近年効率的な暮らしを過ごすために重視されるようになった「タイパ」、つまり「タイムパフォーマンス」。
では、実際にはどのような行動をして時間を生み、なににその時間を当てているのでしょうか。
その現状を、セイコーグループが2017年から実施している生活者に時間についての意識や実態を探るアンケート調査からまとめた『セイコー時間白書2023』から紐解いていきましょう。
生活の中でタイパを意識する人は約9割!?
今回の調査の結果、タイパを意識するという人の割合は約9割にも及ぶということが判明しました。
では、どのような時間にタイパを意識するのか、生まれた時間の使い方について見ていきましょう。
タイパを意識する時間
タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する時間についての質問には、全体の87.4%がタイパを重視する時間が「ある」と回答。
具体的には「睡眠」が39.3%、「料理」は37.0%、「掃除」と「買い物」がそれぞれ34.2%と上位に挙げられました。
これをカテゴリー別に見ると、「日常(食事・睡眠など)」が61.2%、「家事・育児」に55.0%、「趣味・コンテンツ消費」が47.8%と高くなっていました。
逆に「仕事」は29.7%と最も低くなっています。
タイパ重視で生まれた時間の使い方
タイパを重視する時間があると答えた人に、タイパを重視して生まれた時間で何をするのか聞きました。
これには上位から、「睡眠」の時間にするが54.4%、「動画視聴」に充てるが40.1%、「家族とのコミュニケーション」をはかるが33.1%という結果になりました。
「睡眠」はタイパを重視する時間でも1位でした。
睡眠のタイパを意識するだけでなく、そこで生まれた時間も睡眠に充てたいようです。
また、自由回答からは、「睡眠のタイパを高める」ための工夫も寄せられました。
単純に睡眠時間を削るだけではなく、睡眠時間の確保や睡眠の質のアップに努めることで、他のタスクの効率やパフォーマンスを高めることにもつながっているようです。
睡眠やリラックスで自分を癒やしたい
・やらないといけないことを早く終わらせて、お昼寝します(女性 40代)
・自分一人のゆったりとした時間(男性 40代)
・プライベートの充実。睡眠時間の確保(男性 60代)
自分磨きの時間に充てたい
・料理をする時間を手短に済ませ、空いた時間で自己研鑽(男性 20代)
・今までやっていなかったことに挑戦(女性 30代)
・取得したい資格の勉強があるので時間を割いています(男性 30代)
精神的な余裕やゆとりを持ちたい
・ゆっくりと過ごしたり趣味に使ったり、とにかく心に余裕を持たせるために使っている(女性 30代)
・自分の趣味や体づくりに充て、プライベートを充実(女性 40代)
・体の休息や花鳥風月を感じ取り、精神的な余裕を持てた(男性 60代)
家族や友人との時間に充てたい
・子供との触れ合いの時間に充てている(女性 20代)
・ゆっくりランチに行ったり、時間を気にしないでおしゃべりを楽しんだりしている(女性 50代)
・離れている家族との時間やボランティアに使いたい(女性 60代)
タイパ向上のために利用するツール
「タイパを重視する時間がある」と回答された1,049人に、タイパを高めるために利用しているツールについての質問をしました。
すると、69.1%が何らかのツールやライフハックを活用していることが判明。
「冷凍食品 」(23.6%)や「オンライン決済」(22.9%)を利用する人が多くなっています。
家事や買い物などさまざまな場面でツールやライフハックを活用してタイパを高める動きが見られます。
年代による違いも出ており、10代は「SNSの情報アカウント」を使う人が多く、30代と50代は「食洗機」を活用する割合が高くなっています。
タイパ重視の行動とはどんな行動?
ここからは、いわゆる「タイパを重視している」とうのはどのような行動となるのかを見ていきましょう。
タイパ重視行動の実態
コンテンツ消費のシーンで、タイムパフォーマンスを高めるためにどんな行動が取られているか、詳しく見てみました。
「ほかのタスクと並行して「ながら見」をすることがある」、「調べ物をするときにまとめサイトを活用する」という回答はそれぞれ6割を超えており、多くの人が実践している事が分かります。
「本を読んだり映画を観たりする前に結末を調べる」であったり「曲のイントロを飛ばす」といった時間を早送りする行為の実践率は、それよりも低くなっています。
いわゆるネタバレをチェックしてから見るという人は、年代別に見ても40代以下なら全体の3分の1ほど。
曲はイントロを飛ばして聞くというのは、10代・20代で多くなっている傾向にありますが、それでも半数以上の人はしていないという結果になりました。
しかし、最近はイントロを短い曲というのも増えているので、そもそも飛ばす必要もなくなっているのかもしれません。
タイパを重視する理由
「タイパを重視する」と回答した人には重視する目的についての質問もしています。
この質問の上位回答として、57.4%の「効率よく情報を得たいから」、57.3%の「無駄なことに時間を割きたくないから」が。
年代別の結果からは、10代・20代は「効率よく」、50代・60代は「無駄を省く」を重視するという傾向が見られました。
また、効率や無駄だけでなく、4割以上となる43.9%が「空いた時間・作った時間でやりたいことがあるから」と答えています。
この回答には年代別に見てもあまり差がありませんでした。
やりたいことをするためにタイパを重視することで時間を生む、という時間の使い方が実践されているようです。
「時短」や「時間の効率化」そのものを目的とするのではなく、効率化により生まれた時間を有効活用し、豊かな時間を過ごすためにタイパを重視する人も多いことが分かりました。
一方で「何もしない」時間の重要視も
「タイパ」を意識している人が多い現代社会という事が読み取れる回答が寄せられていますが、時間の浪費とも捉えられる「なにもしない時間」も重要とも考えられているようです。
「何もしない時間は必要」と考える人や約8割
時間の使い方に付いて、「何もしない時間」の必要性を問う質問には、78.4%が「必要だと思う」と回答を寄せました。
また、「タイパが最重要課題」か「タイパよりも大切なものがある」か、どちらの考えに近いかという質問には、48.2%が「タイパよりも大切なものがある」と回答。
「タイパが最重要課題」と答えた人は19.4%でした。
現代人はタイパを重要視してはいるものの、何事よりもタイパが大事で最優先とするわけではないようです。
時間効率を意識して行動することもあれば、時間を忘れて過ごすことも大切、そんなメリハリのある時間の使い方が志向されているようです。
「効率重視」「じっくり没入」のメリハリが見られる若い世代
次に時間の使い方や行動についての質問には、70.1%が「じっくりと考え事をするのが好き」、73.3%が「映画やドラマなどは飛ばさずに最初から最後まで観る」と回答しています。
これは、どの世代でも共通して高い回答結果でした。
一方で「時間を気にせずに没頭できる趣味がある」は10代が77.0%、「目的もなく雑談をするのが好き」も10代が72.0%と、全体に比べて10代が高くなっています。
また、「好きなお店に並ぶ時間は気にならない」は10代では70.0%と高いものの、年代が上がるとともに割合が下がっていっています。
効率を重視し、ながら見などのタイパ重視行動をとる若い世代ですが、好きなことにはとことん時間をかけるという傾向が見られました。
メリハリのある時間の使い方をしているようです。
調査概要
■実施時期:2023年4月27日(木)~5月8日(月)
■調査手法:インターネット調査
■調査委託先:マクロミル
■調査対象:全国の10代~60代の男女1,200人(男女各600人各年代別に男女各100人ずつ10代は15歳以上)
※構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合があります。金額は小数点第1位以下を四捨五入しています。