時速500キロ「リニア中央新幹線」静岡県知事の着工容認で前進も「環境破壊」と「建設コスト」の懸念で行く先は…?【サンデーモーニング】
止まっていたリニア計画が大きく動き出しました。リニア沿線の7都県で唯一着工していなかった静岡県の鈴木知事が「着工を容認する」と表明したのです。
夢の超特急の実現は私たちの未来に何を残すのでしょうか。
リニア中央新幹線 品川・名古屋間が40分に 抱える課題とは
新幹線で、東京・品川から名古屋まで1時間30分かかるところが40分に、大阪まで2時間20分かかるところが1時間ほどに短縮できるというリニア中央新幹線。
強力な磁石を使った「超電導」技術により車体を10cm浮かせて走ります。
運転士は乗務せず、別の指令室から制御する「自動運転」システムを採用していて、最高時速は500㎞です。
この異次元のスピードを活かすには直線的に走る必要があるため、南アルプスや中央アルプスの山々を一直線に貫いて線路を作ることになりました。
その結果、品川・名古屋間の9割近くはトンネルになるのです。
そして、この構造ゆえにリニア計画は『環境への影響』と『建設コスト』という2つの課題を抱えています。
工事により62万人に影響? 大井川の水量「毎秒最大2トン減少」の試算も
南アルプスを貫くトンネルは、最も深いところで山の表面から1400mを掘り進めます。
その際、山が蓄えている地下水がトンネルの中へと流れ出てしまうことによって、地表の川を流れる水の量が減ることが懸念されているんです。
JR東海の試算でもトンネルの真上にある山の地下水位が「最大300m」低下し、その山を源流とする大井川の水量が「毎秒最大2トン減少する」とされました。
その影響を受けるのが、10の自治体が集まった大井川流域です。
こちらでは、慢性的な水不足を抱えていて、川の水が減れば62万人の飲料水や生活用水に影響が出るほか、日本一を誇る茶畑などの産業を直撃すると県側は懸念していました。
これに対しJR東海は、トンネルに流れ出た地下水をポンプで大井川に戻すといった対策や、川の水に影響が出た場合は補償することなどを提示し、今回、静岡工区でトンネル工事を始めることに、県側の同意を取り付けたのです。
膨らむリニア建設費 3兆円返済への現実味は…
もう1つの懸念である「建設コスト」をめぐっては、当初「5.5兆円」とされていたのが、山岳トンネルの難しい工事や物価高の影響で「11兆円規模」へと倍増しています。
JR東海は、国から「財政投融資」として3兆円を借り入れていて、新幹線や将来のリニアの運賃収入で返済することになっています。
しかし、元国鉄職員で鉄道政策に詳しい⻘山学院大学の福井義高教授は、「今後、物価高などの影響で総工費はさらに2兆円程度上振れする可能性もあり、人口が減少していく中で現在の新幹線の客がリニアに移るだけでは旅客運賃の大幅な増収も見込めず、国から借りた3兆円の返済は簡単ではない」と指摘。
「JR東海の想定が甘くないか、国は債権者として厳しく見極めるべきだ」としています。
国交省は、リニアの開通によって巨大な経済圏がつながる効果を強調。
品川・名古屋間の開通だけでも「10兆円の経済効果がある」と掲げています。
ただ、そもそも当初は2027年とされていた開業予定も、2036年以降へとずれこむ中、想定通りの効果を得られるのでしょうか。