止まらない円安 実は「円弱」 日本は“後進国”に転落か 国力低下の現実とは【報道1930】

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2024-04-26 16:40
止まらない円安 実は「円弱」 日本は“後進国”に転落か 国力低下の現実とは【報道1930】

東日本大震災に見舞われ日本が打ちひしがれていた2011年…。為替レートは1ドル=75円の史上最高値をつけた。あれから13年後の今年、円は半分以下に下落し、今週ついに155円台後半まで円安は進んだ。となるとゴールデンウイーク、ハワイにでも行こうとすればかなり高いんだろうなぁ…と思って旅行サイトを見たところ、何と羽田・ホノルル往復¥102,000~という文字が踊る。通常なら25~30万円となるはずだが、円が安過ぎてハワイ旅行を諦めた人が続出。逆に値引き合戦になったという顛末だ。旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「日本はもはや後進国」だという。一体なぜ、こんなふうになってしまったのか…。

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「30年間サボった後なので足腰が弱ってしまっている」

円安傾向は突然始まったわけでは無く、去年からこの番組でも取り上げてきた。その都度原因として日米の金利差を焦点にしてきた。今ももちろん日米の金利差は大きく為替レートに影響を与えていることは間違いない。だが、それだけではないようだ。番組のニュース解説、堤氏はかねてから“円安”ではなく“円弱”だと訴えてきた。高い安いではなく、円が強いか、弱いか、という視点。その裏にあるのは、日本の国力が低下してきているとの見方だ。

2023年の日本の経常収支を見てみると21兆3810億円の黒字だ。しかし、内訳を見ると原油価格の高騰などにより貿易収支は6.5兆円の赤字で、デジタル関連も5.5兆円の赤字を計上。これはグーグルやアマゾンなど海外のIT企業のデジタルサービスへの支払いが膨らんでいるためで、このところ赤字額が大きくなっている。そして、こうした赤字が円安要因になる。その一方で、株式の配当や債券の利子などの受け取りなどで12.1兆円の黒字。海外の内部留保も10.6兆円ある。これらは円高要因になるのではと思われていたが、実は、そうでもないらしい…

元日本銀行理事 早川英男氏
「日本企業の海外現地法人で儲かった分は日本に送ってくるわけじゃなくって、向こうで貯めている。帳簿上日本の黒字になっているだけで日本にお金が返ってくるわけじゃない。(中略)実はデジタル関連のサービスの赤字に驚いている…。インバウンドが再開するのでサービス収支は、かなり良くなるだろうとみんな思っていたら、実はあんまりよくならず、デジタル関連の赤字の拡大が猛烈な勢いで進んでいる。クラウドの使用料とか、AIの使用料…。TBSだっていっぱい払っているでしょ。それがびっくりするスピードで増えている…」

日本企業が海外で稼いだ黒字は、成長力のある海外で再投資に使われ、或いは内部留保に回されて日本に返らず、国内では頼みのインバウンドをしのぐ勢いでデジタル関連の支出が拡大している。ここに日本の国力の低下が現れていて、円安が止まらない理由のひとつと早川氏は見ている。

しかし、デジタル赤字の拡大はやむを得ないとも早川氏は話す。

元日本銀行理事 早川英男氏
「確かに日本企業は前向きになってきた。賃上げしたり設備投資したり…。でもね30年間サボってきた後なんですよ。だから例えば“DXやるぞ”って言ったときにはアメリカのプラットフォーマーに沢山お金払わなきゃならない。脱炭素をやろうとするとソーラーパネルも風力発電も、ほとんど中国から買わないといけない。遅れたものを取り戻そうとすると赤字になっちゃう。前向きに気持ちが変わったのはいいんだけど、30年間サボった後なので足腰が弱ってしまっている…

失われた30年と言われる日本経済の停滞。更には、大規模緩和に頼るばかりでイノベーションを生み出す改革を後回しにしてきたアベノミクス。そのツケがデジタル赤字の拡大を生んでいるという構図が見て取れるという。これが“円弱”の背後にある日本の国力低下の現実なのか…しかし、早川氏は、今のデジタル赤字の拡大は、日本がIT技術で復権するために、通らなければならない道だとも指摘している。

