史上初の4万円が目前に迫った日経平均株価。このまま史上最高値を更新し続けるのか、それとも大きな「調整」が入るのか。専門家の見通しを聞きました。
【写真】2024年の日経平均株価の推移…右肩上がりのグラフを見る 4万円まで一時あと10円
年度内に「4万1000円」の予想も 半導体銘柄が軒並み好調
みずほリサーチ&テクノロジーズで主席エコノミストを務める宮嵜浩さんは「4万円が見えており、追い風が吹いている」とした上で、「海外ではハイテク関連、特に半導体関連の業績がすこぶる良く、さらに『生成AI』が材料視されて、株価も上がっています。そういった雰囲気の中で、日本株も買われています。国内を見ても主要企業の業績は非常に良いです」と話します。
企業の業績について宮嵜さんは「円安が輸出企業の収益を押し上げています。物価の上昇も、生活者にはつらいですが、企業からすると売上高を押し上げる要因になっています」とします。
今後の株価についても「ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)で見ても、株を売る材料が見つけにくいです。年明けからの『新NISA』で投資熱も高まりつつあるので、株価の調整(の局面になる)というより、どの水準まで上がるかを見に行く状況ではないでしょうか」といいます。
みずほリサーチ&テクノロジーズでは、3月までの予想株価の上限として「4万1000円」を掲げています。
「需要の先食い」してしまうと…「ガクッと消費が落ちる」可能性も
一方、悩ましさがあるという専門家もいます。大和証券でチーフエコノミストを務める末廣徹さんは「最高値を超えてしまったので、『チャートポイント』(節目となる価格)のようなものがなくなってしまいました」と話します。どういうことでしょうか。
末廣さんは「間近にある4万円を超えるかが注目されていますが、そこからの水準が1000円になるか2000円になるかは、企業業績しか要因がなくなってしまいました。けれど、業績に関してはどこも良さそうで、投資家は弱い部分を探しているがなかなか見つからない状態です」と指摘。これは、先ほどの宮嵜さんの話に通じます。
成長していく局面としては良さそうなサイクルなような気はしますが、末廣さんは「良いものではあるのですが、例えば、必要ないものまで買うなどの『需要の先食い』をしてしまうと、後で『もう全部買っちゃったからいいや』とガクッと消費が落ちることがあります。経済はなだらかに推移した方がいいという話になると、『大丈夫なのかな』という意見も出てきています。今のところ、明るい話にしか目が向きにくい状況にはなっています」と分析します。
早めの引き締めあれば…「相場の反転」の可能性も
今後大きな調整局面は来るのでしょうか。
宮嵜さんは「景気や物価、株価も想定以上に上振れてくると、政策対応もちょっと早めに引き締めなきゃとなるかもしれません。そうなると、今までの楽観的な見方が一転して、慎重論が出てきて、『山高ければ谷深し』ではないですが、過熱感があったものが、グッと冷え込んでくるという『相場の反転』も考えられます。警戒した方がいい時期が来るかもしれないです」と話します。
「日本の株高が、円安に繋がっているという指摘もあります」と別の観点から末廣さんは見ています。
円安になると輸出企業が儲かる→株高になるというのが通常ある話ですが、今回の指摘は、株高→円安という逆のサイクルです。
末廣さんは「なんでかというと、海外の投資家は円を買って株を買うけれど、為替のリスクを取りたくないので、円の一部を売っておくからです。そうすると株価が上がれば上がるほど、円売りのポジションが増えていき、円安になったという見方もあります」と解説します。
平成のバブル経済と異なる側面 市場は「まだ冷静」な段階
ただ、「株が上がるのはいいことだと基本的には見られているので、なかなか止める人はいないです」と末廣さん。同調するように宮嵜さんも「一時的な上昇だと最初は思っていても、株高が続いていくと、日本企業あるいは日本経済が強くなったのかもしれないと思い込んでしまって、リスクに意識が向かなくなってしまうことがあります」と述べます。
最後に平成のバブル景気と重なる部分がある株高なのかを聞いてみました。
宮嵜さんは「企業業績と株価の関係でいうと、平成のような浮かれっぷりにはまだなっていないです。まだ冷静で、業績見合いの株高と説明がつく段階です」と教えてくれました。
新しく投資を始めた人も古参の人も、目が離せない相場が続きそうです。
(TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「経済の話で困った時にみるやつ」より)