隙をつかれることで思いがけない失敗をしてしまうことを「足元をすくわれる」と表現することがあります。
ところがこの表現、厳密には誤った日本語となってしまうのだとか。
では、本来はどのような表現をすべきなのか、ここでは「足元をすくわれる」という表現について解説します。
正しくは「足をすくわれる」
「足元をすくわれる」の正しい表現は「足をすくわれる」とされます。
そこでここでは、「足をすくわれる」という表現について解説します。
「足をすくわれる」の意味や状況
「足をすくわれる」は、隙をつかることで失敗してしまうことや痛い目に合わされることを意味します。
競争相手などに出し抜かれ、逆転される様子を表す際にも用いられます。
この表現は、主語となる人物がしてやられた際に用いられます。
相手の隙をつく側の立場なら「足をすくう」と表現します。
「足をすくわれる」の用い方や例文
・模試の結果がよかったからといって気を抜いていると試験で足をすくわれるよ。
この一文では、油断が失敗を招くかもしれないという注意を表現しています。
テストの結果が良かったことで油断することで、試験の対策を疎かにすることで一番大事な本番で失敗する未来があることを暗に示しています。
・彼は人の足をすくって出世することしか考えていないので近寄らないといいだろう。
この文では、彼は競争相手の足を引っ張ったり出し抜くことで、自分の出世の糸口を探る人物という評価がされています。
「足元をすくわれる」が間違いとなる理由
では、なぜ「足をすくわれる」が正しく、「足元をすくわれる」が間違いとされるのか。
その理由について解説します。
「すくう」の意味
「足をすくわれる」の「すくう」というのは、下から上へと急に持ち上げることや下から持ち上げるようにして横に払うという動作のことです。
漢字表記は「掬う」となります。
匙で茶葉を掬うといった動作にも用いられる動詞となっています。
足元がすくわれてもピンチにならない??
「足をすくわれる」というのは、不意に足を掴まれて持ち上げれたり、急に足払いをされるという事になります。
突如そのようなことをされたら、当然ながら踏ん張れませんので転んでしまいます。
しかし、すくわれるのが足元だったらどうでしょうか。
足元というのは、足自体ではなく足の周りや足の下を指します。
ということは、足払いされるでもなく、足を持ち上げられるでもなく、相手は宙を蹴ったりするということになります。
つまり、転んでしまったりはしないということになります。
「足元をすくわれる」が正しい表現と考える人多い!
現在では、正しくないはずの表現の「足元をすくわれる」のほうが認識されているという調査結果もあります。
6割以上の人が「足元がすくわれる」を使うという調査も
平成28年度に文化庁が行った調査のなかで、卑劣なやり方で失敗させられることを「足をすくわれる」と「足下をすくわれる」どちらを用いるかという質問がありました。
この質問に対しては、「足下をすくわれる」を使うという回答が64.4%、「足をすくわれる」を使うという回答が26.3%という結果になりました。
この調査結果からは、圧倒的に「足下をすくわれる」の方が普及しているという事が明確に見て取れます。
ちなみに、年代別でもっとも「足下をすくわれる」の方を用いると回答したのは当時の20代。
74.6%の人が「足下をすくわれる」を使うという結果となっていました。
まとめ
現在では、「足元をすくわれる」という表現のほうが一般化していますが、本来は存在しない表現です。
「足をすくわれる」という正しい表現が、何らかの形で誤った伝わり方をして知られるようになりました。
「すくう」という動詞は、、下から上へと急に持ち上げることや下から持ち上げるようにして横に払うという動作のことなので、足自体をすくうことはあっても、足の周りとなる足元をすくうことはありません。
そのため、本来は誤った表現ということになるのです。