お正月になると神社などで門松を見かけるようになりますが、松よりも竹のほうが主張が激しいのになぜ"門竹"ではないのだろうかと、ふと思ったことはありませんか?
実は、門松は竹は無く名前通り松の飾りからはじまったのです。
では、なぜ松を飾り立てるようになったのでしょうか。
その由来や、門松を片付ける時期、さらにはうんちくとして不思議なことに松が使われていない門松の存在まで解説します。
門松を飾る意味
門松を飾るのは、年神を迎える入れるためといわれています。
年神とは、日本神話に登場してくる穀物神で、子孫繁栄も司っていることから非常に重要な神として古来より崇められてきました。
この年神が迷わずに家に来てくれるように目印として飾られたのが門松になります。
松は非常に縁起の良い植物
古来から日本では、木には神が宿ると考えられていました。
この考えは多くの神社にあるご神木の存在からうかがい知ることができます。
特に「松」という名前は「祀る」につながる事から非常に縁起が良い樹木とされていました。
また、松は常緑の木である上に、荒れた土地でも成長することから、生命力を象徴する存在としても考えられていました。
門松の原型は平安時代に
門松は、平安時代の貴族の風習を原型にしていると考えられています。
当時、貴族の間では正月になるとまだ小さな松を引き抜くことで、長寿を願う「小松引き」という行事が行われていました。
この時に抜かれた松を飾ったのが門松の原型とされています。
竹も一緒に飾るようになったのは鎌倉時代
最初は松を飾っていただけでしたが、次第に松を含めた常緑樹を飾るようになります。
その中に竹も加えられるようになったのは、鎌倉時代のことと考えられています。
竹を斜めに切るようになったのは徳川家康がきっかけ
現在、門松の竹には2種類の切り方があります。
切り口が節に対して水平な「寸胴(ずんどう)」と斜めに切った「そぎ」です。
このそぎの切り方は、戦国武将の「徳川家康」がはじめたとされています。
若かりし日の徳川家康は、武田信玄に「三方ヶ原の戦い(みかたがはらのたたかい)」で大敗しました。
その時の敗北を決して忘れず、次こそ武田信玄を切る!という打倒武田信玄の念を込めて門松の先が槍の先に見えるそぎ切りにしたというのです。
この逸話が、そぎの切り口の門松のはじまりと考えられています。
西日本と東日本で違う「松の内」
松の内とは門松をはじめ、お正月飾りを出して祝う期間のことです。
松の内の期間が終わるとお正月飾りは片付けられます。
西日本
西日本では1月15日までとされています。
東日本
東日本、特に関東を周辺とした地域では松の内は1月7日までとされています。
これは、江戸時代に当時の幕府からお触れが出たことに端を発しています。
お正月飾りは油を多く含む松を使う門松や、稲や麻などの藁から作られる注連縄(しめなわ)など、可燃性が高いものが多いです。
江戸時代の建築物の多くは木造建築ですので、火災には非常に弱いです。
そこで、火災の原因となる可能性の高いお正月飾りを出している期間を短くして火災の可能性や延焼の被害を少しでも抑えようとしたのではないかと考えられています。
しかし、幕府の権威は西に行くほど弱くなり、関西まで来るとほとんど影響されなかったのか、松の内の期間は旧来通り15日のまま過ごされていました。
松を使わない門松
門松は名前通り、松を使ったお正月飾りです。
しかし、中には理由があって松を使わない門松もありますよ。
大國魂神社(東京都府中市)
武蔵国の行政府が置かれていた府中、この街には111年から建立がはじまった「大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)」があります。
この神社の主祭神とされている「大國魂大神(おおくにたまのおおみかみ)」は、かつて待ちぼうけを食らったことから「待つ」を連想させる松の木を嫌うようになったとされています。
そのため、大國魂神社には松の木は植えられていません。
そして、門松においても松は用いず、杉を使って門松のように飾り付けをしています。
姉崎神社(千葉県市原市)
千葉県市原市にある姉崎神社では、主祭神「支那斗弁命(しなとべのみこと)」が、弟もしくは夫といわれている「志那都比古尊(しなつひこのみこと)」の戻りが遅いことから「待つのは辛い」と嘆きました。
この嘆きから、姉崎神社周辺では「待つ」を連想させる「松」が忌避されるようになり、お正月飾りの門松には松ではなく榊を使います。
生田神社(兵庫県神戸市)
神戸の中でも屈指の歴史を持つ生田神社では、かつて周囲を松で囲われていました。
しかし、水害が起きた際にこの松が社殿を倒壊させてしまいました。
そのため松は不吉な存在、と生田神社では考えられるようになり門松も飾られていません。
生田神社では、杉を飾り立てる「杉盛り」という独自のお正月飾りが用意されています。
まとめ
お正月飾りの中でも非常に目立つ門松は、縁起がいい植物として珍重されていた松を飾り立てることで、豊穣の神・年神を迎え入れるために用意されていました。
しかし、縁起がいいとされる一方で、神社によっては主祭神が嫌っていたということなど理由があって松を用いず、杉や榊で作られる門松もあるそうです。
竹が主役のように見える正月飾りの門松ですが、かつては松が主役の飾り付けだった時代もしっかりあったようです。