受刑者(仮名)
「最初よりは、こうやってなついてくる子もいるし、かわいいなって思うようにはなってきましたね。ちゃんと世話しないといけないなという気持ちは出てきました」
「大事にしてやんないとなとか、命の大切さみたいなのはちょっと考える」
「これ(牛の育成)が自分の内面に活かされるのか俺も考えながらやってます

“命”について「真剣に考え、多くを学び、更生の糧としたい」と綴る受刑者

看守部長は、この取り組みの意義を訴えます。

荻野誠己 看守部長
「拘禁刑については、全国どこの刑務所も手探りの状況がまだ実際ある。(受刑者に)考えさせる機会が増えた」
「生き物を扱う作業の中で、他者への思いやり、何か犯罪を犯そうとしたときにブレーキになると思う」
感謝の心、他者を思いやる心を育んでいくために有益な作業だと思います」

他者への思いやり。鈴木受刑者は“命”についてこう綴ります。

「人間の勝手な都合で短い生涯を運命づけてしまうことへの後ろめたさを忘れず、命について真剣に考え、命から多くを学び、更生の糧としたい」

「甘すぎるのでは」との反対意見も 拘禁刑導入から1年

上村彩子キャスター:
拘禁刑については、「甘すぎるのではないか」という反対意見も多くあります。

ただ、鈴木受刑者(仮名)の作文の内容や、牛を撫でているときの優しい手つきを見ると、更生を期待したくなります。

喜入友浩キャスター:
再犯率がなかなか下がらないなか、(拘禁刑導入への)方針転換が行われました。

新たな被害者を生まないという目的の一つに対して、(拘禁刑という)取り組みが本当に効果的なのか、あるいは何が足りなかったのか、こうした部分については、いずれきちんとした評価が必要だと思います。

上村彩子キャスター:
拘禁刑導入の結果が出るにはまだまだ時間がかかります。ただ、作業で得られる自主性や協調性は、社会復帰後にも活かされると思います。

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