「ダメって法律ない」「“罪悪感”はない」宗教法人ブローカーが語る売買の実態…国は“信仰”を悪用したマネロン・脱税などに警戒 取引広がる背景は?【news23】
インターネット上で密かに売買されている全国各地のお寺や神社。国は、こうした宗教法人の売買が脱税などに繋がりかねないとして警戒を強めています。しかし、私たちが接触したブローカーは「規制は無理だ」などとカメラの前で断言しました。
【写真を見る】「中国人が多い」宗教法人ブローカーに聞いた売買の様子
宗教法人売買 税優遇のため?狙われる寺・神社
「このサイトは非公開サイトです」「札幌市 6000万円 」
「宗教法人を新規に作れる権利 1500万円」
画面に並ぶ、日本全国の寺や神社の名前に、何千万円もの取引額。中には億単位のものも…
「岐阜県中津川市 土地・建物付き 2億円」
「リニア新幹線で駅ができるので観光地化」
このサイトでは寺や神社、新興宗教など、150もの宗教法人が売買されていました。
宗教法人は、信仰の自由の観点などから、お布施やお守りの販売などの収入も、土地・建物などの財産も基本非課税で、年間の収入が8000万円までなら収支計算書の義務もないなど、税制面で手厚く優遇されています。
いま、それを目当てにした売買が問題に。
ブローカー「売ったらダメって法律ない」宗教法人売買の実態
実態はどうなっているのか。サイトを運営する男性が取材に応じました。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「もう跡継ぎがいないから売りたい、処分して金に換えたいという人。あとひとつは借金の“カタ”。(寺が)借金が返せなくなって、宗教法人を売らされた人」
大阪で宗教法人のブローカーをしているという山本氏。買い手の思惑について、こう話します。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「ここに来る、ほとんどの人は宗教やりたいとは思ってない。
買い手のメリットはいろいろある。相続で使いたいとか、脱税・節税に使いたいとか。どういう目的かは聞きますね。露骨に『脱税』と言われたら売れない」
所得や違法行為で得た金銭も、いったんお布施として宗教法人に入れてしまえば実態が追えなくなり、非課税になるなど、悪用すれば脱税やマネーロンダリングもできてしまう実態があります。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「『売ったらあかんで』と言う人が多かった。『捕まるで』と言われた。でも『売ったらダメ』と法律がないんでね」
取引はすべて現金、領収書も発行しないといいます。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「現金を広げて買い手が帰った後に、(売り手と)お金を分ける」
そして、宗教法人を求めるのは日本人だけではないといいます。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「中国人が多い。霊園を扱っているから。安いから6000万で買って、『全部ブルドーザーでつぶしていいか』と」
山本氏は買い手には「信仰のためであること」を確認し、建物の適正な維持管理や住職を置くことなどを念押しするといいます。
突然寺が更地に…「やられた」元檀家は困惑
実際に、サイトに掲載されていた場所を訪ねてみると…
元檀家(92)
「ここにお寺が建っていたわけや。いま立っている所に」
──今まさに立ってるところに?
