文章の中では、「出来る」と「できる」の両方が用いられます。
両者は意味合いこそ同じですが、単純に漢字表記とひらがな表記というだけではなく使い分けが必要となります。
その使い分けは決して感覚的なものではありません。
名詞用法なのか、それとも動詞や副詞に該当するのかで使い分けがされるのです。
「出来る」と「できる」は違う言葉?それとも同じ?
「出来る」と「できる」は、違う言葉なのかといえばそんな事はありません。
両者は同じ意味です。
しかし、使う状況によって若干ニュアンスが変わってきます。
「出来る」とは
ここからは「出来る」の意味や成り立ちについて見ていきましょう。
「出来る」の意味
「出来る」の意味は複数あり、使用する状況で異なります。
今までなかった物事が新しく作られて存在する状態の「自然発生」や「出現」の意味で用いられることが多いです。
例:おでこににきびができる
また、作物や製品などが作られるという意味を持つ「生産」や、建物や組織の「完成・成立」を指すこともあります。
前者の例:うちの畑でできたトマトだから持って行って
後者の例:来月中にスーパーが駅前にできる
その他にも「可能性」の意味や、「材質」をあらわす際に用いられる言葉となっているため、前後の文脈に合わせて意味を考察する必要があります。
人格的に優れた人物を指す際にも「あの人はできた人物だ」という表現もありますので、「出来る(できる)」の意味は多岐にわたりますね!
「出来る」の起源
「出来る」の原型は「出来(でく)」というカ変動詞です。
この単語の連体形は[出来る(でくる)]となります。
この「出来る(でくる)」が、時代の変化に合わせて「出来る(できる)」に音が変化し、最終的にはひらがな表記の「できる」とに変化していきました。
「できる」とは
「出来」を派生で生じたのが「出来る」という言葉なので、そのひらがな表記となる「できる」は原則として「出来る」と同じ意味です。
ただし、使うシーンによっては使い分けが必要とさています。
漢字表記の「出来る」を使うべき場合
漢字表記の「出来」を使うべきシーンというのがあります。
以下の場合は、ひらがな表記をしないのが一般的となります。
名詞の場合は「出来」
名詞として用いる場合は、漢字表記「出来」を用います。
例えば「上出来」や「出来合」といった名詞です。
このように、1つの単語に組み込まれている場合には漢字表記を用います。
むしろ、これらの熟語を示す場合は無理にひらがな表記にはなりません。
「上でき」や「でき合」と表記するはない、ということになります。
その他にも「出来事」など1つのワードで、1つの意味を持つ言葉として使う場合は漢字表記の「出来」を使用します。
ひらがなで「できる」と書く場合
では、ひらがな表記「できる」を使うべきシーンとはどのような時なのでしょうか?
動詞・副詞として用いるなら「できる」
「できる」というひらがな表記は、動詞や副詞として用いる場合に使います。
例えば、何かに対して「○○することができる」など、動詞として用いる場合はひらがな表記とするのが一般的です。
「スポーツができる」「料理ができる」などでもそうですね。
前述の『出来るの意味』でまとめた、「自然発生」「出現」「生産」「完成・成立」「可能性」などは、いずれも動詞や副詞の意味なので「できる」とひらがな表記となります。
公文書でも動詞や副詞の場合「できる」と書く
公文書でもひらがなで表記するのが一般的です。
平成22年に出された、各行政機関作成の公用文における漢字使用に関する「常用漢字表」で、"ひらがな表記を使う"と定義しています。
そしてまた、昭和56年に出された旧来のものにも「できる」は記載されていました。
このひらがな表記による使い分けというのは、近年生まれたものではないようです。
漢字とひらがなで使い分けが必要な言葉
その他にも漢字とひらがなで使い分けが必要な言葉があります。
以下で、その代表的なものをご紹介していきます。
「頂く」と「いただく」
「頂く」は、食べることや飲むことの謙譲語として使う言葉です。
その他にも、もらうことに対する謙譲語としても使います。
「いただく」は、「ご覧いただく」や「お越しいただく」など尊敬語として使う言葉です。
主に補助動詞として使う言葉となるため、「頂く」と「いただく」には使い分けが必要となります。
「下さい」と「ください」
「下さい」は動詞として使う言葉で、「ください」は補助動詞として使う言葉です。
「もらう」という意味なら「下さい」を使うこともあるのですが、何かをしてもらう際などには「ください」を使うのが一般的となっています。
まとめ
「出来る」や「できる」は同じ意味の言葉なのですが、漢字やひらがなで使い分けが必要です。
名詞の場合は「出来」を、動詞なら「できる」となります。