中国の国会にあたる全人代=全国人民代表大会が開幕。「GDP成長率目標は5%前後」としていますが、市民の間では節約志向が広がり、実体経済とはかけ離れた数字…。外国企業による直接投資を歓迎する中国政府ですが、投資を渋らせている最大の原因は中国政府の“ちぐはぐな”メッセージ?
【写真を見る】中国の国会にあたる“全人代”開幕「GDP成長率目標は5%前後」としながらも…市民の間では消費の低迷が“顕著”【news23】
李強首相「経済が全般的に持ち直し」発言も 中国政府は厳しいかじ取りか
ゼロコロナ政策が終わり、自由に取材ができるようになった中国の「全国人民代表大会」(以下、全人代)。
2024年3月5日(現地時間)、5年ぶりに集まった各国メディアの戦いは、早朝から始まっていました。
寺島宗樹 記者
「場所取りに抜かされた」
室谷陽太 記者
「我先に、と大混乱になっています」
そして始まった全人代。最大の焦点は、先行き不透明な中国経済について…
李強首相は、こうアピールしました。
李強 首相
「社会主義現代化国家の全面的建設は着実に進んだ。経済が全般的に持ち直した」
さらに…
李強 首相
「GDP成長率は5%前後とする」
今年(2024年)の経済成長率の目標を、2023年と同程度の「5%前後」と設定しました。
参加者からは…
雲南省代表団
「中国の経済発展は問題ないです。とてもいいです」
湖南省代表団
「中央の強力な指導のもと、経済はどんどん良くなると信じています」
前向きな声が多く聞かれました。
しかし、不動産不況が続く中国では、1月の新築住宅の価格指数が主要70都市の8割で下落するなど、目標達成は容易ではなさそうです。
過去の急速な経済成長から一転、中国政府にとっては厳しいかじ取りが続きます。
「言っていることとやっていることが違う」
小川彩佳キャスター:
去年(2023年)と同じ水準の「5%」という成長を示しましたが、どう捉えていますか。
立山芽以子 北京支局長:
とてもチャレンジングな数字だと思いました。実体経済とは、かけ離れていると感じています。
北京でもレストランの閉店などが相次いでいたり、最近は消費期限が近い商品を格安で扱うスーパーが大人気だったりと、市民の間には節約志向が広がっています。消費の低迷は顕著だと感じます。
小川キャスター:
そうした中で、日本企業も中国での事業を縮小していくという動きも出てきています。中国経済への先行きの不安が背景にあるんでしょうか。
立山芽以子 北京支局長:
悲観的な見方が広がっていると思います。
中国に進出している日本企業を対象にしたアンケートでは、約4割が2024年の中国の景気は悪化するとみています。
中国政府も、外国企業による直接投資が2023年に前年比で約82%の減少だったという事実に危機感を持っており、2024年3月5日(現地時間)の李強首相の演説にも、「INVEST CHINA(中国に投資を)」、と投資を歓迎しますという記述がありました。
ただ、投資をしぶらせている原因が、中国政府自身にあるという皮肉な事態が起きているのも事実です。
2023年、北京でアステラス製薬の男性社員がスパイ容疑で拘束されました。この衝撃は大きく、「中国に駐在していて大丈夫なのか」という不安を与えています。
また、日本企業の幹部からは「『投資してください』と言いながら、いざ具体的な話になると全然話が進まない。つまり、中国は言っていることとやっていることが違うよね」という不満も聞かれます。
中国政府からのメッセージがちぐはぐなこと。これが投資をためらわせる最大の原因ではないかと思います。
専門家「“ウィズチャイナ”の関係を継続しつつ、いざというときの備えを」
藤森祥平キャスター:
習近平政権について、中国の経済に詳しい、東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は「今後3年が岐路」といいます。
習近平政権が思い切った政策を打たないと、▼中国経済がさらに冷え込み、▼外国企業が中国を離れていく可能性があるそうです。
ただ、日本企業は、「軽率に中国から離れるのは得策ではない。人口14億人のビッグマーケットは他になく、“ウィズチャイナ”の関係を継続しつつ、いざというときの備えが必要」だということです。