GSMAの2024年Mobile Net Zeroリポートは、2019年以来の炭素排出量削減について各地域のリーダーに焦点を当て、欧州における50%削減がリードしていることを示しています。事業者による排出量は、コネクティビティーやデータへの需要急増にもかかわらず、エネルギー効率と再生可能エネルギーの進展により減少しました。
バルセロナ, 2024年2月28日 /PRNewswire/ -- MWC Barcelonaで27日発表されたGSMAの第4回Mobile Net Zeroリポートによると、モバイルネットワーク事業者による炭素排出量(1)は、2019年から2022年の間に世界で6%減少しました。
リポートは、事業者による排出量の削減状況は地域的な差異がみられ(2)、欧州が50%削減で他をリードしています。北米、中南米、中東・北アフリカ(MENA)の排出量は20~30%減少しました。それぞれ世界最大と世界第2位のモバイル市場である中華圏とアジア・太平洋地域の事業者による排出量は増加しているものの、世界の排出量はデータ使用量が増えているにもかかわらず、全体として減少しています。
2050年までにネットゼロを達成するというモバイル分野の目標の実現は、業界が排出量を2030年までに2020年を45%下回る水準まで削減できるかどうかにかかっています。このことは、スコープ1、2,3を含め、全体の排出量が2030年まで年間約7%減少する必要があることを意味しています。
最近の進展状況は、欧州、北米、中南米、MENAでの事業者による排出量の目標削減率が過去3年間にわたって突破されていることから、これは実現可能であることを示しています。このリポートは、事業者のサプライチェーンからの排出量に関連する「スコープ3」の動向をより良く理解するためには、データの向上とさらなる分析が必要とされていると指摘しています。
エネルギー効率と再生可能エネルギーに関する進展
分析によると、事業者による排出量は、世界のモバイルによる接続が2019年-2022年の間に7%増加し、インターネットデータ量が2倍以上になるなど、データとコネクティビティーへの需要が急増しているにもかかわらず、減少しました。業界の炭素削減は主にエネルギー効率と再生可能エネルギーの利用が大幅に向上したことにより、大きく推進されました。
2022年に報告された排出量減少の半分以上は、ネットワークやデータセンター、オフィスでのエネルギー効率改善の取り組みや、車両の電動化や発電機の向上によって推進されました。世界の17の事業者グループとの協力によるGSMA IntelligenceのEnergy Efficiency Benchmarking project,は、こうした極めて重要な分野において、より多くのデータを明らかにし、ネットワークのエネルギー消費や効率レベル、燃料ソースを数量化することを目指しています。
一方、再生可能エネルギーは、事業者が2022年にCDPに報告した購入電力の33%を占め、2019年の14%から上昇しました。リポートによると、事業者は2022年に合計50 TWhの再生可能電力を購入しました。これは2019年からの購入量のほぼ2倍で、カタールあるいはシンガポールの年間電力需要に相当します。こうした購入がなければ、事業者による炭素排出量は2022年に1500万トン増えていたと推定されています。
ネットゼロに向けた進展の加速
業界全体を2050年までのネットゼロへと促すためには、政府からの支援政策や投資によって支えられた業界による力強い一致した行動が必要です。リポートは、事業者やサプライヤー、政策立案者が気候変動に向けた行動の進展を加速させるために勧告や主な行動項目を提供することで締めくくっています。
事業者やサプライヤーにとって、最も大きなチャンスはエネルギー効率、再生可能エネルギー、それにエコシステムにおけるサプライチェーンや資材の循環性の向上にあります。一方、政府が強力な気候政策を実施し、エネルギー市場と規制が再生可能エネルギーと送電網への投資を奨励することを保証するなら、政府はこうした分野において重要な支援の役割を果たすことができます。
GSMAのJohn Giusti最高規制責任者は「モバイル業界の2050年までのネットゼロへの取り組みが報われつつあるとの兆候がみられます。コネクティビティーとデータへの需要急増にもかかわらず、世界の事業者による炭素排出量は減少し続けました。ネットゼロへのレースで、欧州が当初、他を圧倒的にリードし、米州やMENAでも有望な進展状況が見られるとはいえ、これは全ての人が勝利しなければならないレースなのです。さもなければ、われわれ全員が敗北します。われわれは、エネルギー効率と再生可能エネルギーへのアクセスに焦点が当てられた場合、これが可能であることを認識しています」と述べました。
「再生可能エネルギーへの投資促進に協調して取り組むことにより、モバイル業界の脱炭素化加速を支援するための政府のより深い関与を要請します。一部の地域の再生可能エネルギーへのアクセス不足が、事業者がネットゼロへの道のりを続けることへの障壁をもたらしているからです」
その他の重要所見:
• 8つの事業者が過去1年間に新たな短期の科学に基づく目標をScience Based Targets Initiative(SBTi)に提出しており、これで提出したのは、世界のモバイル接続のほぼ半分に当たる計70の事業者になりました。さらに53の事業者が長期的なネットゼロ目標に取り組んでいます。
• ますます多くの事業者がそれぞれの気候への影響を公開しており、2023年に70の事業者がCDPに公開し、2022年の67事業者に比べて増えました。
o 公開内容の質も改善され、2023年には過去最高の19事業者がCDPのAリストに掲載されました。これは、2023年に全社のうちわずか1.5%がCDPに公開したのに比べ、CDPに公開した事業者の4分の1以上がAを取得したことを意味します。
• モバイル業界の全炭素排出量の4分の3がスコープ3のバリューチェーンの排出量であり、そのうちの90%は、購入された商品やサービス、資本財、燃料およびエネルギー関連活動、販売済みの製品の利用、投資のわずか5つのカテゴリーから生じています。
o 携帯電話とネットワーク機器の循環性の向上は、こうしたスコープ3の排出量の削減に不可欠です。この目標に向けてGSMAは2023年6月、再利用、修理調整、リサイクルによって循環性を高めることで携帯電話の環境への影響を削減するため、2つの新しいcircularity targetsを発表しました。2024年1月時点で15事業者が新しい目標に署名しており、これは10億モバイル接続を意味します。
▽GSMAについて
GSMAは、モバイルエコシステムを統合し、前向きなビジネス環境と社会変化の基礎となるイノベーションを発見、開発、提供する世界的な組織です。GSMAのビジョンはコネクティビティーの力を最大限に発揮し、人、産業、社会が繁栄することです。モバイルエコシステムと関連業界のモバイル事業者と団体を代表するGSMAは、Connectivity for Good(世の中のためのコネクティビティー)、Industry Services and Solutions(産業サービスとソリューション)、Outreach(アウトリーチ)という3つの大きな柱をメンバーに提供しています。この活動には、政策の推進、現在の最大の社会的課題への取り組み、モバイルを機能させる技術と相互運用性のサポート、MWCやM360シリーズのイベントにモバイルエコシステムを結集する世界最大のプラットフォームの提供が含まれます。
詳細はgsma.comをご覧ください。
(1)分析は、世界のモバイル接続の80%超をカバーする事業者によって公開された気候およびエネルギー関連のデータに基づいています。
(2)事業者による排出量は、スコープ1および2の市場に基づく排出量を指し、スコープ3のバリューチェーンの排出量を除外しています。各スコープの排出についての説明はGSMA Climate Action Handbookをご覧ください。
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