日本株急騰なのに 個人は売り、買いの主役は海外勢【播摩卓士の経済コラム】

TBS NEWS DIG Powered by JNN
2024-01-27 14:00
日本株急騰なのに 個人は売り、買いの主役は海外勢【播摩卓士の経済コラム】

今年に入って日経平均株価が急上昇しました。年初の3万3288円が、一時は3万7000円に迫る場面もありました。日銀のマイナス金利解除見送りを機に、急騰局面はひとまず落ち着いたようですが、相場押し上げの主役は海外投資家でした。

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海外投資家は買い越し、個人は売り越し

東京証券取引所の投資部門別売買動向(株式)によれば、1月第2週は海外投資家が9557億円の買い越しと半年ぶりの高い水準になりました。翌第3週も3841億円と買い越しが続いています。

一方で、国内の個人投資家は、第2週が1兆695億円の売り越しと2013年11月以来、約10年ぶりの高い売り越し額を記録しました。翌第3週も1854億円の売り越しと、売り越しはなんと6週連続です。また年金の動向を反映するとされる信託銀行も、第2週が105億円、第3週が1915億円とこちらも売り越しが続いています。

全体として見れば、外国人投資家が買って相場を押し上げ、国内の個人や年金は利益を確定させようとせっせと売っているという構図が浮かび上がってきます。

新NISAも日本株より海外株?

今年は1月から新たな少額投資非課税制度=新NISAがスタートし、個人マネーが株式投資に向かうことが期待されていました。もちろん個々人としては、これを機に日本株投資を始めた方も大勢いらっしゃいます。日本経済新聞によれば、新NISAによる2024年の日本株への資金流入額は2兆円にのぼるとの試算もあるということです。しかし先に示したデータは、個人投資家セクター全体としては、そうした買いよりも、相場の急伸を受けた売りの力の方が遥かに大きかったことを示しています。

また、新NISAでも、日本株より「S&P500」や「オルカン(オール・カントリー)」と言った海外株がより選好されていることもうかがえます。財務省によれば、1月第2週(7~13日)の国内投資家による海外株投資は、7833億円の買い越しで、買越額は1年ぶりの高い水準でした。

こうして見ると、国内の投資家は、日本株の先行きには懐疑的で、むしろ海外株、とりわけアメリカ株の上昇に、より期待している姿がうかがえます。

海外勢は日本経済正常化を素直に評価

海外投資家主導による日本株の株価修正の動きは、昨年(2023)の春から夏にかけてもありました。日経平均株価が2万8000円から3万3000円前後にまで急騰した局面です。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株を推奨したことから「バフェット効果」などとも呼ばれました。

日本企業の「稼ぐ力」やガバナンスが大きく改善したこと、中国経済の低迷で世界の投資マネーが日本に振り替えられていることなど、日本株買いの理由は様々あげられています。

しかし当時、海外投資家が最も注目したのは、30年ぶりに日本の賃金が上がったことでした。物価が上がり賃金まで上がり始めたことを確認し、要はデフレが終わって名目成長が始まったことを確信したのです。日本経済正常化の予想です。企業の売上げも利益も名目ですし、もちろん株価も名目で動くのですから、理にかなっています。

すでに猛烈なインフレや金利急騰を経験した海外投資家から見れば、日銀がマイナス金利を解除して金利のある世界に戻ることなど当たり前で、日銀の緩和政策修正を決してネガティブには捉えません。金融緩和が修正されて為替が円高に傾けば、その分、買った日本株のドル建て価格は上がるのですから、むしろウエルカムなのです。

「株は下がるもの」という過去30年のトラウマ

これに対して、国内の個人投資家が日本株の上昇を素直に受け止められないのは、バブル期につけた最高値を30年以上更新できず、「株価はまたそのうち下がる」という過去の経験則が染みついていることが大きいように思います。

考えてみれば、中央銀行である日銀が、未だに「物価上昇は持続的安定的でない」という姿勢を崩さず、マイナス金利の解除にさえ踏み切れていないのです。そんな状況では、国内勢が海外投資家ほどは楽観的になれなくても当然かもしれません。

自国の株高に懐疑的で、個人マネーが海外に流出し、その結果、自国通貨安がさらに促進されるという構図は、なんだかデフォルトリスクのある新興国みたいで、やや危険な兆候のようにも思えてきます。

経済正常化を素直に期待して、ホームグランドである東京市場に個人マネーが流入し、その結果として、個々人が株価上昇の恩恵を受ける。そうした健全なサイクルに変わっていけるのかが、株価の動向と並ぶ大きな注目点です。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)

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