ツル科に分類される鳥のアネハヅルは、優れた飛行能力を持ちます。
なんと、世界の名峰と呼ばれるヒマラヤ山脈を飛び越えるともされ、時にその飛行高度は飛行機並みになるのだとか。
では、そんな高々度を飛べる鳥、アネハヅルとはどんな鳥なのでしょうか。
ここでは、アネハヅルの生息地や生態について解説します。
また、名前に込められた意味などについても見ていきましょう。
アネハヅルとは
まず、アネハヅルがどんな動物なのかをご紹介します。
アネハヅルの大きさや姿
アネハヅルの体の大きさは、平均して全長約90cmほど。
ツル科の中では比較的小さい種とされています。
中には100cmほどになる個体もいますが、それでも体重は平均して約2kg~3kgほどと軽量となります。
日本人にとってなじみ深いタンチョウが体長1.5m前後、体重8kgほどとされますので、そうとう小柄なことが分かります。
有識者の中では、アネハヅルがツル科の中で最小種とされることもあります。
その姿は、全身青みがかった淡い灰色となります。
頭部は黒く、眼の後ろに白色の房状の飾り毛があります。
喉の羽毛は胸を覆うほど長く、細く長い脚は黒くなっています。
ちなみに、オスとメスで色の違いはほとんどありません。
アネハヅルの生息域
アネハヅルは、チベット高原などの高所にある山地やその中にある草原に生息しています。
そして、インド亜大陸や北東アフリカや中東などで越冬します。
アネハヅルの生息域は、アジアから中東までのユーラシア大陸と、アフリカの一部地域なっています。
これらの地域の、平地から山地の平坦な草原で暮らしています。
また、東ヨーロッパや北アメリカなどでも繁殖することがあります。
アネハヅルはヒマラヤを飛び越える!!
アネハヅルは、上空約5,000m~8,000mほどの高度を飛べます。
そのため、標高数千m級の山々が連なるヒマラヤ山脈も飛び越えることができます。
この能力は、アネハヅルの特徴として特筆すべきものです。
ヒマラヤ山脈をも越えて生息地を移動する「渡り」を行う鳥はかなり希少とされており、現在確認されている鳥類の中でも特に高々度を飛ぶ能力に優れている種とされています。
アネハヅルがヒマラヤ山脈を越える理由
では、アネハヅルはなぜ非常に高い山の多いヒマラヤ山脈を越えるのか。
これは詳しくはわかっていません。
しかし、いくつかの仮説がありますので、その仮説の一つをご紹介します。
アネハヅルの祖先は、遥か昔より何代にもわたって餌の豊富なインドへの渡りを定期的に繰り返していたと考えられています。
その本能が残っているため、現在でもヒマラヤ山脈を越えた渡りを行っているというものです。
ヒマラヤ山脈がそこまで高くなかった時代、アネハヅルの祖先たちは悠々に山越えをすることができたと考えられています。
しかし、地殻変動によって高度が上がったことで、ヒマラヤ山脈は標高も数千mあり、容易に飛び越えることができない山脈に姿を変えました。
しかし、アネハヅルの祖先が渡りをやめることはありませんでした。
むしろ、酸素が薄い中でも渡りができる個体が生き残り、ヒマラヤ越えが可能なアネハヅルに進化したのではないかという仮説も立てられています。
ヒマラヤ越えはアネハヅルにとっても危険な旅
とはいえ、アネハヅルも余裕綽綽でヒマラヤ越えを行っているわけではありません。
ヒマラヤ越えの際には数百数千のアネハヅルがV字編隊を作って北から南へ越えていくのですが、途中で息絶えるアネハヅルもいるそうです。
上空の気温は氷点下約30℃~40℃の世界、酸素濃度は地上の3分の1となるうえに、台風並みの強風が吹き荒れる過酷な環境となっています。
無事にヒマラヤ山脈越えを達成したアネハヅルも、その羽はボロボロになってしまうそうです。
アネハヅルに関する豆知識
ここからは、アネハヅルに関する豆知識をいくつかご紹介します。
アネハヅルの名前の由来
アネハヅルという名前は、その美しい飾り羽から来ました。
目尻の付近から生えた美しい飾り羽を持つその姿が、「凛として美しい女性」を彷彿とさせたといいます。
そこから「姉羽鶴」と呼ばれるようになったとされています。
アネハヅルが日本にやってくることもある
ヒマラヤ山脈を越え、南西方面の中東や北東アフリカを目指すアネハヅルですが、稀に日本に渡来してきてしまう事もあるそうです。
チベット高原からみると日本は北東部ですので、真逆に進んできてしまったという事になりますね。
かつては、江戸時代にアネハヅルが日本国内で捕獲されたという記録が残っています。
その際に将軍へ献上された様子も絵図で記録されています。
また、この迷鳥のアネハヅル、現代の日本でも目撃されることがあるそうですよ。
まとめ
アネハヅルは、ツルの中でも小型で、ツルの最小種といわれることもあります。
しかし、その身体能力はすさまじく、他の鳥であれば越えることのできないヒマラヤ山脈を飛び越えて渡りを行います。
通常、チベット高原からヒマラヤ山脈を越えて中東や北東アフリカで越冬するのですが、稀になぜか日本に来てしまう個体もいるそうです。