「裏の突き当たりが墓やった」
この男性は、ここにあった寺の「元檀家」。約6年前、300軒ほどいた檀家に無断で寺の土地を宗教法人ごと売却されたのだといいます。
元檀家(92)
「ある日突然行ったら、お寺をつぶしていた。つぶしとるなと思っていたら、1か月したら墓も全部(移動していた)。また1か月したら道抜いて、建て売りをやっとんねん。これはやられたなと思った」
さらに、母親の墓石も勝手に移動され、その場所には建売住宅が並んでいます。男性はその後、移転先から墓を撤去。母親の骨壺は自宅で供養していると言います。
ブローカーの山本氏によると、この寺は最終的にはブローカーを介さず、当時の寺の所有者と不動産業者が直接取引。購入後すぐに不動産業者が本堂などを取り壊し、敷地の一部に小さな礼拝施設が設置されたと言います。
こうした事例を背景に、山本氏は、自らの立場をこう正当化します。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「我々ブローカーは責任を持つんです。『本堂つぶしたらあかんよ』と当然言うわけですね」
寺はJNNの取材に対し、現在は、不動産業者から別の宗教法人に権利が移り、本山から紹介された住職によって適切に運営されていると答えています。
「不正利用教えて」国の調査に驚き
宗教法人の売買については、国も問題視し、対策に乗り出しています。
愛知県愛西市にある、550年の歴史を持つ大法寺。6月、ある書類が送られてきました。
その送り主は文化庁。内容は「宗教法人の売買に関するアンケート」。
「宗教法人が売買されているのを聞いたことがあるか」「売買を持ちかけられたか」という質問が…
これが全国の宗教法人に、ランダムに送られているということです。
大法寺 長谷雄蓮華住職
「(兼務している)寺を買いたいという方が3回くらいありまして。毎回お断りしたんですけれども、買いたいとアプローチされたことはある」
さらには…
大法寺 長谷雄蓮華住職
「『法人格の不正利用と思われることがあったら教えてください』『後からヒアリングすることがあります』と、(国が)ここまでするんだなとビックリしました」
しかし住職は、国内の仏教の現状を考えると、売りに出すこと自体を一概に否定できないと話します。
大法寺 長谷雄蓮華住職
「お寺の数というのは、本来あるべき姿の3倍といわれている。今後、維持が難しかったら、たとえば売買でなくとも統合や廃寺というのはあってしかるべき」
国の調査にウソ「規制は無理」
そしてブローカーの山本氏のもとにも、このアンケートは届いていました。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「『看板やサイトを見たことがあるか』は『いいえ』ですね。『あったら教えてください』とは、私のことやないかと」
──めっちゃウソじゃないですか
「めちゃウソですよ。ウソ書いても問題ない。罰せられないから」
実は山本氏、自らも宗教法人を運営していますが、文字を印刷した紙を本尊として壁に貼り付けているだけです。
──罪悪感はない?
「ないですね。どんな目的か言ってからしか売らないので」
文化庁の担当者はJNNの取材に対し、アンケートや聞き取り調査をもとに、今後「過去に責任者が頻繁に代わった約30の法人」を対象に、ヒアリングを行うと明らかにしました。
宗教法人ブローカー 山本隆雄氏
「(売買の)規制は無理やと思いますよ。区別がつかない。まともにやっている宗教法人と、いい加減な宗教法人では」
国が警鐘鳴らすも…取引広がる背景
上村彩子キャスター:
もちろん正式に手続きをされているところも多いとは思うのですが、悪用すれば、脱税やマネーロンダリングもできてしまうということから、国もこのように呼びかけを行っています。
「皆さんの支援がテロ組織に悪用されるかもしれません。テロ活動のための資金の調達、後方支援の提供、そしてテロリストへの勧誘を行った事例が多数報告されている」と警鐘を鳴らしています。
宗教法人売買のブローカーによる取引が広がっている背景には、どのようなことが考えられますか?
矢野司 記者:
宗教法人の運営は、檀家が年々減少しているということもあり、非常に大変で、中には借金に苦しんでいる宗教団体もあります。
他にも、後継者やなり手不足によって活動ができない宗教法人が増えているのが実態です。
このような法人格こそあれど、事実上活動していない寺や神社が増えていて、文化庁の調査によると2024年12月時点で5019法人に上ります。
これは全国の宗教法人の約3%に相当します。こういうところに目をつけたビジネスが増えてきているのも事実です。
喜入友浩キャスター:
活動実態がある意味曖昧な宗教法人でも、税の優遇などを受けられるということですか?
矢野司 記者:
たとえ活動自体が曖昧でも、税の優遇を受けることはできます。信仰はあくまで心の問題というところもあって、信者などがいれば、なかなか国も見極めることが難しいという現状です。
だからこそ、宗教法人ブローカーの山本氏は「規制は無理だ。区別がつかない」と強気の姿勢をとっています。
実情として活動実態が曖昧な宗教法人も存在しているので、そのあたりの基準も含めて、今後、国の対策も必要になってきます。
========
<プロフィール>
矢野司
CBCテレビ記者
戦後80年企画で日系アメリカ人の野球場再建を取材