何かを達成するためには周りから処理していくべきだということをあらわす「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」。
この言葉は、古代中国で生まれた言葉とされています。
ここでは、この「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」という言葉についてその意味や他の言い回し、由来や類義語について解説します。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」とは
まずは「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」という言葉の意味について見ていきましょう。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の意味
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」とは、目標を直接狙うのではなく、その周囲から打撃を与えたり味方に加えるという意味があります。
馬に乗ることができる大将は、装備も整っているので直接討とうと思っても容易ではありません。
しかし、大将の乗る馬ならどうでしょう。
馬にも防具が付けられることもありますが、人がまとうほどの整った装備ではありません。
それに、馬は体が傷付けられたり驚くことがあれば、暴れだし騎乗している人をふるい落とすこともあります。
そのため、高い位置にいて機動力もある馬自体が一種の弱点となっているのです。
このような状況を指しあらわしている言葉とされています。
多様な言い回しされることがあるので注意!
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」は、同じ意味でいくつかの言い回しがあります。
一例としては、「将を射んとする者はまず馬を射よ」「将を射んとすればまず馬を射よ」「将を射んとせばまず馬を射よ」「人を射んとせば先ず馬を射よ」などがあります。
これらの言葉のニュアンスは変わりません。
長く日常では用いない言葉も含んでいる言葉なので、様々な言い回しが生まれたのかもしれません。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の由来
では「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」はどのようにして生まれたのか、その成り立ちについて見ていきましょう。
由来は唐の時代の詩の一節
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」は、唐の時代の詩の一節を出典としているとされています。
8世紀の中国を治めていた唐王朝時代に、『詩聖』とまでいわれる杜甫という詩人がいました。
この杜甫の詩のひとつ「前出塞九首」が出典とされています。
その詩というのは、兵士にも家族があるのだから他国を攻める戦が減れば死ぬ人も減るのに、といった内容となっています。
そして、その詩の中には
『挽弓當挽強 用箭當用長 射人先射馬 擒賊先擒王』(弓を挽かば當に強きを挽くべし 箭を用ひなば當に長きを用ふべし 人を射らば先づ馬を射るべし 賊を擒にせんとすれば先づ王を擒にすべし)
という一節があります。
弓を引くならばより強い弓を引くべきだし、矢を射るならより長い矢を使うべきだ。人を入るならまずは馬を狙ったほうがよく、敵を捕虜にするならまずは王を捕らえて戦意や戦いの意義を無くす必要がある。という事が描写されています。
この詩の『射人先射馬』が変化して「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」となったとされているのです。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の類義語
最後に「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の類義語を見ていきましょう。
類義語としては、「外堀を埋める」「骨抜きにする」などがあげられます。
外堀を埋める
「外堀を埋める」とは、敵の城を攻める際にはまずは外堀から埋めるのが良いという兵法上の考えから来た言葉です。
目標達成するためには、周りの問題から解決していくべきという意味合いで用いられます。
骨抜きにする
「骨抜き」とは、魚の骨を身から取り除くことから来た言葉です。
どんな魚も、背骨を取り除けば身がだらんとしてしまいます。
この状況から、物事の中心となる部分が失われて空疎なものになることや肝心な中身がなくなることを意味するようになりました。
気概が失われて、腑抜けや軟弱と言われる状況になることも指します。
まとめ
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」は、大将を討つためには馬から討つべきであるという兵法的な考えから来た言葉です。
目標や目的を達成するためには、まず周辺のことから片付けていくべきだという意味で用いられます。
その由来は、詩聖といわれる杜甫という詩人の詩の一節から来たとされています。