番組では別の視点からも“円弱”の現場を取材した。

「もう限界だって、払えないからもう1年半で帰っちゃう」

都内で催された留学希望者を集めたフェア。およそ1000人が集まった。海外で学ぼうと考える学生にとって“円弱”は身近にして切実な問題だ。参加者に話を聞いた。

「本当はアメリカに行きたいんですけど、やっぱり円安とかの関係でお金に制限がある中でカナダとかイギリスだとちょっと値段が抑えられるかなぁと…。自分の将来が狭まらない程度に相場が動いてくれたらなぁ…。自分たちが動きたいときに動けるような環境が欲しい」(語学留学を希望する大学生)

留学先の選択に円安が影響しているという現実。フェアを主催した留学ジャーナルの調査によれば、今年のアメリカ留学の費用の目安は、4週間の短期留学で約69万円(5年前の1.4倍)、1年間の留学では約590万円~740万円(5年前の1.3倍)と、円安の影響などを受けて膨らんでいる。

今年2月までロンドンに留学していた女性は、留学を途中で断念する学生の姿を見てきた。

「(向こうにいた時)“1ドルいくら、今日はやばいよ”とか皆敏感に見ていました。もうちょっと払えないっていう限界が来てしまって、そうなると生活を楽しめない。ただお金を気にしちゃって…。これじゃ留学じゃないって…。そう思っちゃう人は途中で帰国しちゃう。私の友人にもいた。もう限界だって、払えないからもう1年半で帰っちゃう…」(元留学生)

留学フェアの主催者も円安の影響は深刻だと話す。

『留学ジャーナル』加藤ゆかり代表取締役
「(予算の都合で期間を短縮する人がいる)そうすると本当は学位が取れるとか資格が取れるというのが残念ながらそこまでできないというのがありますね。アメリカ一辺倒だった分野も他の地域に流れたりとか、新しいところでアジアとかが留学先というふうになってきている」

こうした現実に対し、“円弱”は日本の将来の国力を損なうことにもなると、ニュース解説の堤氏は話す。

ニュース解説 堤伸輔氏
「長いこと“円弱”政策を続けたことが日本を後進国にしてしまっていると思わなければいけない。今、日本は半導体で世界の最先端に戻っていきたい、日の丸の半導体を作りたい、でもそのためにはアメリカの大学に行って最先端の研究をしなければいけないわけですけど、その人たちが例えばカリフォルニア大学は1年間授業料だけで680万円かかります。外国人の理系の学生が、例えば修士課程に入ろうとしても行けないですよね、よほど家庭が裕福であるとかでないと。将来の研究者も育てられなくなっている。それはこの先の国力を今の“円弱”が損なっているということになります」

「日本円よりバングラデシュのお金が強い」

東京・新大久保の送金所を訪ねた。アジアの各地から働きに来た外国人労働者が、給与として受け取った円を、自分の国の通貨に換えて家族らに送金している。

ネパール出身の女性
「日本のお金がめっちゃ安くなりました。こちら(日本)から送ったら少なくなっちゃって…気持ちが沈んじゃう…。前は10万円送ったら母国に11万ネパールルピーくらい届いた。今は10万円送っても8万6000ネパールルピーくらいかなぁ。前とは全然違う、結構大変です」

バングラデシュ出身の男性
日本よりバングラデシュのお金が強い、レートが違うから…。去年より今年はもっと下がりました。それで私たち困るみたいです。心配しています。もっとレートが下がるともっと心配」

日本で働く“うまみ”はなくなってきたようだ。別のバングラデシュ出身者は言う。

バングラデシュ出身の男性
「日本円が下がっているから…、なんか給料も安いし、給料そんな上がらないなら他の国が良いかなぁと…、色々考えている。アメリカかオーストラリアか、色々今考えていますから…私の友達たちも色々考えている…。(―――既に日本を離れた人もいる?)結構います。アメリカとか行った人結構います」

“円弱”な上に給与が上がらない日本は、“選ばれない国”になる…その現実に加谷氏は…

経済評論家 加谷珪一氏
「これはかなり深刻だと…。日本が(働き先として)選ばれないようになると、経済界は外国人労働者を頼りにして人手不足を乗り切ろうとしているわけですが、この中期的シナリオが崩れる」

国力の低下を表す一つの指標がある。

一国の購買力を測る指標「実質実効為替レート」だ。その国の通貨の実力を示す指数ともいえる。これが現在、1ドル360円の固定相場制だった1970年代を下回っている。この先一体日本はどうなるのだろうか…

(BS-TBS『報道1930』4月25日放送より)

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